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55万文字の群像劇を書いていたら、官能小説に向いていると言われた夜

こんにちは。雨日です。


雨日の暮らす地域も、今日は晴天だ。

絶好の執筆日和である。


ーーそんな中。


なぜか、雨日の自宅では町内会議が行われる。(真顔)


町内の中心にある町内会館は、いまだ雪に埋もれている。

除雪をするという選択肢は、どういうわけか誰の口からも出なかった。

結果、流れに流れて、我が家開催である。


公募にチャレンジして20日。


ストックが尽きるまでに本編を書き上げる、という謎のマイルールを課している。


現在、公募原稿は6万5千文字。

ゴールは10万文字。


ストックは、残り28話。

文字数は7万5千文字になってしまった!


・・・焦る。


猛烈に焦る。


町内会議などやっている場合ではない。

そう言いたい。


けれど言えないので、こうして書いている。


前置きが長すぎた。


今日は、家族に


「テンプレやめて、官能小説を書けば?」


と勧められた件について書こうと思う。


なお、雨日は真剣に公募10万文字と戦っている最中である。


◇ 官能小説にしたら?


事件は木曜日の夜におきた。


その日、雨日は帰宅してから必死に公募向けの原稿を書いていた。


朝型人間の雨日が、夜に書いてもろくなものにならない。


それは、わかっている。

痛いほど、わかっている。


それでも抗いたくなる夜がある。


濁った目で、半分閉じかけた頭で、必死にキーボードを叩いていた。


そのときだ。


ソファにもたれ、スマホを眺めていた家族が、唐突に爆弾を投下した。


「雨日」


「何?」


視線は画面のまま。

指も止めない。


「もうさ、テンプレやめたら?」


「うん」


とっくにやめている。

それどころか、挑戦もしていない。


半分だけ返事をする。

脳の八割は物語の中だ。


「公募もやめてさ」


ーーえ?


そして。


「官能小説、書いたら?」


ーーキーボードを打つ手が止まった。


静寂。


「・・・は?」


思わず声が漏れる。


「雨日は、官能小説に向いてると思うよ」


家族は、驚くほど淡々とそう言った。


まるで、今日の天気を告げるみたいに。


◇ なぜ、官能小説


「なぜ、そうなる」


気づけば、体ごと家族のほうへ向き直っていた。


「今日の話」


家族はスマホの画面から目を離さない。


「生々しい。向いているぞ。官能小説に」


ーー待ってほしい。


ここで誤解を与えないよう、弁明しておきたい。


その日更新した第171話は、官能ではない。


・・・R15だ。


しかも、いわゆる“行為”の描写はない。

表現だって、せいぜい甘めだ。


それを、雨日は必死に説明した。


「あれはエロじゃない」


きっぱりと。


だが。


「いや、生々しいよ。行為がなくても、あの表現はね」


家族はにやにやと笑う。


不潔だ。


雨日の純粋な文章に、そんな目線を絡めるとは何事か。


覚悟と心の揺れを書いているのであって、

肌色を書いているのではない。


「本気で目指したら?」


家族は、さらりと言う。


「今書いてるものより、上にいけるかもしれないよ」


事件はそれだけではなかった。


その“問題の話”を更新した直後、ブックマークが2つ入った。


文字数、55万文字。


非テンプレ。

群像劇。

しかも171話。


ーー今から新規読者が入る物量ではない。


いまさら、ここでブックマークが増えるか?


少し、首をひねる。


いや、かなり、ひねる。


タイミングが良すぎる。


「ほらみろ」


背後から声が飛ぶ。


「読者も認識しているぞ。その路線が向いていると」


家族が、やけに誇らしげだ。


やめろ。


そんなふうに因果関係を結びつけるな。


55万文字の積み重ねを、

一話の甘さに回収するのは乱暴すぎる。


けれど、ほんの少しだけ、

胸の奥で、小さく何かが揺れたのも事実だ。



◇ 官能小説にも、テンプレはある


気がつけば、雨日は原稿の手を止めていた。


そして、官能系書籍を扱う出版社のホームページを開いている。


ーー何をしているのだ。


そう思いながらも、人の興味を引く画面に目が釘付けになる。


艶っぽい表紙絵。

やけに強気なタイトル。

熟女から若い娘まで、よりどりみどり。


あらすじも、すごい。


新着一覧を眺めていると、どうやら最近のトレンドは

「熟女」や「隣人に誘惑される」展開らしい。


そこに個人の嗜好が混ざると、少し色が変わる。


ざっくり分けるなら、


・誘惑される系

・無理やり迫られる系


が人気のようだ。


ーーといっても。


雨日の官能知識は、ほんの触り程度である。

ホームページを数分眺めただけだ。


「それは違う!」と憤慨する読者様がいたら、先に謝っておきたい。


知らないけれど、たぶん、そうだ。


市場というものは、どのジャンルにも“型”がある。


なろうの異世界転生にテンプレがあるように、

恋愛にも、ざまぁにも、溺愛にも型がある。


ならば、官能にも、当然ある。


そう考えたとき、雨日はふと冷静になった。


テンプレをやめろと言われたが。


官能にもテンプレがあるなら、結局、同じではないか。


型をなぞるか。

型を壊すか。


問題は、そこだ。


◇ 書きたいのはテンプレでも、官能小説でもない


雨日は、流されやすい人間だ。


「向いているよ」

「上に受けるよ」

「才能あるよ」


・・・いや、そこまでは言われていない。


けれど、それに近い空気を感じたら、誰だって少しは舞い上がる。


しかもそのときは、思考能力が著しく落ちている夜だった。


ほんの少し。


本当に、ほんの少しだけ、気持ちが動いたのは否定しない。


だが、書きたいのは、テンプレではない。


もちろん、官能小説でもない。


官能的なーー想いが形になる瞬間を書くのは、好きだ。


視線が触れ合う一瞬や、息が重なる寸前の空気。


そういう場面は、確かに好きだ。


けれど、それは物語全体の一割程度だ。


雨日の小説は現在、50万文字。


一割なら5万文字。


・・・多いな?


計算が合っているのか怪しいが、いずれにせよ。


物語のすべてをそこに当てはめるのは、とてもではないが書けない。


雨日が書きたいのは、揺れ続ける人の生き様だ。


たまたま、その中に“甘さ”が混じるだけなのだ。


危うく、夜のテンションに人生を決められるところだった。


夜の判断ほど、あてにならないものはない。


焦っている人間に「才能あるよ」は、劇薬だ。


甘くて、強くて、効きすぎる。


けれど、雨日はまだ公募の途中にいる。


10万文字のゴールは、もう少し先だ。


ストックが尽きるまで。


原稿が追いつくまで。


町内会議が終わっても、夜が明けても、雨日の奮闘は続く。


数字が動いた第171話。

55万文字の積み重ねの中の一話です。


どこが「生々しい」のか、ぜひ読者様の判断にお任せします。


秘密を抱えた政略結婚 ―血に刻まれた静かな復讐と、許されぬ恋の行方―


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