毒親の正体
おい、智。
長いものには巻かれろ。頭を下げて笑え。
笑うな。
とっととっとと正社員になれ。彼女いないのか? 三十までダメだったら出会い系でも何でもいいから自分の嫁をいいから準備しろ。出会い系使ったら、「旅行先で出会った。かわいいから自分から声を掛けた」って周りには説明しろよ。三十まではこらえろ。
早くしなさい。早くしなさい。早くしなさい。
お母さん孝行してよ。お願い、もう少し家にお金入れて。エアコンとファンヒーターとパソコンが古いの。だって嫌だし。
飯を食わせてやって育ったのは誰のおかげだ? 俺は親だぞ。子供はみんな親に恩があるんだ。—―生んでくれって頼んでないだと? 餓鬼みたいなことを言うな! そういうことをいう奴は餓鬼だ餓鬼。餓鬼の言うことだ、それは。世間も知らない奴が、何を言うか!家族を持ったことすらないくせに。会社で頭を下げたことがないのか、お前は!
私たちの現世利益を満たして。
空気、読んで。
散らかっててむかついたから、漫画全部捨てといた。何怒ってんのよ! なんでそんなもの必要なの! 怒らないでよ! 怒るもんじゃないわ! 何怒ってんのよおおお。
逃げるな。情けない。一番いけないことだ。俺は会社をずっと辞めたことがない。お前も生きるために石にへばりつく根性を持て。こびへつらって、誇りを持て。贅沢を言うな。みんなそうしてる。絶対みんなそうしてるんだ。
うふふふふ。置いていっただけで泣くのね。可愛いわね。
大したことのない奴だな。ぜーんぶ、中の上。中の下か。それで丁度いいよ。しかしまあ、男だと「ワンコ」としての価値も薄いな。頭撫でてやってもそんなに気持ちよく可愛くねえな。
鉢植え、全部捨てておけ。逆らうな。逆らうのはお前の仕事じゃない。
「お父さん」が話している。よーく、聞け。
俺の息子(私の息子)
自分が俺の葬式の飾りでしかないことを自覚しろ(ただただ私の愛を盛り上げて仕えてもらうためにあなたがいるのよ)
かわいい毬子ちゃん。
少しでも、ぎりぎりまでミジメであったほしい。体裁が壊れないぎりぎりまで。それってすごく正しくて優しい、ちゃんと生きるっていうこと。
自分の人生なんていつまでも生きないで。私たちの檻の可愛いハムスターであってよ。そのために育てたし。
いっぱいいっぱい苦労をする純粋さを壊さすな。それを見せる小劇場であり続けてくれ。
欲を満たさないでね。いつまでも不満だらけなあなたの反応を愉しみとして提供するのが女の子のオシゴト。それってとても価値が高いのよ。
我慢するのが、何も要求しないのが、見栄を削って、低く低く確かに生きることとこそが、本当の人生なのよ。女の子だから。
身を削れ。頭を下げろ。
良い子であることが人生の仕事だと理解しろ。
家族のためにあなたの心があるのだと理解しなさい。
いつまでも娘は娘なんだから。
どうか誰からも愛されないで。危ないから。別に必要ないし。私たちから離れない方が安全だし。だって必要ないじゃん。別に。いやらしい。
生きることは難しいの。何も得られなくて何もできなくて当然なの。だから何もやろうとしないで。確実に生きるだけのために謙虚でいなさい。生きる以上のことを求めるなんてもったいないわ。本当に何もかももったいないと思う。あなたには、ホントに。よくよく自分を知りなさい。現実を見なさい。
少しでも苦労や身を削ることの多い謙虚な道を選びなさい。それが一番確実なの。疲れる選択の方が確実でしょ。根拠はないけど。楽しいことやお高いことや華のあることは止めて。なんだか意味もなく心配でイライラする。あなたが浮足立っているような選択を取るとちゃんと生きていないって決めつけてしまう。自分を何ほどだと思っているのか。もう少し卑下するべきよ。
僕たち両親の、矛盾や両立できないいっぱいある優しい指導を毬子ちゃんは両立してくれよ。成立させるんだ。頑張れ。やるんだ。子供ってそういうもの。
欲も見栄も我も満たせない、いつも身を削って間抜けな玩具の毬子ちゃんをずっとずっとかわいいかわいいって撫で回していたい。これって娘をすごく大事にしているよな。欲も張らない、満足もできない女の子が、犬みたいで本当に可愛い。五十歳になってもそのままでいて。そのために全力でお父さん頑張るから。
みんなの気持ちを受けて、あなたがあるの。あなたの気持ちじゃ全然ないの。
子供のくせにいやらしい。
勿体ない。お前には何もかも勿体ない。真面目に正しく生きろ。
ひたすらもったいなくて可愛くて。
私の娘(僕の娘)
あなたの望みが何も叶いませんように(お前に価値が無いことを知りなさい)




