将士の精進!
将士、まだまだ修行中!
将士は喜多と手塚の考えた道を通る事となった。これには、将士に全部を説明しなかった事、特に将士自身は新人王に興味が無かった事が大きい。将士のこれからの目標は、A級トーナメントの出場権を獲得する為、日本ランカーに入る事となっている。
「おらおら、6回戦8回戦と突破するんだ。そんなチンタラやってんじゃねぇ!」
「気合いが足りないんだ。全て気合いでカバーしろ!」
本日も、喜多と手塚からは無理とも取れる激が飛んでいる。
将士はこの無理難題に応えていく。ミット打ちでは、喜多と手塚の持つミットのみに集中し、ミット毎吹き飛ばす勢いである。勿論、サンドバッグの時の気合いも変わらない。将士の気合いは、周りにも伝染している。ジム全体が引き締まった雰囲気である。
将士の試合についてだが、こちらも順調である。喜多と手塚の思惑通り、新人王トーナメントが始まる前に将士はプロ5戦目を終えていた。6回戦に上がっており、現在は7戦7勝としっかりと勝っている。
新人王トーナメントだが、バンダム級は哲男が全日本を制していた。東日本の決勝こそ、判定での勝利ではあったのだが、全日本はしっかりとKOで勝利していた。哲男も6戦6勝としており、将士より先に日本ランキング入りをしている。
隆明も東日本新人王を制していた。決勝は見事なKOで勝利し、MVPにも選ばれていた。しかし、その試合で右拳を骨折し、全日本は欠場となっている。現在5戦5勝で6回戦となっている。
もう1人、昇龍である。彼はスタートこそ他の3人より遅かったのだが、必死に練習して試合を短い感覚で行っていた。新人王トーナメントは参加せず、独自のルートで自分を高めている。戦績は6戦6勝、将士と同じバンダム級の6回戦である。
将士が東京に出て来て、気付けば1年半を過ぎていた。勿論、正月も挟んでいる。正月は基本ジムは休みなのだが、そこはボクシング馬鹿の集まる拳王ジムである。
「篠原会長、どうせ暇だからジム開けときましょう!」
「そうそう、弱い奴には休みは無い!」
「……確かにね。それくらいの気合いは欲しいね」
との事で、正月も休みは無かった。勿論、将士はジム皆勤である。将士の母親も、納得するまで帰って来て欲しくはないと思っており、この辺は理解の範囲である。
そんな感じで毎日は過ぎて行き、この1年半で将士も改めて成長したと感じる。何より、
「将士、遊び行こうよ!」
「私と遊ぼ!」
「映画行かない?」
3人に色々と誘われる事は有るのだが、
「アンチョビ?僕は嫌いだよ?……エガちゃんなら、確かに好きだね!」
天然なのか狙ってるのかは分からないが、上手くかわしてボクシングに没頭していた。
少しだけ、ボクシング界に動きが有った。甲斐がオリンピックで金メダルを獲得し、改めてプロのリングに復帰した。復帰初戦がWBA·Sライト級の世界タイトルマッチ、甲斐の世界的知名度を改めて感じる。この試合、5ラウンドに甲斐の左ストレートが見事に決まり、KOで世界奪取となった。
ちなみにだが、この後も甲斐は世界でその強さを遺憾無く発揮する。悉くKOでの勝利を積み重ね、3階級制覇を成し遂げる。更には、その階級全てで4団体を統一するという離れ業にも成功し、アマチュアになる前の獲得ベルトも含めると、何と、世界チャンピオンのベルトは14本にもなっている。歴史に残るボクサーである。
まぁ、プロに復帰してのチャンピオンロードはもう少し後の話ではある。
将士は次の試合に勝つと、A級ライセンスに上がる予定である。もう少しで、喜多と手塚の最初の目標地まで到達しそうである。
「中台君、試合の話が来たよ」
「はい!」
「「相手は誰ですか?」」
「……ソラスト·ガンボア……」
「「はぁ?」」
「ガンボアって、アマチュア世界チャンピオンでしょ?」
「プロ転向したんすか?」
「したんだね……何故かは知らないけど、中台君をご指名でさ……」
「へ~、て事は、プロ初戦ですか?」
「そうなるね」
「……門脇ジム……あ~、アマチュア上がりの多いジムですね……」
「将士で慣らし運転てな感じだな……」
「中台君、断っていいからね。辞めようか?」
「え?何でですか?」
「「やる気なのか?」」
「ダメですか?」
「……やると言いそうな気がしたんだよ……でも、半端ないんだよ?」
「ガンボアのビデオは何度か見ました。何とかなると思うんですけど……」
「馬鹿か?お前の目は腐ってんのか?」
「どうすれば、何とかなるんだ?」
「いや……池本さんや甲斐さん見てるんで……そこまで脅威だとは……」
「あ~、あの2人は引き合いに出さない方がいいね。片方は常識をその拳で打ち破って来た男だし、もう1人はその男の拳を引き継いで、更に輪を掛けたボクシング馬鹿だからね。人間の枠として捉えちゃいけないよ」
「……さらっと酷い事言ってますよ?」
「篠原会長、そんな事思ってたんすね?」
「しょうがないじゃない、事実なんだから!」
「……でも、あの2人が居る以上は……ガンボアなら、何とかなるというのは確かかと……」
「……こいつ、こうなると頑固なんだよな~……」
「喜多、諦めて試合をさせるか?」
「だな」
「いいの、中台君?」
「僕は、やる気満々です!」
「分かった、承諾しておくよ」
「将士、絶対勝つぞ!」
「これから、地獄を見せてやるからな!」
「はい、絶対勝ちます!」
将士のプロ8戦目が決まった。相手はアマチュアの世界チャンピオンであり、プロ初戦のソラスト·ガンボアである。かなり強敵ではあるのだが、将士は真っ直ぐに突き進むつもりの様である。
果たして、どんな結果が待つのだろうか。
勝てばB級ラストの試合、どうなるのか!?




