イカれた街と殺意の音
学校を飛び出してから三日後。
僕は宿泊費の安い、小さなホテルに泊まっていた。
インターネットとかで見てみると僕が行方不明になったのを学校が警察に言ったようで、捜索が始まっている。忍者のように、建物の屋根の上を走ってきたのですぐにはここはばれないと思うが、時間の問題だ。いや、意外とこの街だとばれないかもな。
このホテルのある街、能演町は、数年前から家庭や学校に馴染めなかった子たちがやってきて、夜遅くまで遊んだり、ここのような宿泊費の安いホテルに泊まったりしている。精神的に参っている人が多く、酒やたばこはもちろん、中には薬物をやっている子も多い。最初は警察も取り締まっていたが、あまりの数と増え続ける人口に手をあげ、子供たちの無法地帯のようになってしまい、まさしくイカれた町になってしまった。
「まぁ、能力者だってばれない限りは大丈夫か。・・・ん?サイダー切れてる。しょうがない。買いに行くか」
能演町は、正直夜は危険だ。酒に酔ったり、薬物で頭のおかしくなった人が襲い掛かってくることなんてよくあることだ。でも、昼はそう言ったことが少なく、ただ、嘔吐物の臭いがする汚い街である。
これからどうやってヘリクリサムについて調べるか。そんなことを考えていると・・・
「いいじゃん。マジでやっただけでハイになれるんだぞ」
「いや、やりません」
少年に男が何かを進めていた
・・・ああ、またか。
能演町の昼は夜よりはマシとと言ったが、決して安全とは言えない。近くの店では酒やたばこは未成年には出してくれないし、ましては薬物なんておいてあるはずもない。なのでこのように別の町などで大人が買ってきて、それを子供たちが買うようだ。
まぁ、きりないしかわいそうだけど自力で何とかしてもらうか・・・
そう思ってると
「わかった。じゃあついてこい」
男が歩き出し、少年がついていった。どうやら少年はやるといったようだ。
この少年は酒をやるのか、たばこなのか、薬物なのか。どれにしろ一生が台無しだよな。でも、自分が選んだことだ、僕はかかわらないほうがいい
ーでも、これで少年が捕まって、ニュースで彼の顔と名前が出たとき、僕は気にしないでいられるのかな?あの時止めてればって思わないかな?
そう思うと、無意識に足はあの二人のことを追っていた。ついた先は今は使われてない。ライブハウスのようだ。その中では少年と、何かを進めていた男と、その仲間と思われる男5人。計7人がいた。
男の一人がカバンの中から袋に入った葉っぱのようなものを取り出した。
ー薬物か。あれを使った瞬間彼の人生は終わる。でも、僕が救ってみせる。
「まて」
隠れてた柱の裏から出て来て、大きな声で言った。全員こちらを向いた。
「てめぇ、何もんだ?」
男たちの中のボスのような人が言った
「僕はそこの少年を救いに来たものだ。その薬物は使わせない」
「こいつが望んだことだ。他人が口出しするな」
「悪いが無理な相談だ」
「しょうがない。お前たち、やれ」
ボスの命令でほかの5人が襲い掛かってきた。
ー全員力はあるようだが、戦闘慣れはしていない。全員、力任せにやってきてる。エスカトロジーを使うまでもない。
一人、二人、三人、四人、五人。一人ずつ確実に倒していった。男たちはどうやら倒れて声も出せないようだ。
「っち、使えないやろうが。おいそこのガキ」
残ったボスが話しかけてきた。
「なんだ」
「お前、なかなか強いな。どうだ、俺たちの仲間にならないか?この街ではお前みたいなガキはかせげねぇ。でも、俺たちの仲間になれば、この街でだったら生きてられるぞ」
「悪いが、お前らレベルまで落ちぶれるわけにはいかないんでね」
「そうか。じゃあ、お前に用はない。
サウンドブレイク」
突如、ボスの手にギターが現れ、周りにアンプが現れた。それも、一個や二個ではない。何十個も、このライブハウスのいたるところに現れた。ボスがギターを弾いたその時。
ギャイーン
鼓膜が破れそうな音が近くのアンプから流れたその時、海野は何かを察した。後ろに滑るように下がると、
ザシュ
さっきまでたっていたところが削られるかのようにえぐられた。
「ヒァッハッハ。どうだ俺の音は。俺のエスカトロジーは。耳に響くだろ?俺のギターの腕はヘリクリサムの中でも上位に入るからな!」
「ヘリクリサム⁉まさかお前、一員なのか?」
「あ?ヘリクリサムを知ってるだと?そんな奴、生かせておくわけにはいかないなぁ!」
ギャイーン ジャンジャカジャンジャカ
ーいったいどのアンプから出るのかわからない。しょうがない。まだ完全には勘を取り戻してないけど、僕もエスカトロジーを使うか
血液暴走
ズドーン
海野は血だまりをその場に残して相手の攻撃に対抗し始めた。
読んでくださりありがとうございます。最近、とあるところで家庭や学校の環境に馴染めなかった子供たちが集まり、夜遅くまで騒ぎ、中には酒やたばこ、薬物までに手を出してしまう人がいるという話を聞きました。僕もまだ高校生で、彼らとは年齢も近いので、そんなことが起こっているなんて信じられませんでした。そんな現実が少しでも良くならないかと思って能演町を出しました。少しでもこのような人が減ることを心から願っています。よろしければ、ブックマークや感想、お気に入り登録などお願いします。作品を書く励みになります。それではまた次回