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魔法の特訓

それからスロウと少し話していると、バタバタと遠くから走ってきた。

スロウの部下らしく、スロウを引き止める。

「スロウ様!今よろしいでしょうか…?」

こちらに気づくと、少し顔を顰めた。

「…ああ、悪いな。また遊ぼうな」

そう謝りながら地面に下ろしたあとまた頭を撫でてそのまま部下と歩き去っていった。


一人残されたル―リャ。


部屋に帰ろう、と歩き出すと誰かにぶつかった。

「…っ…」

この軽い身体はその反動でコケてしまった、顔を上げると獣耳のついた赤髪のメイドがそこにいた。

舌打ちが降ってきた。

この城に来てから色んな魔族と出会うが、こういう敵対とまではいかずとも嫌悪感を隠さない態度をとる者も多数いた。

(…居候だし、…文句は言わないけどさ)

こうも意図的にぶつかって舌打ちは腹も立つ。

小さくため息を付いてそのまま部屋に帰る、なにか言われていたが無視である。

どうせ何かこちらを貶しめる言葉なのは違いないのだ。



それから部屋に戻って数時間、いまだにアンテルが帰ってこない。

だいたい帰って来る時間は宣言通りのはずなのにだ。

(…仕事が長引いてるのかな?)

まぁいいや、と諦めてベッドに寝転がる。

レグナードの情報がほしい、スロウに聞こうと思っていたのに宛が外れアンテルも帰らないので持て余す疑問のやり場に困る。


「ぁ”、あ、ぁあ、あー」

この持て余す時間で発声の練習をしよう、と思い立ったのでやってみることにした。

声は外見通りに声変わりのしていない性別のない声、若干少女寄りの声だった。

中身が声の出し方を知っているせいか案外すぐに出るようになった。


それから数時間後は経った頃合いに扉がノックされ、アンテルが顔を出した。

「た、ただいま帰りました」

遅くなりました、というアンテルに練習の成果を披露する。

「おかえり、アンテル」

「へぁ…!?ル―リャ様、お声が!?」

目がこぼれるんじゃないかと不安になるほど目を剥いて驚くアンテルを見れて満足感に満ちる。

《出るようになった》

とはいえまだまだ会話は難しい。

軽く咳き込みながら指文字での会話に戻す。


《仕事はどんなことしたの》

「…隣の、獣王国で戦争が始まったらしく、その治療要員として駆り出されていました」

《そっか、お疲れ様》

アンテルをソファに座らせて雑談をする。

アンテルは命令として座らせないと意地でも立ち続けるというのが最近の発見だ。


《アンテルは魔王様とどのくらいの付き合いなの?》

「私ですか、そうですね…時間にはもう疎いのですが魔王様が、即位されたあたりなので300年ほどでしょうか」

長いのか短いのかわからない規模のそれになるほど、と小さく頷く。

《アンテルは私のこと、いつから知ってた?》

「ル―リャ様の存在は、あの日です。魔王様についてくるように言われて、あの森で」

言葉を噛みしめるようなそんな姿のアンテルになんとも言えない気持ちになりつつも、更に質問をする。

《魔王様ってどんな人?》

「…魔王様ですか…そうですね。私も実は深くは知らされていないのですが、ル―リャ様の他のハイエルフ様たちと同じ時代を生きておられたというのは知っています。

そしてあの森を守る役割を担っていたのだと、前は何を守っていらっしゃるのかと思っていましたが…

貴方様の眠りをお守りになっていたのですね」

私が分かるのはそれだけです、と微笑む。

《そっか》

「…さぁ、今日は遅くなりましたが、魔法の使い方を僭越ながらご説明いたします」

よろしく、と返してアンテルの声に集中する。

「魔力を込める動作は完璧ですのであとはこのように…

イメージです、人間は妙に外からの力を借りるのがあまり得意ではないので書き換えて使うのですが、

私達は精霊様たちとの親和性は極めて高いので、使いたいものをイメージすることで発現します」

説明しながら、手のひらサイズの火の玉を出した。

それを消しながら今度は水の玉を出す。

(ファンタジーだ…!)

やってみてください、と言われ緊張しながら見様見真似でやってみることにした。

手のひらにゆっくりと魔力を集中させて手のひらに、収まる丸い水。

「…おぉぉ!!!」

なんて言うことだ、とアンテルは驚嘆の声を上げる。

ゆっくりと形を作っていく丸い球体……水ではなく、氷だった。

「…あれぇ…」

おかしいな、と首を傾げながらアンテルに説明を求める。

「初めてで二属性を完全に調和させるなんて流石ル―リャ様です…!

イメージしていく時に質感を想像しないとこの様に少しだけ変化が生じる事があるんです」

拳大の氷の置き場に困ってアンテルに渡すと、彼は嬉しそうに受け取りゆっくりと空気中へ溶かしていった。

「火を消せるように、魔法で生み出したものは消せるんです」

この様に、と小さくなった氷をパッと手品のように消した。

《すごい》

目をキラキラと輝かせてアンテルの説明を聞く。

「フフ…コツを掴めばル―リャ様のほうが完璧にできるようになりますよ。

さぁ今日は水を出せるようになりましょうね」

そう微笑むアンテルに頷いて返してまた手のひらに意識を集中させた。



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