クロトンの街
「はぁ、今日はここで野宿か・・・」
俺が気怠そうに言うと、アルセーヌはニヤニヤと笑う
『ふふふふ・・・聞いて驚け!我が特別に強欲の翼を解放して、ここから三日分の道を短縮しよう!』
「おぉー!強欲の翼って、
どう言う原理なんだ?」
『え?そこから?』
「うん、そこからだよ?あの忘れてるかと思うけどさ
俺、転生者なのよ。後殆どの人がそれ知らない筈だ」
『そうゆうものか?』
ハァ、コイツ・・・常識があるのかな?
俺がそんな失礼な事を考えていると、アルセーヌは
『あるぞ・・・・・・・多分、きっと、メイビー?』
「多分じゃねえかよ!!」
『ん、コホン、ま、まずは強欲の翼は・・・いや、強欲の類は
何かを強くそう在りたい、成りたい、
欲しい、と願えば願う程、その効果は高くなる。
例えば、強欲の翼はより速く、より速くと願えば願う程速くなってゆくのだ』
「成る程、遅くと願えば願うほどゆっくりと進む。
アレ?変則的にと願えばどうなんの?」
『ふむ・・・それはまだ確かめた事が無いな、試してみるか!』
「え?ちょ、おい!う、うわぁァァァァァァァァ!」
それが、俺の遺言だった。死んではいないが。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして、変則的に飛ぶ、そうアルセーヌは願った。
すると、先程まで真っ直ぐに飛んでいた所が、遅くなったり、速くなったり、曲がり戻り回り・・・グチャグチャに飛んだ。
「早く止めろォォォォォォ!!!バカセーヌ!」
『何がバカセーヌだこの・・・あれ?お前名前なんだっけ?』
「荒垣徹だよ!そんな事すら覚える事が出来ないのか
ボケセーヌ!」
『なっ・・・!落としてやろうかこのあほガキめ!』
アルセーヌはそう喚いているが、俺はとても重大な
事に気がついた。
「オイ、アルセーヌ・・・」
『うん?謝る気になったか?』
「いや、違くてよ・・・このままだと街の城壁にぶつかる!」
『え?え、あ!ストップ!ストップ!ストッォォォォォォプ!』
大声を出しながら、街の城壁の寸前に何とか止まる事が出来た・・・が、街に入る手続きをしている人々の
注目を集めた。
「だ、大丈夫か?怪我は無いか?ここはクロトンの街だ。」
「あたた・・・此処がクロトンの街か!やっと着いた
か、ん?アルセーヌー?」
恐らく見張りの人に色々聞かれつつ、居なくなっていたアルセーヌの事を考える。
深く思考の海に潜っていたせいか、見張りの人の問いに答えられて居ないが、アルセーヌは本当に何処に行ったのだろう、という事に思考を引っ張られていた。
『我なら此処に居るだろう?まぁ、お主の中に入ったからな、分かるわけが無いな。』
「あ、アルセーヌそこに居たのね!ならいいや」
『え!?放置!?辞めて!そんな酷い事しないで!』
さて、アルセーヌの居場所も分かった事だし、そろそろ見張りの人との会話を嗜むか。
「おい、大丈夫か?反応しねぇけどよ」
「ん?あぁ、済まない連れが何処にいるかを考えていてな、大抵の考えは着いたから今は大丈夫だ。」
俺がそう言うと、後ろの方から男二人組が来た。
俺を見つけるや否や、いい玩具を見つけた、という顔で此方に来た。
「大丈夫じゃねえだろ、こんなガキ、おいガキ、てめえ金出せよ。まぁ、良かったな俺達みたいに優しい奴で良かったなァ!命は安全だからよォ!ギャハハハ」
「ぶははは、ちげぇねぇ!」
汚い笑い声を立てる男二人組に対して、
他の並んでいる人達は、面倒な事に関わらないように
顔を背けていた。