出会った男!
将士はまだまだこれから!
将士の生活だが、2週間もすると慣れて来た様だ。朝のロードワークから始まり、バイトをしてジムワーク。このルーティンを将士も当たり前の様にこなしている。改めて、将士はボクサーとして生活し始めている。
そんな中、将士は買い物をしていた。本日は日曜日、ジムは休みである。食料を買い込み、一旦合宿所に戻った将士。その後で東京見物に出掛けた。
本日の将士、東京タワー見物から始まり、スカイツリー等の東京ならではの建造物を見て回る。途中で遅めの昼食を取り、本日の将士はゆったりである。
暫く歩いて疲れた将士、自動販売機でジュースを買って近くの公園で休もうとした。公園に移動しようとした矢先、目の前で1人の男が数人に絡まれた。
「兄ちゃん、ぶつかって挨拶無しか?」
「慰謝料を払って貰わねぇとな?」
「路地裏、行こうか?」
その男は肩を掴まれ、男達に囲まれて路地裏に連れて行かれる。将士は大変と思い、急いで路地裏に向かった。
路地裏に着いてびっくりである。既に数人が倒れており、残りの1人は胸倉を掴まれて顔を近付けられている。
「これじゃ足りないか?」
「い、いや、充分です……」
「俺は足りないんだがな?」
「あ、う……す、すいません、俺達が悪かったです」
「謝るくらいなら、絡むんじゃねぇ!」
次の瞬間、胸倉を掴んでいた男の右拳が相手の腹にめり込んでいた。
「ぐはぁ……おう……」
打たれた方は、そのまま地べたに崩れ落ちる。
「足りねぇんだよ!」
その男は更に追い打ちを掛けようとするが、
「ダメだよ、それ以上はやり過ぎだよ!」
将士はその男に抱き付き、その男を止めた。
「何すんだ、離せ!」
「これ以上やったら死んじゃうって!」
「構わねぇだろ?」
「ダメだよ!……早く逃げて!」
将士の言葉に、倒れていた男達はよろよろと立ち上がり逃げて行った。
「待て、この野郎!」
「だから、ダメだって!」
「離せ、この野郎!」
「離さないよ、今はね!」
男は激しく動き、将士から離れ様とするのだが、将士は手を離す事がなかった。
男達の姿が見えなくなるのを確認し、将士は手を離す。
「ふぅ……じゃあ、僕はこれで……」
「待てよ!どうしてくれんだよ?」
「どうする?何を?」
「俺の楽しみだよ!」
「……つまんないんじゃないの?」
「つまらなくねぇ!責任取れ!」
「……僕は犯罪を未然に防いだだけだよ~?」
「気に入らねぇな……お前、俺の相手になれよ!」
「……遠慮しとく……僕はやる事が有るからね」
「うるせぇ、喰らえ!」
男は将士に殴り掛かるが、将士は軽くかわした。
「危ないな~、暴力反対だよ!」
「やるな~、燃えて来たぜ!」
男は構える。
「……そこに公園有るから、そこでいい?」
「やっとやる気になったか?構わねぇぜ!」
2人は近くの公園に移動した。
公園に着くと、男はすぐに構える。
「よし、行くぜ」
「いいよ、僕に追い付けたらね!」
いきなり将士は、後ろを向いて走り出した。
「こ、この野郎、ふざけてるのか?」
「追い付かないと、勝負にならないよ~!」
「野郎~……」
男は将士を追い掛ける。将士は時々後ろを見ながら、公園の中を逃げ回っている。暫く追い掛けっこは続いた。
「はぁ、はぁ、はぁ……この野郎……」
男が疲れて来ると、将士は男の前まで一気に詰め寄って右拳を男の顔の前に出した。
「僕の勝ちかな?」
「こ、この野郎……はぁ、はぁ、ふざけるなよ!」
男は将士の右拳を振り払うが、将士はすぐに男から離れた。
「まだまだ元気だね?もう少し追い掛けっこやる?」
「……もういい……」
「何だって?」
「もういいよ!」
「負けを認める?」
「認めるよ!」
この勝負、将士の勝利である。
その場に座る男に、将士は自分で飲もうとしていたジュースを渡し将士はその男の横に座った。
「……お前、まともにやっても、結構強いんじゃねぇの?」
「どうかな~……僕は喧嘩はしないって約束したし、そもそもいじめられっこだったしね」
「……何で笑顔なんだよ?」
「いや、変わろうと思えば、人は変われると思ってさ……それより、喧嘩が本当に楽しいの?」
「……分かんねぇ……やる事ねぇし、苛つく奴等ばっかりだし……」
「そう……勿体無いよね、それだけ力が有るのにさ~……」
「お前に負けたけどな……」
「僕は……君より戦い方を知っていて、体力が君よりも有っただけだよ」
「……慰めになってねぇよ」
「さてと」
将士は立ち上がった。
「喧嘩は程々にね」
2·3歩進み、将士は振り返る。
「もしもやる事無いなら、格闘技でもやってみれば?特に、ボクシングなんてぴったりだと思うよ」
「……ボクシングやったら、強い奴に会えるのか?」
「真面目にやって、プロで結果を出せば必ず会えるよ」
「お前とも戦えるのか?」
「それは……僕達次第じゃないかな?」
「いつか、お前にこの借りを返すからな!」
「うん、僕はその約束を覚えておくよ」
「俺、風間昇龍ってんだ!」
「中台将士、よろしくね」
「将士、絶対借りを返すからな!」
「いつか、リングの上でね!」
将士は軽く右手を上げ、公園から出て行った。
この後、昇龍は将士とは違う所のボクシングジムに入門した。本気でプロを目指し、本気で将士に借りを返すつもりらしい。また新たに、熱いボクサーが生まれた様である。
もしも将士と昇龍が試合をする時が来たら、もしかしたら、かなりのビッグマッチになるのかもしれない。
この出会い、どうなる?




