合宿が終われば!
すいません、なかなか暇が出来なくて……
ゆっくりと更新します。
合宿も最終日となり、本日も将士と隆明は練習である。朝のロードワークに始まり、しっかりと本日も動いている。
午後には、いつもの通りスパーリングを中心とした練習となり、最後の喜多とのスパーリングが終わった時には2人共にぐったりである。
「よし、仕上げだね」
「「ま、まだ有るんですか?」」
「これからだろ?」
「ここが大事だ!」
「「!?」」
「ほら、2人でスパーリングだよ。喜多に手塚、準備」
「「おう!」」
将士と隆明のスパーリングで合宿の締めらしい。
準備が出来た2人、そのままリングに上がって身体を動かしている。
「さて、ここからだな?」
「お?手塚も分かってるの?」
「酷いぞ、徳井」
「お笑いやるなって……しかし、ここで進化が問われるな?」
「「納得」」
「3人共、良く分かってるね」
「「「トレーナーですから!」」」
このスパーリング、実は内容以上に求められている物が有る。
ボクシングは、上に上がる程にラウンド数が増える。特に珍しい物ではないが、世界戦となると12ラウンド、単純計算で36分間戦う。他の格闘技より、遥かに長丁場である。長ければ長い程、ピンチだけでなくトラブルが起き易い。そんな時に自分達を支える物、それこそ精神力というエネルギーしかない。
スタミナが切れた将士と隆明、今の状態でのスパーリングで問われる事は精神力。上に上がる際の資格が有るのか、4人はそれをこのスパーリングで確かめたいらしい。
将士vs隆明のスパーリングだが、ある程度は4人の予想通りの展開となる。
前に出て行く将士の足取りが重く、パンチにも切れがない。パンチを振るうのもきつそうである。
対する隆明だが、こちらも動きが重い。将士のパンチをかわして反撃したい所だが、反応に身体が付いて行かず、ガードする形となっている。
動きが鈍い2人だが、闘志は萎えていない。お互いに引かず、体力的には厳しい2人だが、見応えは充分である。このまま1ラウンドは終了となった。
「やる気を感じんな?」
「負け夫になるのか?」
「ボクシング辞めたら?」
喜多·手塚·徳井から容赦ない言葉が飛び交う。
「「これからっす!」」
将士と隆明の言葉が被る。
「口だけにならない様にね」
篠原会場の言葉の後、2ラウンドが開始された。
2ラウンド、ここも前のラウンドと大差なかった。
将士は前に出て、隆明は距離を取る。スタミナの切れた状態で、それでも2人は戦い続ける。気持ちの成長がとてもよく分かる。
このラウンド、1ラウンドの時よりも際どいパンチが増えている。それだけ、2人に妥協という言葉が無いのだろう。スパーリングでは勿体無い試合である。
ラスト数秒、隆明が将士の右フックにカウンターを合わせた。少し後退する将士、隆明はそのまま前に出るのだが、将士の左ブローがスリークォーターから隆明目掛けて飛んで行った。スマッシュである。隆明はこのパンチを喰らうと、よろよろと後退していく。
ここで、ラウンド終了のゴングが鳴った。
リングを降りる2人、
「まだまだだな」
「走って出直し!」
「ロードワークで合宿終了だな」
「はいはい、休まないで行った行った!」
4人に煽られる様にジムを出て行く将士と隆明、その顔には明らかに不満である。
「くそ!全くダメだ!」
「これじゃ、哲男君に追い付かない!」
「将士君、将士君にも負けないからね!」
「僕だって!」
激しく意識し合う2人、ペースは自然と上がっている。
一方の拳王ジム、
「徳井、隆明の気持ちは強いな?」
「中台君も負けてないよ」
「……ここに哲男だろ?……俺達の時より、激しくないか?」
「手塚君、環境が違うんだよ」
「「「環境?」」」
「君達の時は、同じジムで時々スパーリングをしても、試合はなかった。でも、この3人はいずれやる……可能性が有る。意識もするし、激しくもなるさ」
「……俺達より、恵まれてるかもな?」
「そうだな……喜多と違うジムだったら……もしかしたら、世界タイトルで戦ってたかもな?」
「勿論、俺がチャンピオンで俺のKO勝ち!」
「俺の勝ちに決まってるだろ?」
「……恵まれてるとは限らないぞ」
「「何故?」」
「うちの会長は馬鹿だ」
「おお、それな!」
「あれはハンデだ!」
「それはさて置き、刺激という意味だと、確かに恵まれてるね。それだけ、トレーナーの責任も大きくなるけどね」
「……まぁ、隆明のKOだらうけどね」
「いや、将士の勝ちだ!」
「おう、将士には俺と喜多が居る!」
「西田級の馬鹿2人?」
「「おい!」」
「いずれは結果が出るんだ。それまでは、しっかりやっていこう」
「「「はい!」」」
どうやら、2人共に精神面は合格の様である。これから、この2人も楽しみである。
その頃、川上ジムでは哲男が石谷トレーナーから絞られていた。
「おら、気合いが足りん!」
「強く打て!」
「速く速く速く!」
石谷トレーナー、ミットを持ちながら激を飛ばしている。哲男は肩で息をしながら、ミット目掛けて一心不乱にパンチを放っていく。
「ビー」
ブザーが鳴り、ラウンド終了である。
「サンドバッグ打って出直せ、この貧弱野郎!」
石谷トレーナーは外したミットを哲男に投げ付けた。哲男は悔しそうな表情でサンドバッグを叩き始める。
「石谷、どうだ?」
「闘志は認めますよ。しかし、まだまだこれからです」
「そうか。気を抜くなよ」
「勿論!」
哲男の方も、抜かりは無い様である。
仕事が落ち着きましたら、もう少し頻度を上げますね。




