三分の一の速度はつまりゴミ
アルセーヌは裏拳で一人を殴り飛ばすと、強欲の翼で不規則な動きをしだす。
あっという間にやられた仲間のチンピラを睨みながら
斧を振りかざしてアルセーヌに斬りかかろうとする。
たった一人で魔物5匹を殲滅したアルセーヌにあの
チンピラが勝てるとは到底思えない。
「うおらぁぁぁぁぁぁ!!!!」
チンピラの遅い、遅すぎる走りと斧の振りかざしに
アルセーヌは避け・・・れない!?
・・・あいつバカだ!不規則な動きによってその変則的な気圧変動で気絶してる!
仕方ない・・・俺がやるしか無いのか?
いやでも、俺には武器が無い。
如何にチンピラでも武器無しの戦闘初心者なんて流石に余裕だろう。
・・・いやまてよ?ソウルマスターは英雄の能力を使用出来るように成るとアルセーヌは言っていた!なら・・・
剣・・・剣・・・剣・・・剣・・・剣・・・
「うーん・・・」
中々具現化させる事が出来ない。
目を開けて周囲を見渡すが、紫色の濃いもやが辺りに掛かりはじめていたが、チンピラは気付かない。
どうやら気絶してるアルセーヌに攻撃が当たらない事に、全て避けられているとでも勘違いしてしまったらしく、絶望に打ちひしがれている。
・・・哀れなゴブリン以下め・・・
さて、気を取り直してやってみよう。
俺は剣のイメージはかなり上手くいっている。
俺の家系は武家だったので、様々な武器を使った訓練は当然していた。
・・・剣じゃない?俺に深く紐付いた近接武器は?
なら・・・・・・・刀?
瞬間、辺りは紫色の轟々と燃える炎に包まれた。
だが、熱さも、行列に並んで居る人も何も気にしているようには見えない。
不思議そうにしている俺の手には一振りの立派な刀があった。
鞘は夜の闇に飲み込まれそうな程の黒い、シックな鞘だ。握り手はそれと対照的に太陽の光より圧倒的に白く、握るととても手に馴染む物だった。
刀身は鈍い鋼の光で、刃は薄いがその刀の陽光に反射した光は、妖しい鋭さを感じることが出来る。
俺はその刀の峰を構えて、チンピラに気配を消して、ゆっくりと確実に近付いてゆく。
ヒュオン!
その風を切る音と共にチンピラは崩れ落ち、俺は意識を霧散させると紫色の濃いもやも、刀も消えていた。
俺は某ポケットの中の怪獣で闘うゲームのようにアルセーヌを戻す。戻れ!アルセーヌ!
それをみて衛兵の人は顔を真っ青にして何かブツブツ言いながら此方に近付いてきた。
真ん前まで来たところで、彼は言った。
「あんた・・・ソウルマスターだろ?」
「え、あ、はい。あいつはアルセーヌです」
俺は咄嗟に頷くと共に念の為アルセーヌを紹介した。
「そいつぁ・・・すげぇぜ。まぁ、取り敢えずここの領主サマに会うんだな、そう命令だ。」
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