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変われる拳!  作者: 澤田慶次
59/109

残る者は強き男!

どんな試合になるのか!

リングに上がった将士、そのままリング中央に歩み寄り、相手と共にレフェリーから注意事項を受ける。本日の相手は中野(なかの)和友(かずとも)、3戦3勝のサウスポーである。

レフェリーからの説明が終わると、一旦各コーナーに別れた。

「将士、最初からガツンとだ!」

「気負うな、落ち着いてな!」

将士は頷く。

「……自分らしくね……2人は、指示を一本化するように!」

将士から笑顔が漏れた。手塚と喜多、罰の悪そうな顔をしている。

「カーン」

試合開始のゴングが鳴った。


1ラウンド…………

将士はガードを上げ、頭を振って前に出る。左ジャブを放ち、自分から攻撃を仕掛けていく。

対する中野だが、将士のアタックに怯む事はない。サウスポーに構え、将士のジャブをしっかりとガードしながら、将士から距離を置いていく。

試合開始早々、追い掛ける将士、距離を置く中野と構図がはっきりしている。4回戦の試合としては、なかなか珍しい物である。

ここで、中野のサウスポーが効いて来る。将士のパンチは確かに切れているのだが、距離感がいまいち合っていない。中野に対し、自分の位置が上手く掴めていない。この辺、サウスポーと対戦するオーソドックスのボクサーの最初の壁ではないだろうか。

現在では、サウスポーのボクサーも多くなって来た。それでも、オーソドックスと比べるとかなり少ない。その為、サウスポーのスパーリングパートナーを見付けるのは困難である。増して、対戦相手と似たボクサーとなると、日本では難しいのではないだろうか。アメリカやメキシコ等のボクシング大国となると、やっている人口が日本と全く違う。分母が違えば、自ずと人数も違って来る。この辺りも、難しい所である。

将士も確かにスパーリングでサウスポーを経験しているが、特徴等が違う為に苦労している。なかなかリズムに乗れない立ち上がりである。

1分半が過ぎる。構図は変わらず、追う将士と距離を置く中野である。ここで、中野の右ジャブを避けた将士が一気に懐に飛び込んだ。その踏み込みの速さは目を見張る物が有り、中野もこのスピードには対応出来なかった。

懐に飛び込んだ将士、間髪入れずに右ボディを放ち、続けて左ボディから左右フック右アッパーとパンチを重ねた。

中野は最初のボディの後はガードしていたのだが、左右フックで意識を上に向けられた為、将士の右アッパーには反応出来なかった。将士の右アッパーは中野の顎を直撃し、中野は大の字でキャンバスに倒れた。

「ストップ!」

レフェリーは割って入り、カウントを数える事なく試合を止めた。

1ラウンド1分57秒、将士のTKO勝利である。


勝ち名乗りを受けた将士、対戦相手と握手をし、相手セコンドに頭を下げてからリングを降りた。

控え室に戻った将士、シャワーを浴びてから廊下に出る。そこには篠原会長を始め、喜多と手塚も居る。

「まぁ、まあまあだな」

「甘さが露呈したな?」

「はい、まだまだ頑張ります!まだまだ、頑張り甲斐が有ります!」

「うんうん、勝って兜の緒を締めよだよね!……トレーナー2人は、今度やったら西田に名前変更だからね!」

「ちょ、ちょっと!」

「洒落にならないですよ?」

「洒落じゃないからね」

「ちょっと、ちょっとちょっと!」

「将士、変なギャグを入れるな!」

「深刻な問題なんだぞ!」

「……君達だけね」

反省点も確かに有るが、それでもいい試合である。将士の気持ちの変化も見て取れる。気合いの入った試合であった。


試合会場から出た将士、

「おい、ナイス勝利!」

「やったね、将士君!」

声を掛けて来たのは、哲男と隆明である。

「ありがとう」

「必ず、俺と戦うからな!」

「俺は階級違うけど、負けないからね!」

「……褒め過ぎ」

「そんな事ねぇぞ、いいKOだった!」

「うん、こっちも気合い入るよ!」

「いや……甲斐さんなら、左足を引いてカウンターだよ……最初のボディで僕はKOさ……喜多さんや佐伯さんなら、潜り込めてないだろうしね」

「あの人達と比べるのは、まだまだ先なんじゃねぇの?」

「先?そんな悠長な事は言えないよ!……一緒に居るだけで、自分の未熟さを痛感するんだから……隆明君なら、分かるでしょ?徳井さんも居るしね?」

「……確かに悠長な事は言えないよね……現役退いても、スパーじゃやられっぱなしだしさ……」

「詰まる所、俺達はまだまだ未熟って事だな?」

「その通り!だから、満足なんてまだまだ先だよ!」

「そうだね!まだまだこれからだ!」

「おう、突っ走った先で、必ず勝負だ将士!」

「勿論、その時は僕が勝つからね!」

「俺も、階級違っても負けないからね!」

3人は、お互いの右拳を軽くぶつけた。改めての意思表示といった所だろうか。

この一連の出来事を見ていた者が居た。

「……熱くなって来ましたね?」

「そうですね……篠原さん、哲男が将士を倒しますよ」

「いやいや、中台君の成長を舐めちゃいけない。僕達が勝ちますからね」

「言いましたね?」

「出した言葉は、飲み込むつもりは無いですよ!」

篠原会長と川上ジムの石谷トレーナーである。1度は同じジムに身を置き、共にトレーナーとしてボクサー達を育てた2人。将士と哲男をそれぞれで育てる事で、どうやらトレーナー心に火が付いた様である。お互いが笑顔で、固い握手をした。

もう1人、この試合を見ていた者が居た。

「中台将士……やっぱり、思った通り強かった……必ず、俺の前に引っ張り出してやる……」

将士と会ってからボクシングを始めた昇龍である。昇龍は1人、闘志に火を付けて燃えていた。

楽しみになって来ました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] なかなかライバルたちの多い世代ですね! これは将士も火が付きますね。
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