家族に「書き狂い」と言われた日常——1日2万字を書く人間の暮らし
こんにちは。雨日です。
まもなく雨日の住む地域では雪が降る。
車のタイヤ交換を待つあいだに、このエッセイを書いている。
今日はーー家族に「書き狂いだね」と言われた話を書く。
◇「書き狂い」ってなに?
そんな言葉は初めて知った。
あまり、日常では聞かれないけれど、
創作界隈では使われているらしい。
「書き狂い」とはーー
狂気じみた情熱で書き続ける。
我を忘れて没頭して書く。
正気を疑われるほど創作にのめり込む。
といったニュアンスがあるらしい。
雨日は自分のことをそうだとは思っていない。
ただ、気がつけば毎日書いていて、気がつけば一万字を超えていて、気がつけば一日が終わっている。
生活の一部というか、呼吸に近いというか・・・そんな感覚なのだ。
そんな感覚でエッセイを書くと、家族から反論が出る。
「エッセイは共感を得てなんぼなんだ。
でも雨日の創作エッセイは共感は誰も得ない。変人の領域だ。
いや、変人を超えて・・・もはや狂人の世界だ」
失礼な。
普通の小市民だ。狂ってなどない。
この記事に需要があるのかと問われれば、正直わからない。
けれど、「狂っているね」と言われつつも、
それでもペン(キーボード)を握りつづける人間がここにいる。
そんな一人の書き手の記録として、今日のこのエッセイを残す。(前置き、長い)
◇書き狂いと言われている雨日の休日
起床は朝の4時半。
目が覚めた瞬間、もう頭の中では文章が動きはじめている。
布団から出てすぐ、パソコンの前に座る。
顔を洗うより早く、指がキーボードに触れる。
頭の中に浮かんでいる場面を、淡々と書き写していく。
同じ部屋の中で寝ている家族を起こさないように、部屋は暗くしたまま。
外は真っ暗なのに、物語の中だけは朝になったり、戦が始まったり、恋が進んだりと忙しい。
連載1本(3201文字)を書いた後に、外が少し明るくなったので庭に出る。
そこで一息ついて庭へ出る。
花に肥料をやりながら、すでに次の展開が頭の中で組みあがっていく。
そのまま慌てて朝食と弁当づくり。
弁当は3食分。
フライパンを握りながら、脳内では次の連載のシーンが勝手に再生されている。
8時半。
朝食を終えると、また連載に取りかかる。
2300文字ほど書いて、今度は車で30分の病院へ向かう。
若いころの休日は美容院だった。
今は病院だ。
人生のステージが変わると、休日の風景も変わっていく。
◇病院の待合室
待合室では短編の構想を練って、
受診が終わったら、職場に寄り、そこで昼食を食べた後にパソコンに触る。
朝から書きっぱなしで放置していた連載の残りを書いて(300文字)、
その後、短編に着手する。
短編は週に1本、調子が良い時は2本。
三時間くらいかけて短編を書く。(10560文字)
◇夕方はジム・食事・原稿
短編を書き終えるころには、頭がパンパンになっている。
そこでジムへ行き、軽く体を動かして発散する。
・・・とはいえ、早く次の展開に進みたいので、30分ほどで切り上げる。
帰宅すると、夕飯を作りながら頭の中で物語が動き出す。
フライパンの前でも、キャラたちは遠慮なく喋ってくる。
そして、夕飯前に新聞用の原稿を書く。
これが唯一、今日の「お金になる執筆」。
小説家になろうとは違い、制限は450文字まで。
短い。短すぎる。
書いては「オーバーした!」を繰り返し、文章を削っては整える。
文字数の割に時間がかかる理由はそこにある。
結局、40分ほど格闘して送信。(443文字)
◇夜は執筆作業が進まない
雨日は完全な朝型だ。
夜になると、執筆スピードは急激に落ちる。
効率が悪いのは自覚している。
それでも、長年続けているブログを書く。(927文字)
書き終えるころには、既にエネルギーが半分ほど溶けている。
朝から書き続けていたから疲れているんだと気づく。
なので、気分転換にエッセイを書き始めた。
エッセイは小説と違って書いていて楽しい。
その結果、毎回、これって需要があるかな?と思うような内容になる。(2734文字)
気分転換ができたから、じゃあ、連載の続きを書こうと思っているとーー
「早く風呂に入れ!書き狂い!」
家族の声が飛んでくる。
その瞬間、雨日は廃人のように椅子から立ち上がり、ふらふらと浴室へ向かう。
入浴後の雨日は、人としての形をほとんど留めていない。
書きたいのに書けない。
脳内ではキャラがまだ喋っているのに、身体がついてこない。
「無念だ・・・」
そう呟きながら、22時に眠りにつく。
◇映えない休日
こうして書いてみると、雨日の休日は本当にパッとしない。
華やかな出来事も、ほっこりするエピソードもない。
執筆の合間に家事や雑用をこなし、
仕事がある日は、仕事の合間に執筆をねじ込んでいる。
息抜き? 趣味?
ない。
強いて言えば——小説を書くこと自体が趣味だ。
だから、**“趣味ばかりしている休日”**なのだと思う。
それはきっと、とても贅沢なことだ。
こんなに地味で、淡々とした日々を過ごしているのに、
家族はこれを見て「書き狂い」と言う。
◇この日、書いた文字数 20465文字
正直、時間さえあれば もっと書きたい。
むしろ、このくらいではまだ物足りない。
平日は仕事があるので、頑張っても 3,000〜5000文字が限界。
だからこそ、休日に一気に書ける時間は貴重で、嬉しくて、
つい“狂っている”ように見えてしまうのかもしれない。
でもこれが、雨日の普通だ。
そして、雨日の幸せでもある。
◇小説を書き始めて、1年1ヶ月
小説を書き始めて、気づけば 1年1ヶ月が経っていた。
そのあいだ「小説家になろう」で書いた文字数ーー
連載も、短編も、エッセイもぜんぶ合わせると、
この13ヶ月で 163万3千文字。
計算して、思わず固まった。
まさか自分がこんなに書いていたなんて。
もともと文章を書くのは好きだった。
それでお金もいただいている。
けれど、これほど書けるとは思っていなかった。
量を書けば上手くなるのか?
それについては、正直まだ実感がない。
でもーー
このペースを三年くらい続けたら、
もっと「読まれる物語」が書けるようになるかもしれない。
そんな未来を、少しだけ夢見る。
だから今は、趣味の世界を、全力で楽しみたいと思う。
書くことが好きで、書くことが幸せで、
気づけばまたキーボードに向かってしまう自分のままで。
そうか、雨日は書き狂いらしい。
・・・自覚ゼロだけど。




