緊張
青白く輝く光線は大木を易々と斬り倒し、ハイドラやラトリスファーの元へと迫る。
ハイドラは自身の魔力をこれでもかと腕部に集結させガントレットのようにして光線を防ごうとする。ラトリスファーは単純にジャンプして太さ7センチもある光線を避けようとする。
そして光線がハイドラの元へ迫った瞬間に最もハイドラの魔力が集まった部分をまるで紙切れでも切るかのように容易くスパッと切り裂いた。
咄嗟にしゃがんでなんとか一命を取り留めるが、逃げ遅れた紺色の髪が離れた。
切られた髪の毛の断面は、くっつければそのまま戻ってしまいそうな程に美しかった。
そんな驚異的な威力を誇る光線をラトリスファーは軽々とジャンプで避けた。
ハイドラは目を丸くし一瞬そこに気を取られた。
その隙を突かれて男の接近を許してしまう。
鋭い斬撃がハイドラの胴体を狙う。それをハイドラは魔力を守りの形にするのではなく、一瞬だけ魔力を放出して、勢いを殺す。
そうしても男の剣は充分な勢いを持っており風圧でハイドラの体を蹌踉めかした。
その隙を見逃さずにラトリスファーは傲慢の剛翼を使って猛加速。
勢いに物を言わせてハイドラに斬りかかる。
「甘いんだよゴミがっ!」
「ぐっ!?」
渾身の力を込めたラトリスファーの一撃は容易くハイドラの脚によって弾かれる。
しかし加速したまま斬りかかったため反撃を受けずに済んだ。
ハイドラの真横には男。そして数メートル先にラトリスファー。何処に逃げてもハイドラは両者の追撃を受けてしまう状況に置かれていた。
(くそっ!なんだ此奴ら!あの翼生やす奴は何時だって殺せる。でもなんだあの化け物!くそっくそっくそっ!私が何体に分裂したって直ぐに殺されちまう!!)
ハイドラは冷や汗を流して考えを纏める。
ハイドラは生存へと考えをシフトしていたが、何時まで経っても脱出の糸口を見つけ出せず居た為、ラトリスファーを殺す事を再度目標へと変えた。
「消えて無くなっちまえ!謙虚の雷」
白い稲妻はハイドラの元へと向かう。
しかしハイドラはそれを右に跳躍して回避する。
しかしハンブローサンダーは地面スレスレで直角に曲がりハイドラを追尾する。
「なんだよそれ!」
ハイドラが悲鳴に似た叫び声を上げてハンブローサンダーを蹴る。
先端には槍のように収束されたエネルギーがあり、簡単には霧散させる事など出来ない。
しかしそこは流石と言うべきか、ハイドラはいとも容易くエネルギーを霧散させた。
しかしハンブローサンダーの魔物に対する殺意はそこで終わらない。
霧散したエネルギーは無数の矢となってハイドラへと向かう。
そこでハイドラはいっその事ハンブローサンダーを喰った。それは本来なら体内から体を灼かれ、体からは無数のエネルギー矢が突き抜けてゆく自殺行為。
しかしハイドラという魔物の性質上それを可能とした。
ハンブローサンダーに宿った莫大なエネルギーを吸収して得た魔力などで無理矢理に損傷を修復する。
「あちゃー………」
男はなんてこったと言うような仕草や言動をしつつも、その顔には微かな喜色が見られた。
ラトリスファーは顔を蒼くし、落ちてきた日を見て焦りを感じた。
何故なら、ハイドラは夜行性だからだ。
夜になってしまえばハイドラは今よりも自由に動き回るだろう。
それに夜、人間は余り視界が広く無いのに対してハイドラは今は閉じてある一億を越える複眼によって夜でも昼以上の視界を確保出来るのだ。




