合宿の目玉はスパーリング!
合宿も終盤へ!
合宿も3日目となり、疲れも大分溜まっている様である。午前中のロードワークだが、誰の足も重くなっている。喜多でさえ、疲労の色が見える。厳しい合宿という事が分かる。
「まだまだまだ~!」
そんな中、1人気を吐いている将士。逞しくなっている。
午前中の練習が終わり、少しの休憩を挟んで午後の練習となる。
「よし、スパーリングな!」
池本の言葉で、午後はスパーリングを行う事となった。全員がそれぞれ2ラウンドずつ行う。8人居る為、計14ラウンドのスパーリングである。かなり厳しい物となりそうである。
このスパーリングでも、将士は1人気を吐いていた。確かに疲れは出ているのだが、それでも自分から攻撃を仕掛け、楽なスパーリングを全くしない。今の自分を確認する様に、将士は1つ1つしっかりとスパーリングをこなす。
喜多も含めて、全てのスパーリングが終わった。
「後は、純也とやるだけさ~。将士君、やるといいね~!」
尚武の言葉で、将士と池本のスパーリングが決定となった。池本は予想していたらしく、既に準備万端である。
将士vs池本、スパーリング…………
将士は頭を振って前に出て行くのだが、この戦い方は池本も同じである。当然、お互いの手の届く距離でのスパーリングとなる。
将士は積極的に、自分からパンチを出していく。左ボディに始まり、コンビネーションで繋げて上のパンチを放っていく。将士の方が軽い階級である為、スピードなら将士に軍配が上がる筈である。
しかし、なかなかそう上手くはいかない。池本は神経を将士の肩口に意識し、将士のパンチを予想しながら避けている。将士にとっては、届く距離の相手にパンチが当たらない。歯痒い展開であった事だろう。
池本はパンチを避けながら、しっかりと反動を付けて将士を打ち抜く。ガード越しでもお構い無し、確かにガード毎破壊しそうな勢いである。
池本の強引なパンチで、将士は一気にコーナーを背負った。そのまま池本が決めると思われた瞬間、池本は右手で軽く将士の頭を小突いた。
「よし、終わりだ」
「将士君、頑張ったさ~!」
尚武からは、予想しなかった言葉を掛けられた。そのまま、池本と将士はリングを降りた。将士の表情は、不満満載である。
「どうした?」
「……何にも出来なかった……」
「当たり前だよ、あの人相手だからな!」
「……1発くらい……」
「……欲張り過ぎ」
「いや、謙虚でしょ?」
「お前、4回戦だろ?」
「そうですけど……でも、納得いきません!」
「……前から思ってたけど……意外に頑固だよな~」
「頑固で悪いですか?」
「そう怒るなよ~……疲れるな~……」
将士、池本とのスパーリングは納得いかなかった様である。
「将士、強くなったら、また相手してやる」
「リベンジしますからね!」
「おう、楽しみにしてるよ!……喜多、お前が先にへばるなよな?」
「はい、気を付けます……」
心なしか、池本の表情が揺るんでいる。
合宿最終日、最後の砂浜ロードワークである。これを終えると、長かった合宿も終わりである。
「将士、付いて来い!」
「はい、離されませんよ!」
喜多と将士、最後までしっかりと走り込んでいる。
「……トマソンとクリスは、帰ったらこってりと練習だな」
「純也、お前も大変さ~!」
「……尚武のジムの連中も、少し情けねぇんじゃねぇの?」
「それは本当さ~、今日からお仕置き練習さ~!」
「お前を見ていつも思うんだが……」
「何さ~?色男か?」
「……笑ってるけど、絶対に悪魔だよな?」
「純也に言われたく無いさ~!」
「いやいやいや、俺のが優しいだろ?」
「純也は見た目から悪魔さ~!」
「馬鹿だな~、どう見てもイケメンだろ?」
「それは無いさ~!」
「池本の面、略して池面さ!」
「お~、純也もボキャブラリーが増えたさ~!」
この2人、何とも言えない掛け合いをしている。それだけ、この2人は分かり合っているのだろう。
午前中の練習が終わり、将士は喜多と東京に戻る事になった。
「喜多君、ありがとさ~!将士君は、これからも頑張るさ~!」
「はい、池本さんに1発喰らわせる様に頑張ります!」
「お世話になりました」
2人は頭を下げて空港に向かった。帰りはバスであり、飛行機のチケットは池本より貰っていた。
「しかし……本土の人間に負けて悔しくないさ~?……情けない、もう1回砂浜走り直すさ~!」
尚武の声で、伊礼ジムのボクサー達は砂浜を走る事になった。この5人にとっても、刺激の有る合宿となった様である。
もう1組、バスで空港に向かっていた。池本とトマソンとクリスである。
「情けねぇ……あれしきでへばりやがって……」
「いや池本、かなり辛かったよ……」
「なかなか、あれだけ走る事は無い……」
「これだよ……お前等、ラリオスの悪い所しか学んでねぇんじゃねぇの?」
「それは酷い」
「しっかりやってるつもりだよ!」
「つもりなだけなんだよ!……もういっその事、引退しちまえ!」
「「そ、そんな……」」
池本、かなりご立腹の様である。
何はともあれ、合宿は終わった。アメリカのボクサーに沖縄のボクサー、将士にはかなり勉強になったのではないだろうか。間違いなく、この合宿で1番の成果が有ったのは将士だろう。
「喜多さん、あの池本さんのフックですけど……」
「頼むから眠らせてくれ……」
1番の被害者は喜多かもしれない。
熱い将士!




