対決間近!
試合に向けて……
3日間の休暇が終わり、将士はジムワークを再開した。住み込んでいるのがジムの合宿所の為、将士は休暇中に身体を動かせずにいた。喜多と手塚が交代で見張っていたのである。
「やっと練習だ!徹底的にやるぞ~!」
将士、相当に張り切っている。
「よし、将士はアップが終わったら俺とスパーな」
「手塚の後は俺な」
「はい、お願いします!」
将士は手塚と喜多とのスパーリングを行う事となった。
このスパーリングだが、今までとは違う物になっていた。確かに手塚とも喜多とも将士は攻められるのだが、将士の息が上がらない。打たれても体力的に問題は無いし、打ち合いや追い回したりした時に身体の疲れが違う。当然、手塚も喜多も将士に打ち込まれる場面が出て来た。
「……中台君が、物足りないってさ」
「言ってませんよ~!」
「……顔が言ってる」
「明日、絶対にボコってやるからな!」
喜多も手塚も、目付きが鋭い。どうやら、将士のパワーアップは成功の様である。
このまま、将士は試合までを乗り切ると思ったのだが、そういかないのがボクシングである。将士はここから、減量という戦いを強いられる。
今までなら、それ程の事も無かったのかもしれない。しかし、今回は喜多と手塚によりパワーアップをした後である。ウェートはそれ程変わらないとしても、筋肉量が変わっている。将士の減量は、これまでより厳しい物となっている。
「オラオラ、気を抜いてんな!」
「動け将士!」
喜多と手塚の怒号が飛ぶのだが、将士は口数こそ減っているが、黙々と練習をこなしている。減量が有るからこそ、ボクサーは強くなれる。そんな事を言ったボクサーが居たのだが、確かにその通りなのかもしれない。確実に将士は成長していると感じる。
10月10日、試合まで1ヵ月を切った。
将士の練習はそれ程変わらない。スパーリングを中心とし、ひたすら練習している。スパーリングでは、喜多と手塚にやられる場面も多いのだが、反撃する場面も増えている。将士の気持ちの成長も見て取れる。
ウェートはリミットまで残り1.5kg、減量も佳境である。
10月25日、練習も最終段階である。
この日、将士のウェートはリミットまで落ちた。将士の表情が、明らかに緩んだ瞬間である。
「終わってねぇぞ!」
「気持ちを切らすな!」
喜多と手塚の激が飛ぶ。将士は改めて表情を引き締め、試合までの少ない時間を目一杯使う事にした。
この日のスパーリングだが、手塚がコーナーに押し込まれる事が有り、喜多はカウンターを貰う場面が有った。将士、確実に仕上がって来ている。
「練習にならねぇだろ?」
「お前こそ、何でやられてんだよ!」
喜多と手塚、将士にやられた事が悔しいらしい。篠原会長だけ、顔が笑っている。
11月1日、疲れを取りながらの練習である。
この時期、最高の状態で試合になる為に、最新の注意を払っていく。これは将士だけではない。トレーナー陣も選手に注意を払い、不安を残さない様にしていく。特に将士は、試合前でも練習を辞めようとしない。喜多と手塚、将士の練習を止めるのも仕事となっている。
この日、将士のミットを持っていたのは手塚であった。少しとはいえ、将士はエネルギーを接種出来ている。その為、パンチに思った以上に力が入っている。
[パァン!]
「ッ!」
乾いた炸裂音の後、確かに手塚の声が微かに聞こえた。将士は気付いていない様だが、
「よし、将士はサンドバッグで上がれ。手塚、ミーティングな」
喜多はミット打ちを止めた。
会長室に入る喜多と手塚、将士はサンドバッグを殴っている。
「……手塚、手首をやったな?」
「……面目無い……」
「相当なパンチだったのか?」
「そりゃあ……しかし、俺の受けミスだ」
「ここで満足されちゃ、困るからな」
「おう、上手く誤魔化すさ」
「まぁ、俺がミットは持つよ」
「悪いな……スパーリングは……」
「大丈夫、俺が何とかするさ」
「……すまん……サポートする……」
「おう、頼むぞ」
確かに手塚のミスは有ったのかもしれないが、将士のパワーアップも確かな物である。
11月6日、計量日である。
将士は喜多と会場入りした。既にガンボアは来ており、将士とガンボアは視線を合わせた。2人共に無言であるが、激しく火花が散っている。2人共に、静かに燃えているのが分かる。
計量は、2人共に1発でパスした。その後は、顔を合わせる事なく会場を後にした。臨戦態勢に入っている様である。
拳王ジムに戻った将士、最後の調整の為に喜多の持つミットに向かって、1発1発パンチを確認していた。試合に対して、入念にチェックを怠らない。油断は無い様である。
ここで、思わぬ事が起きた。
「チワ~ッス!……おお、将士!」
加藤夏雄の登場である。夏雄も明日試合であり、本日は拳王ジムで最後の練習である。久しぶりに、将士と夏雄が並んでサンドバッグを打っていた。夏雄のセコンドは、橋本トレーナーである。天川会長は、今回はお留守番である。
明日に向け、将士も夏雄も仕上がりバッチリの様である。練習が終わると、将士と夏雄は一緒に夕飯を食べた。勿論、橋本トレーナーも喜多も手塚も一緒ではあるのだが、将士にとっては夏雄は特別の様である。夏雄も叱りだが、2人の表情に力が漲っている。明日の試合、楽しみである。
遂に対決!




