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身内に小説を読まれるという地獄(15文字で終わる話を3400文字で書いた結果)

こんにちは。雨日です。


雨日の住む地域には大雪警報が出ている。


窓の外は、どんよりとした灰色の空。


明るさも、軽やかさもない。


暗くて、鬱積していて、引きこもるのにちょうどいい。


絶好の小説日和だと思う。


◇ 味付けを変えて、同じことを書く


前回のエッセイを掲載したあと、家族にこう言われた。


「毎回、味付けを変えて、似たようなことを書いているよね」


・・・確かに、その通りだと思った。


小説と違って、執筆について書くエッセイは、扱える題材が少ない。


気づけば、書いていることはいつも似通っている。


不安のこと。

執着のこと。

書き続ける意味や、やめられない理由。


毎回、言葉や角度を少しずつ変えているだけで、

芯にあるものは、同じだ。


「雨日のストック(下書き)が少ないとか、そういう強迫観念はさ。

読者も『またか』って思うはずだよ」


そう言われて、返す言葉に詰まった。


「毎日の夕食がおでんだったら、さすがに飽きるだろ?

カレー味にしようが、味噌味にしようが――おでんはおでんだ」


たとえ話が妙に的確で、ぐうの音も出ない。


「だって、仕方がないじゃないか」


思わず声が荒くなる。


「小説の息抜きに書いているエッセイなんだ。

気軽に書いているんだから、似たような内容になるよ」


すると、間髪入れずに返ってきた。


「いや、それじゃダメだ。読む側の身になれ」


正論だ。


正論すぎて、胸の奥が少し痛む。


もし、このまま同じ話を堂々巡りにするだけなら――

このエッセイ自体、終わらせるべきなのではないか。


ほんの一瞬、そんな考えもよぎった。



◇誤解しないでほしいのだけれど


「そんなことより、あれだ。あれ」


家族はニヤニヤしながら言った。


「昨日、更新した小説について、エッセイで書けば?」


その提案に、雨日は思わず首を傾げる。


「昨日の小説は、生々しい。なんだ、あれ。雨日の性癖か?」


「え?」


「だってさ。

『舌は入れたか』なんて描写、普通の小説では書かないでしょ」


ちょっと待ってほしい。


ここで、読者様には誤解しないでいただきたい。


雨日はR18の小説を書いているわけではない。


性描写を書いているつもりも、まったくない。


あの場面で書きたかったのは、

身体のことではなく、心の動きだ。


主人公の姫に恋をしている青年は、立場の低い使用人だ。


いわゆる、報われない恋というやつである。


その想いを必死に隠しながら生きているのに、

観察者の男はそれを見逃さない。


剣の稽古をしながら、言葉だけで暴いていく。


青年が自分でも整理できていない感情を、

あえて、最も動揺する形で突いてくる。


その結果として飛び出した言葉が、


「舌は入れたか?」


――それだけの話だ。


行為を描いているわけでも、

色気を売っているわけでもない。


未熟で、不器用で、隠していた本気を

言葉ひとつで露わにされる瞬間を描いただけ。


もちろん、BLでもない!


・・・これで誤解は解けたはずだ。(キリッ)



◇ だから身内に小説は読まれたくない!


雨日は顔を赤くしながら、必死に否定した。

そのような性癖ではない、ということを全力で主張した。


あぁ・・・。


こういう展開になるから!!


身内に小説を読まれるのは、嫌なんだ!!


「いやぁ、とても自分には書けないよ。あんな描写は!」


家族は、楽しそうにニヤニヤしながら言う。


――やめてほしい。

本当に、やめてほしい。


調子に乗った家族は、まだ続ける。


「いやあ、自分にはあんな文章、考えられないね。

そもそも、考えたこともない」


そう言って、外国の人のように手のひらを見せ、肩をすくめた。


「自分なら、こう書くよ」


一拍置いて、得意げに続ける。


「『キスはしたか?』『したよ』――はい、十五文字で終わり」


雨日は言葉を失った。


今回の話の大雑把すぎる内容は、それなのだ。


15文字で終わる。


「それを、3400文字だよ?

いやあ・・・すごいね。ほんとに」


感心しているのか、面白がっているのか分からない口調で、

家族はニヤニヤと笑っている。


――違う。

そうじゃない。


量を書きたいわけでも、

引き延ばしたいわけでもない。


・・・とはいえ、身内にこうして解体されると、もう、ただただ恥ずかしい。


経験者にしか、この感覚はわからないだろう。



◇おでんは、カレーライスになった


そんな経緯を経て、連載中の小説はR15に設定した。


性的表現が露骨なわけではない。


ただ、どうやら雨日の文体は「生々しい」らしい。


これからの展開を考えたとき、

R15がいちばんしっくりくる――そう判断しただけだ。


ふと、こんなことに気づく。


家族からは「同じような内容を書くな」と指摘されたけれど。


もし今後も、生々しいと言われる場面を小説に書くたびに、

また同じようなやりとりをエッセイにするのだとしたら。


それはもう、

おでんがカレーライスに変わった、という話なのではないか。


具材も鍋も同じなのに、

味付けを変えただけで、まったく別の料理になった気がする。


・・・いや、やっぱり中身はおでんのままかもしれない。


でも、今日の雨日はカレー味を出した。


明日は味噌味かもしれない。


そうやって、同じ鍋を火にかけ続けるしかないのだろう。





※身内に「3400文字も必要?」と解体された問題の回は、

第98話「口づけはしたのか?」です。


秘密を抱えた政略結婚 ―血に刻まれた静かな復讐と、許されぬ恋の行方―


https://ncode.syosetu.com/n9067la/


15文字では終わらなかった理由、よろしければ本文で。


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