将士の挑戦!
やっと再開……
仕事は考えた方がいいな~……
甲斐が引退となったとはいえ、ボクシング界の熱は冷めていない。隆明はしっかりと日本バンダム級のチャンピオンとなり、3度の防衛の後にベルトを返上した。明らかに世界を狙うと言っている物である。
忘れてならないのが昇龍である。こちらもしっかりと勝ち星を重ね、気が付けば東洋太平洋のランカーとなっていた。バンダム級は最も熱い階級なのかもしれない。
しかし、ここの主役といったら将士と哲男だろう。直接対決した日本タイトルはドローであり、その後の歩みはお互いに日本にとどまらない。2人はしっかりと勝ち星を重ね、お互いに世界バンダム級のランカーとなっていた。
そんなある日、本日も将士は拳王ジムでしっかりと汗を流していた。
「おい、将士」
「何ですか?」
「お前、確か世界ランク……」
「一応、WBAが8位でWBCは7位ですよ」
「……IBFとWBOは?」
「両方とも10位」
「……確かにいよいよだな……」
「??喜多さん?」
「おう喜多、どした?」
「手塚、お前は本当に阿呆だな?」
「何だよ、喧嘩売ってんのか?」
「いや、お前は平和だと思ってな……」
「……将士、こいつ殴っていいか?」
「……お2人に任せます、僕は練習中なんで!」
将士はサンドバッグを叩き始めた。喜多は将士から少し離れて行く。手塚は喜多に付いて行く。
「……手塚、今の将士はどう思う?」
「……強いな……少なくとも、俺達が初めてベルト巻いた時よりはな」
「……そうなると……」
「この先……だよな……」
2人は顔を見合わせた。
将士が拳王ジムに来て、早8年の月日が流れていた。高校を卒業して上京し、毎日の練習に明け暮れて8年。確かに2人が認める強さになっているのかもしれない。
「どうしたの、2人共?」
「篠原さん……将士もいよいよかな~って思って……」
「哲男と試合して、そこからしっかりと成長した……今や、期待のボクサーですからね……哲男と並んでってのが気に入らねぇけど!」
「……並んでないよ。向こうのが、ランクは上だからね。でも、先に行かれてるとは思わないけどね」
「「納得!」」
「で、どうしたいの?」
「今が1番いい時なんじゃないかと思って……」
「あいつが目指す所へ……」
「……どうやら、同じ考えをしてる輩が居るみたいだね」
「「??」」
「川上ジムから試合の打診。どうやら、あっちも決着を着けたいらしい」
「「おう??」」
「これは……勝ってそのまま世界取りだな?」
「おう、勝って世界取って、万々歳だ!」
「気が早いな~……でも、世界前哨戦になるんだろうね」
どうやら、将士にビッグマッチの話が来ていた様である。この話を将士はすぐにOKした。将士も哲男との対戦を望んでいたのかもしれない。将士は自分の頬を強く叩き、気合いを入れてからロードワークに出た。
一方の川上ジムだが、
「おい哲男、中台との試合が決まったぞ」
「マジですか?」
「……嘘言って何になる?」
「よし!一気に駆け上がるぞ!ロード行って来ます!」
「……石谷、やる気満々だな?」
「いい傾向です。池本にも、見せてやりたいですよ」
「だな!」
川上会長と石谷トレーナー、哲男のやる気が嬉しいらしい。こちらも準備はしっかりとやりそうである。
将士と哲男は同じ時間にロードワークに出た。ならば、最もあり得る事が起こるのも納得である。
「将士」
「あれ?哲男君?」
「ロードか?」
「そっちもだね?」
「まぁ、将士をKOしなくちゃいけねぇしな!」
「あっはっは。哲男君は僕にKOされるんだよ!」
「俺が勝つんだよ!」
「勝つのは僕さ!」
2人はお互いの目を見詰める。
「手は抜かないよ」
「おう、手加減無用だ!」
2人は硬く握手をすると、そのまま別れて走って行った。気持ちも2人は、準備が出来た様である。
そこからの時間は早かった。これは、等の本人達にはもっと早く感じられていたのかもしれない。それだけ2人はやる事が有ると認識しており、お互いをしっかりと警戒している証拠である。だからこそ、お互いのセコンド陣はこの試合は取れると思っていた。
試合前日の計量日、将士と哲男は後楽園ホールの計量会場に居た。2人共に1発で計量をパスし、会見場に場所を移した。
記者から質問が飛ぶ。
「2人共、高校からの親友で日本タイトルで1度対戦してますが、今回の豊富を」
「まぁ、前回はドローでしたけど、今回はしっかりと決着は着けます。俺の華やかなKOでね」
「前回ドローとはいえ、僕には何も残らなかった。だから、今回は僕がしっかりと残します」
「俺にKOされる事をか?」
「馬鹿だな~、僕が哲男君を追い越すのさ!」
「ほう、俺を追い越せるのか?」
「訳無いね!」
「口だけ男め」
「哲男君程じゃないさ」
お互いの鋭い視線がぶつかる。
この状況に会見場は一気に静かになった。2人の戦いは既に始まっているのである。
フェイスオフの写真を撮られ、2人はそれぞれに自分のジムに戻って行った。
ジムに戻った2人、そのまま確認をする様に動き出した。軽くシャドーをし、シャドーが終わるとサンドバッグをゆっくりと叩く。いつもよりゆっくりと動いているのだが、2人の背中からは湯気の様な物が上がっている。細胞が明日の試合を待ちきれず、既に沸騰仕掛かっている感じである。
明日の試合、果たしてどんな結果となるのだろうか。
さぁ、遂に物語は終盤へ!
次の話はもう考えてあるんだけど……やっぱり仕事は考えないとな~……




