笑顔の悪魔と普通の悪魔!
悪魔ばっかり……
空港から出て、合宿所まで車で移動となった。
「尚武、相変わらずオンボロだな?」
「そんな事ないさ~、まだまだ動くしね!」
「……ケツが痛ぇぞ?」
「純也は鍛え方が足りないさ~!」
何とも不思議な会話である。
揺られる事2時間弱、合宿所に着いた。海が見え、見晴らしのいい場所である。全員が荷物を合宿所に運んだ。近くには、尚武のジムも有る。
「さて、初日だから軽くいこうかね?」
「そうだな、軽く動くとしよう……砂浜に移動するぞ」
池本に言われ、全員が砂浜に移動した。
「あっちのあの堤防から、こっちのあの堤防までで大体2km有るさ~、軽~く5往復やっておいてね」
『!?』
「本当に軽くだな?10往復だろ?」
「純也~、初日は軽くさ~」
「軽過ぎだろ?」
「……みんな、暗い顔してるさ~?」
「軽過ぎて、気合い入んねぇんじゃねぇの?」
「いや、池本さん……逆逆!」
「この地面で10km……」
「伊礼会長、もう少し考えるさ~!」
「少し冗談きついよね」
「??……冗談は言ってないさ~、早く走るといいさ~!」
『!?』
「「クレイジー……」」
「よし行くぞ、ビリは飯抜き!」
『!?』
「スタートだ!」
池本の言葉で、全員がスタートした。
砂浜というのは、踏ん張りが普通の地面よりも遥かに効かない。力を入れれば、それだけ砂に足が埋まる。普通の道を走るより、2倍は疲れるし、負担も掛かる。合宿初日から、相当きつい練習となった。
この走り込みだが、トップは喜多である。流石は元世界チャンピオンであり、今も練習を続けているだけの事は有る。
「チッ、喜多が最初かよ……」
「はぁ、はぁ、不満ですか?」
「大いに不満だ!」
池本は納得していない様である。
喜多に続いたのは、アメリカの2人と将士である。将士は日頃からしっかりと走り込みをしており、ここでも成果が見えている。
走り込みの後は、伊礼ジムに移動してジムワークとなった。
ジムワークは、いつもの練習と差程変わりはない。ロープをやってシャドーをやり、サンドバッグを打ってミットを打つ。それだけの事なのだが、周りにライバルと成り得るボクサー達が居る為、誰もがいつも以上に集中していた。ここだけ見ても、この合宿は成功である。
練習が終わると、宿舎に戻る。
「おう、ビリだったお前!」
「金城です」
「そう、金城!飯抜きな!」
「え?本気だったさ~?」
「おう、俺の言葉に嘘は無~い!……な、尚武?」
「しょうかないさ~、純也は言い出したら聞かないさ~……後で、カップラーメンでも上げるからね」
「尚武~……意味ねぇだろ?」
「食べる事も仕事さ~!」
結局、金城はカップラーメンが夕食となった。
洗濯物は各自で行い、それぞれが部屋に戻る。将士は喜多と同室であり、とりあえずお茶を飲んでいた。
「将士、ロード行くぞ」
「喜多さんも行くんですか?」
「おう、しっかりやらねぇとな」
「久しぶりですね~……是非是非行きましょう!」
将士と喜多はロードワークに出た。そんな2人を見た他の合宿生、慌てる様にそれぞれがロードワークに出て行った。
「喜多君を参加させて良かったさ~!」
「そうだな……手塚じゃうるせぇしな~……」
「確かに賑やかだね~、その点、喜多君は喋るより行動だからね。助かるさ~!」
「俺達は、甘い顔をしない様にだな」
池本と尚武、改めて気持ちを引き締めていた。
合宿2日目。
朝のロードワークは砂浜を走る事である。初日は5往復だったが、2日目より10往復となっている。
「飯抜きは許してやる」
との事だが、その条件が倍の走り込みである。
ロードワークが終わると、すぐにジムワークに移る。肩で息をしながら、それぞれがそれでも必死に練習をしている。口数も減っており、いい傾向である。
昼を食べた後、束の間の休憩となる。それぞれが自分の部屋に戻り、ゆっくりと休んでいる。大体の者は眠りに着いているのだが、将士は喜多に色々とパンチの質問をしていた。
「あのな~……少し眠らせろよ……」
「いいじゃないですか~?」
割りと体力の有る将士である。
午後の練習もかなり厳しい。特にミット打ちは、池本が主体でミットを持つ。打つ方がミットに振り回される形になり、池本の怒号が響き渡る。
「よし、最後は喜多!」
「……やりますよ~……」
喜多も漏れなくミットを打つ。流石は喜多、乾いた炸裂音は他の者と違っている。今からでも現役に戻れそうである。
「よし、なかなかだな」
「ありがとうございます……ふぅ、やっと一息だな……」
「池本さん、もう一回僕をお願いします!」
「やるの?」
「はい!」
将士は池本に頼み、もう1度ミット打ちをやった。将士のパンチもなかなかであり、いい音を出している。
「よし、そこまでさ~。帰って休むさ~」
尚武の言葉で本日の練習は終わりとなった。それぞれが合宿所に戻って行く。
この日の夜も、誰もがロードワークに出て行った。刺激し合ってお互いを高める。狙い通りといった所だろうか。
暫くすると、不意に池本の部屋をノックする者が居た。
「誰だ?」
池本がドアを開けると、将士が立っていた。
「あの~、少しいいですか?」
「どうした?」
「いや~……色々と教えて欲しくて……」
「喜多が居るだろ?」
「……寝てます……」
「あいつ……しょうがない、入れ」
「ありがとうございます」
将士は池本に、コンビネーションやガードの仕方、その他のボクシングに関する質問を色々と聞いていた。
「……そろそろ寝ないか?」
「もう少し!」
「……体力有るな……」
珍しく、池本が参っていた。
熱くなって来ました!




