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夜が明けるとすぐにアンテルを呼び、魔法の訓練を頼むと、まずは魔力の扱いからと言われ複数の水晶を手渡され只管に褒められ続けて早数時間。

「…流石はル―リャ様!」

素晴らしいです、そう感嘆するアンテルに愛想笑いを向けつつ手の平サイズの水晶に魔力を込め続ける。

これは魔力の流れや魔法を使うときの初歩的な練習らしい、つまり誰にでもできる。


見た目通りただの水晶だが、そこに割れないようにゆっくり魔力を滲ませて満たしていく、多過ぎるとひび割れて使えなくなってしまう。

さっきは十個ほどダメにしたところである。


この量産されていく水晶は後に使用用途もあるので作って損はないらしい。

「密度も完璧です」

うっとりした顔で石を集めて眺めるアンテルに若干…結構な気持ち悪さを感じつつ、愛想笑いで誤魔化す。


アンテルにはこの魔力のコントロールと基礎魔法について教わることになった。

《魔法はどんな物があるの》

未だに呆けるアンテルを現実に戻すために質問を飛ばした。

「魔法ですか、属性でいうと火や水、風や土、雷他にも多岐に渡りますが、方法は割とシンプルで

火や水の特性を使うことも多いですが。切る、突く、燃やす、投擲などですかね…属性を見れば案外対処は御しやすいです、ただ付与系は使用者の戦闘スタイルで変わりますから、純粋な魔法使いより厄介です。

生活魔法はもっとありますが、ルーリャ様には必要ありません、私が!!いますからね!」

博識に語り始めて自我を取り戻したのかと思ったが未だに精神はどこかへ行っている様だった。

《アンテルは物知りだね》

さすが、と一応褒めるとまた分かりやすく綻ぶ顔を眺める。

照れている動作はぱっと見れば妙齢の女性にも見えてエルフという種族の性差が気になり始めるふと思い出したことを聞いてみることにする。


《そういえば、エルフの性別って生まれながらに決まるの?》

「はい、生まれながらに決まっていますが……ハイエルフは成長とともに、と聞いたことがあります」

実に神秘的です、と噛みしめるアンテル。

《いつ性別決まるんだろう》

「そこまでは私にも…お力になれずすみません」

この身体は人間の年齢で言えば10歳前後にみえる、目覚めてずっとこの姿だがそろそろ思春期?や色々人間なら始まる頃合いなのだから始まってくれてもいいのではなかろうか。

《いや、大丈夫》

しょんぼりと落ち込んでいるアンテルにそう声をかける。

自分の身体に生えるのか生えないのかは正直早めに知りたかったな、と思いつつ諦めの溜息を零した。



「………」

(誰か……)

心の叫びも虚しく目の前の人物に緊張しながら見上げる。

穏やかな午後を過ごしていたら、アンテルは仕事が入り城を出てしまい暇を持て余して城を歩き回っていると、知らずのうちに深部に来ていたのか、突然レグナードが現われた。


彼は何かを喋ることもなくただこちらを無言で見下ろしている。

レグナードは指文字を知らないようなので意思疎通は、できない。


どのくらいの沈黙の末か、レグナードは呆れたように口を開いた。


「気づいていないのか」

なんのことだ、と思いながら首を傾げると、小さく鼻で笑って、

「もう声は出る」

そう言ったのだ。

まさかそんなことも分からないほど頭が悪いのかとまた嘲笑される。



声が出る、と聞いて驚きと嬉しさが湧くと同時に何故、という疑問が思考を占める。

「………」

改めて声を出そうとすると、張り付いた喉が剥がれる様な錯覚と共に舌が回らずうまく発音ができなかったが、レグナードは答えてくれた。


「俺がお前に封印を施したからだ」


なんで、と言おうとしたのに舌は思うように回らず、ただハクハクと空気を食む様な動作しかできずレグナードを見る。

何を考えているのかわからないその目線は薄らと恐怖を煽った。

一体何が起こっているのか原作外の出来事にひたすら困惑するし、聞きたいことは沢山ある。

何故名前を知っているのか、声を封じられていたのか、何故いまさら解いたのか。

何故あのとき助けてくれたのか。

助けるということは、何か目的があるということなのか、聞きたいのにうまく言葉が出てこず、モダついていると背後から声が聞こえた。

「…魔王様、こんなとこでなにを?」

「…」

その声の主をレグナードは一瞥するとそのまま影に溶けるように消えていった。

それを見届けたあと振り返れば、そこにいたのはスロウだった。

肩の力が抜け安堵のため息を零す。

おいで、と手を出されそのまま手を引かれ、抱き上げられた。

「今日はアンテルも居ないんだろ?」

暇だから遊ぼうと思って探したんだぞ、と少し笑うスロウ。

頷いて笑い返して、また何処かへと歩き出したのでスロウの顔を観察する。

ゆるく束ねた髪の毛はよく見ると魔力が込められているのがわかった。

(すごい、身体に貯めずに髪に集中させてる…)

「…そんなにじっと見るものあるかい?」

視線をこちらに向けるスロウに気まずさを覚えて違う方向をみる。

くっくっ、と喉を鳴らして笑われているのを感じてなんとも言えない気持ちになる。

かつかつと軽快なテンポの歩行は崩れることなく廊下に響いた。

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