異世界恋愛から足を洗ったら、シリーズ全作ランクインした話
異世界恋愛から足を洗ったらシリーズ3作がランクインした結果
おはようございます。雨日です。
新連載開始とともに寝違えた。
首の痛みを抱えながら、このエッセイを書いている。
この文章は、『秘密を抱えた政略結婚』シリーズを「小説家になろう」で執筆した、
ライトノベル未経験の作者・雨日の創作記録です。
◼️ これは異世界恋愛ではない
小説を書き始めて、もうすぐ一年になる。
がむしゃらに書き続けた連載はシリーズ2を終え、昨日からシリーズ3の連載を始めた。
処女作とシリーズ2の合計文字数は、約110万字。
一年前の自分が聞いたら、きっと信じなかったと思う。
処女作を書いていた頃から、家族は口をそろえて言っていた。
「これは恋愛小説ではない」
その言葉に、雨日は真っ向から反論した。
「これは恋愛小説なのだ」
どこから、どう読んでも恋愛小説。
愛の物語。
それだけは譲れなかった。
だが、家族は負けない。
「いや、恋愛じゃない。戦略とか血の継承とか、武器製造とか――それ、異世界恋愛ではない!」
「じゃあ現代恋愛なの?」
「それも違う。雨日は文芸ジャンルに行った方がいい」
そう、勧められたのだ。
文芸?
それって、過疎地だよね。
異世界恋愛ジャンルがお花畑で、たくさんの蜂(読者)が蜜を求めて群がっている一方、
文芸ジャンルは、だだっ広い野原のように思えた。
花はあるけれど、どこに咲いているのかわからない。
自分で獲物(読者)を探しに行かねばならない世界だ。
・・・いやいや、これは恋愛だ。
確かに戦略も血も出てくる。
だが、誰かを守りたいという思い、失いたくないという祈り――それこそが、恋愛の根源ではないか。
雨日は頑なだった。
そして一年後、結果として家族の言葉が少しだけ当たっていたことに気づく。
◼️事件が起きたのは、この直後だった
60万文字の連載を終えた雨日の小説に、感想が届いた。
底辺をうろうろしていた雨日の作品に、読者様が――感想を入れてくださったのだ。
その通知を見た瞬間、指が震えた。
涙が出るほど嬉しかった。
誰かが「読んだ」と言葉をくれたのだ。
無言のスルーが当たり前の世界で、それは奇跡みたいな出来事だった。
感想一部抜粋:
「前作に続き、しっかりと作られたシナリオで、文体も美しく、とても読み応えがありました。
歴史ジャンルであれば大勢の読者が多くのポイントを入れ、
喧々諤々の感想を披歴しただろうと惜しく思います」
え? 歴史ジャンル?
その感想を読んだ家族が、すかさず口を開いた。
「ほら!見たことか!やっぱり異世界恋愛じゃないんだ!」
その口調はまるで、――仲間を得た。
そんな感じで、嬉しそうに震えていた。
雨日は首を押さえながら(まだ寝違えが痛い)、
「いや、でも恋愛はちゃんとある」と小声で反論するしかなかった。
◼️ 住み慣れた異世界恋愛から離れるのが怖い!
この言葉が、文芸という“過疎地”に引っ越すかどうか――雨日を大いに揺らした。
ヒトは安定を求める生き物だ。
住み慣れた異世界恋愛から離れたら、どうしよう。
今でさえ底辺の世界で暮らしているのに。
そしてさ、ちょっと“浮気”(=文芸)したら悪いな、と思う。
だって、テンプレ外の雨日の小説に――
処女作で480ポイント、2作目で180ポイントを入れてくれた読者様がいるのだ。
その人たちのことを思うと、「異世界恋愛」にいた方がいい気もする。
悩む雨日に、家族が言った。
「雨日の小説を読んでいる読者は、“なろう”ではない」
・・・どういうこと?
小説家になろうで連載してるのに?
