制作と狂気は紙一重 ーー180万文字と、まだ出ない話ーー
制作と狂気は紙一重
こんばんは。雨日です。
今日も、今日とて、雪が降っている。
◇
「あぁぁぁぁ!!もうだめだ」
雨日家の朝は、悲痛な声から始まる。
二階から響く絶叫は、吹き抜けを通り、一階のリビングにこだまする。
「何で、こんな風になるんだ・・・クソッ」
何かを叩く音。
続いて、カツカツとペン先で画面を連打する音。
どうやら描きながら打ち込んでいるらしい。
絶叫。
嘆き。
苛立ち。
それがしばらく続いたあと、唐突に沈黙が訪れる。
一方、一階の薄暗いリビングの片隅では——
シクシクと、雨日が一人で泣いている。
小説を書きながら、泣くのだ。
悲しい展開に胸を引き裂かれ、高速で文字数を入力していく。
カタカタカタと止まらない入力音。
うめき声。
鼻をかむ音。
それが、雨日家の朝の音である。
◇ 最悪のBGM
この絶叫と泣きは、早朝4時から7時ごろまで続く。
7時になると家族が起きてくる。
最悪のBGMを聴きながら。
リビングの片隅で陰気に書いている雨日に、声が飛ぶ。
「ほら、動け。今日も仕事だ」
その声を合図に、雨日はのそのそと立ち上がり、
妖怪のように包丁を手に取る。
朝食の準備である。
目は虚ろ。ため息ばかり。
目の前の食材は見ていない。
見ているのは、脳内で暴走する物語の行方だ。
吹き抜けに向かって、家族が声を張る。
「〇〇、朝食だ」
子どもは魂が抜けたように階段を降りてくる。
まだ朝七時なのに、すでに夜更けの消耗ぶり。
陰気だ。
雨日の家は、とにかく陰気なのだ。
◇ 創作は狂気と紙一重
一階の妖怪・雨日は、小説を取り組んでいる。
昨年のクリスマスイブの時点で178万文字。
そこから半月以上、毎日書いている。
正月も、マラソンを見ながら書き続けていた。
今日だけで6話。
1話3千文字と計算したら1万8千文字になる。たぶん。
このエッセイを書いたら、確実に2万文字になるはず。
もう正確な数字は把握していない。
ただ、180万文字は確実に超えている。
数を数えなくなったあたりから、
たぶん、だいぶおかしい。
以前は、調べていた。
今週は⚫︎万字書いたとか。
それを積み上げている自分に酔っていた。
今は、もう、どうでもいい。
それよりも、頭の中にある物語を、早く形にしたい。
完結しない限り、ずっと追われている。
物語に。
毎日、書いているのに終わらない。
出さないと、こちらが壊れる。
出ないのだ。
ずっと、物語が頭の中に詰まっている。
便秘ってやつである。
◇ 2階はムンクの叫びが住み着いている
2階には、子供が小説とは違う制作をしている。
時折、ムンクの叫びのような声を出す。
あれもまた、ずっと一人で制作していると、確実に狂う。
編集に「ダメだ」と言われた瞬間、
その狂いっぷりと落ち込みぶりは半端ではない。
机に突っ伏し、
「ああ・・・」とか「もう無理・・・」とか、
創作者特有の、意味をなさない呻き声を発する。
親子である。
狂い方が、叫ぶか、泣くか、その違いだけ。
創作は、完成するまで誰にも褒められない。
むしろ途中は、否定されることのほうが圧倒的に多い。
それでもやめない。
やめられない。
狂っているとわかっていても、
手を止めるほうが、もっと怖いからだ。
だから雨日家の朝は、
叫びと泣き声とため息で満ちている。
狂った親子の中で暮らしている家族は、5年間、第1話を改稿し続けている。
まだ1話も、世の中に更新していない。
家族はコーヒーを淹れながら呟く。
「まともなのは、自分だけだ」
ひょっとしてーー
制作をしていないほうが、
まともな人生なのかもしれない
本文に出てきた小説は、現在連載中です。
『秘密を抱えた政略結婚 〜兄に逆らえず嫁いだ私と、無愛想な夫の城で始まる物語〜』
https://ncode.syosetu.com/n2799jo/
<完結>→その後、続々と続きを書いている。
書いている本人は、便秘気味ですが、
物語は少しずつ進んでいます。




