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この国の首都はこのレガリアで一日で見て回るには足りない規模だったが、スロウに主要なエリアは説明して貰えた。


スロウは巡回ついでに連れてきてくれた様だった。

そしてスロウは完全にこちらを子供だと思って接しているようで、とことん子供扱いしている。

(…多分と言うか間違いなく私の方が歳上なんだけど……伝える手段がない)

子供扱いを拒否すると、スロウはまるで反抗期の娘に対する対応の様な事をして逆にこちらが子供であると明確にされていく気がして恥ずかしくても抵抗、反論するのは早々にやめた。


そして魔王城に帰る頃にはすっかり日も傾いていた。


城門に近づいてくるとアンテルがいることに気づいた。

最も、スロウはもっと早く気づいて居たのかもしれないが。


「原精霊様…!」

ご無事で良かったです、と駆け寄ってくるアンテルに《ごめんね》と伝えると、スロウを見てギロリと睨んでいた。

「別に魔王様はこの城に閉じ込めろなんて言ってないと思うんだが、なぁ?アンテル」

おかしそうに笑うスロウ。

「……原精霊様はまだか弱く、外でなにか起こったら」

「俺はお前に遅れを取るほど弱いって言ってるのか?」

アンテルの言葉にスロウはゆるく束ねていた髪から一本抜き取るとそれは飛んでいかず、空気中に溶けてった。

状況を飲み込めず、スロウに抱きかかえられたまま見守っていると体感にして数分程睨み合った後にアンテルのほうが先に折れた。

「…とりあえず、次からはせめて事前に教えてください」

ため息をこぼすアンテルにスロウは肩をすくめながらまた膝をついて今度は地面におろしてくれた。

「さぁ、次はアンテルにでも運んでもらいな」

またな、そう言い残してスロウは何処かへ歩いていったので、それを見送る。


「…夜風がお身体に障ってはいけませんから、戻りましょう」

そうアンテルに先導されながらあの部屋へ戻った。

《そういえば、私の名前。ル―リャっていうらしいね》

だからそう呼んでね、とアンテルに伝えるとアンテルは「承知いたしました」と跪く。

もっと対等でいい、と昨日話したがアンテルは激しく拒絶したので諦めたが、あまりに仰々しいのは嫌だな、と思いつつもため息をこぼすだけにして切り替える。

《さっきスロウが髪の毛を抜いたのって何だったの?》

立ち上がったアンテルに質問すると、ああ、と口を開く。

「あれはスロウの攻撃魔法の初動作です」

《どんな魔法使うの》

「スロウは狙撃魔法です、あの髪に込められた魔力から生成した不可視の弾丸を打ち込んでくるのです」

当たってからじゃないと対処ができないのに毎回弾道も違うので予測は極めて困難の魔法です。

何度か当たったことがあるのか、アンテルは遠い目で語った

その魔法使ってみたいな、と浪漫を感じるこちらとは真逆にアンテルは鬱々とした表情をしていた。

《強くなれば、自由に外に行っていい?》

そう聞くとアンテルは少し迷いながら頷いた。

「…はい」

ですが外には危険が、というアンテル。

《アンテルが一緒に来てくれればいいんじゃないの?》

そう返すとアンテルは花が綻ぶような、そんな満面の笑顔を浮かべた。

「私めが、お供してもよろしいのですか!!!!!」

と大喜びするアンテルに曖昧に返事をして部屋から追い出した。



部屋に備え付けのバスルームで久々に身体を洗った。

今まではろくにお風呂に入れていなかったので、とてつもない快感にのまれる。

(石鹸も切らしてからは買い足せなかったからすごく嬉しい)

気力があるときはお湯を沸かして布巾で身体を拭いたりしていたが、従来のあの村の住人はどうやって生活していたんだか。

あの村には風呂どころか、シャワーもなかったのだ。石鹸があるということは身体を洗う習慣はあるだろうに。

それとも、本当にお風呂の習慣がないのだろうか、確かに体臭は無臭のように感じた。

(…考えるのはやめよう)

髪の毛を拭いてブラシで梳かしていく。

この世界にはドライヤー的な物はないのだろうか、そんなことを考えながらある程度水分を拭き取ったあとにいつも付けている髪飾りとピアスを磨く。


(どっちも形見みたいになっちゃったな)

大事にしよう、と心に誓いながら、ベッドに腰を掛けてアンテルが置いていってくれた魔法の本を読み始める。

基礎的な魔法の知識はこれから学べるとのことだ。



(なるほど、わからん)

読み始めて数時間、何がわからないのかすら分からなくなり始める。

魔力が何たるか、そして身体に循環させるまでは分かった。


とりあえず分かったことをまとめよう、と目を閉じてベッドに寝転がる。

魔法を行使するときは身体の中にある魔力を使うか、周りから借りるかでまた効果範囲も変わるという。

周り、と言うのはおそらくこの見えている魔力だと思った。


これは無尽蔵ではないが、体内に貯蔵しているものよりは総量は多いから借りて使い続けるのが一般的に多い。

が、魔力の濃度は土地によって変わるので魔法の精度がいまいち悪いらしい。

そして身体にある魔力を使う、これは環境に左右されたりはしないが、代わりに保有量は個人差があるが一番効率の良い使い方なのだとか。

それで最後にもう一つは身体の一部を使って魔法を行使する方法。

魔力は身体そのものにも染み込むから、媒体として使うと強い魔法も使いやすくなるらしい。

おそらくスロウもそういうことなのだろう、となるとこれは使っている本人に聞くのが一番わかり易いだろう。


いつ会えるかなぁ、そう思いながらまた本のページを捲る。

(……明日アンテルに聞いてみよう)


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