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自ら虐殺した死体との謁見

智は、白く安づくりな漆喰壁の巨大な工場のような場所にバスで自分が断罪して、身体に虐待を加えた両親の死体を見に行った。

 内臓を晒した串刺し豚のような父。

 耳から流した汁のような血がステンレスの台の上で乾いた針刺し状態の母。

 教えられた入り口から工場みたいな中に入ると、市役所の受付のように十分な人数が楚々と仕事をしている人たちのうちの二人が入り口の方をしっかり向いていた。

 すぐに応対をしてくれて、受付の少し後ろにいた人がわりかし小さめのタブレットを見ながら、矢鱈と沢山区画の多い廊下を案内してくれた。

 並び立つ白い扉のうち一つを開けると、そこに口はなくガラス壁があった。ただ死体が上を向いて横たわっているとよく見えないので、死体の置いてある部屋の奥壁に斜めに鏡が設置してあった。

 ゲーム画面と比べて、少しリアルではあったがそこまでの感慨もなかった。ただ少しだけ自分の中の血が充実を感じて、確かに充血した。死体そのものはハリウッド映画の人形とグロテスクさにおいても差を感じなかった。

 血の通った劇場であった。何もかも。

「ありがとうございます」

 そう案内してくれた若い男性職員に告げると、彼は目で答えてからドアを閉めて鍵を掛けた。

 するすると帰りの廊下を進み、簡単に受付に礼を言って、帰りのバスで自分たちが引越しをするための祖母との段取りを考えた。


 毬子は、自分の瞼で自分の眼球を舐めて、口の中で舌なめずりをして、両親の姿から胃から喉が強烈に甘く満たされるような快感を回収していた。

 苦悶に卑らしく乱れた両親の顔。傷んでただれた身体。

 両親の全てが腐ったという事実に悦んだ。

 右手の人差し指の先でトンとガラスを軽く叩いてから、「もう十分です」と微笑みが奥に潜んだ顔を若い、いかにもサラリーマンの無難な黒い色の髪形をした男性職員に向けて伝えた。

 伏せていた目を上げて、サラリーマンは扉を閉じた。

 欲動が満たされて、次へと向かうのを感じた。

 帰りのタクシーから見る街は何故か掃除が行き届いているように見えた。デパートの入り口の庇の灰色のコンクリートが清潔だった。外は能天気な綿雲が浮かんで蒼く晴れていた。デパートの前でタクシーを降りてから、中で襟の付いた黒いワンピースを買って散歩をしながら家に帰った。

 さっさと出ていこうと思っていた団地の家は、どうでもいい乾いた壁の箱で、空気も窒素と酸素と二酸化炭素でしかなかったが、とにかく出ていくべきだろう。

 湯呑で美味しく緑茶を飲んで、ワンピースを母と父の寝室にある姿見の前でもう一度試着した。

――可愛いじゃん。

 笑った目が少し大きくなって見えて、目の中の涙が甘く淡く澄んで、かわいかった。


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