まるでなぞなぞのようだった。
「物語を“楽しめる人”じゃないと、あれは読めない」
そうなのか?
「あんな長文で、展開が遅くて、しかもバッドエンドな話を読む人は、“なろう”では稀なんだよ」
・・・うん?
それって、褒めてる? けなしてる?
どっちだ?
◼️勇気を出して引っ越した
雨日にとって、それは清水の舞台から飛び降りる覚悟だった。
文芸、そして歴史ジャンルへの引っ越し。
雨日は5か月間、このエッセイを書き続けてきた。
だから文芸ジャンルの空気は知っているつもりだった。
人は少ない。
けれど、読んでくれる人は優しい。
静かで穏やかな世界。
そして、惜しげもなくポイントをくれる。
――が、歴史ジャンルはちょっと違った。
ランキングを見て驚いた。
異世界転生が幅を利かせている。
現代人が戦国時代に転生して、無双して、家臣を従える・・・そんな物語が並んでいる。
どうしよう。
結局、“ざまぁ”“令嬢”が多い異世界恋愛と似ているじゃないか。
テンプレはどこにでも強い。
震える足で、雨日は小さくつぶやいた。
「お、お邪魔します・・・」
そして、歴史ジャンルの扉をそっと開けた。
◼️歴史ジャンルに引っ越したら、ポイントが入り始めた
昨日から始めた連載を、思い切って「文芸・歴史ジャンル」にした。
異世界恋愛でも需要がない小説だ。
それを、さらに読者の少ない歴史ジャンルに移動させたら――
もう誰にも読まれないだろう。
・・・そう思っていた。
けれど、ここから一歩を踏み出そう。
そう決めた直後、不思議な現象が起きた。
ポイントが入り始めたのだ。
移動した翌日、恐る恐るランキングの表示をタップする。
「このエッセイがランクインしてるんだろうな」
そう思いながら画面を見た。
次の瞬間、息を呑んだ。
半年前に完結したあの小説が、文芸・歴史ジャンルで――6位。
・・・えっ?
思わず声が漏れた。
しかも、今まで鳴かず飛ばずだったシリーズ2までランクインしている。
さらに、昨日始めたばかりの新連載も!
シリーズ三作すべてが、ランクインしていた。
ポイントもじわじわと増えている。
「どういうこと・・・?」
スマホを握りしめたまま、雨日はただ呆然と立ち尽くした。
◼️異世界恋愛から離れた途端、過去作が息を吹き返した
PVも増えている。
こうなると、悔しいことに――家族の指摘は当たっていたのだ。
雨日は恋愛小説を書いているつもりだった。
けれど、この物語は、愛恋よりも「生き様」そのものを描いていたらしい。
自分が書いた作品は、近すぎて客観的に見えない。
盲目になっていた雨日に、家族と読者様が気づきをくれた。
そのおかげで、テンプレ外でも「なろう」で市民権を得たような気がする。
本当にありがとう。
もちろん、相変わらず――
歴史ジャンルでも雨日の小説はテンプレ外だ。
けれど、今まで「池でマグロを狙っていた」ことを思えば、
これからは「ザリガニくらいは釣れそう」な気がする。
静かな“文芸の野原”で、雨日は小さく竿を垂らそうと思う。
そして、今日も書く。首をさすりながら。
▼シリーズ本編
**『秘密を抱えた政略結婚 〜兄に逆らえず嫁いだ私と、無愛想な夫の城で始まる物語〜』**
https://ncode.syosetu.com/n2799jo/
<完結>
**『秘密を抱えた政略結婚2 〜娘を守るために、仕方なく妾持ちの領主に嫁ぎました〜』**
https://ncode.syosetu.com/n0514kj/
<完結>
そして現在、第3部を連載中です。
**『秘密を抱えた政略結婚 ―血に刻まれた静かな復讐 禁断の恋が運命を変える―』**
https://ncode.syosetu.com/n9067la/
<連載中>




