将士、ボクシングに集中!
将士はボクサーを目指してます。
天川ジムでの初日を終えた翌日、朝5時過ぎには将士はお店の前に居た。すぐに隣のホテルから喜多が出て来る。
「お?今日は早ぇな?」
「おはようございます!走る準備は出来てます!」
「おう、結構結構……少し待ってろ、あの馬鹿も来るらしいからな……もう少し身体を動かしとくか?」
「はい!」
将士と喜多が準備運動をしていると、
「お待たせしました!」
「あれ?菅原君?」
「遅ぇぞ!準備運動を済ませろ!」
「はい!」
「喜多さん?」
「一緒に走りたいんだってさ」
本日より、朝のロードワークは哲男も参加となった。
5時半にはスタートした3人、本日も学校法人有田までの往復がノルマとなっている。この日も予想通り、喜多の激の元に将士と哲男が必死に走っている形となる。
このロードワークだが、喜多は常に前を走っていた。2人が必死に頑張れば追い付く様なスピードで、いつも後ろを気にしながら喜多は走っていた。その昔、喜多がボクシングを始めた頃にいつも先頭を引っ張って貰った経験が有り、喜多はその時の事を将士と哲男にやっている訳である。歴史は繰り返される物である。
喜多の後を必死に着いて来た2人、何とか走り切った。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「はぁ、はぁ、菅原君……はぁ、はぁ、大丈夫?」
「だ、大丈夫…はぁ、はぁ、喜多さん、はぁ、はぁ、朝からきついっすよ…はぁ、はぁ……」
「……これくらい当たり前だ!2人はしっかりと鍛える様に!」
「「が、頑張ります…はぁ、はぁ……」」
「お帰りなさい!あら、今日は1人増えてるわね?」
「おはようございます、はぁ、はぁ……菅原哲男といいます…はぁ、はぁ……」
「あなたが菅原君ね!みんなでご飯をどうぞ!」
「マジですか?…はぁ、はぁ…やったぜ!」
「すいません、ご馳走様です」
「早く食べて、学校の用意しないと」
3人は朝ご飯を一緒に食べた。
「中台、明日からは荷物も持って来るな」
「それがいいね、シャワー浴びて学校行こう!」
「学校行ける元気が有る……もう少し厳しく行くか……」
「いや、喜多さん!これ以上だと学校行けなくなっちゃいますよ?」
「徐々にもっと出来る様になりますから!」
「……期待してるな」
「「はい!」」
朝食が終わると、喜多と哲男は将士の母親に頭を下げ、哲男は将士と学校に向かい、喜多はホテルに戻って行った。
学校に着いた将士と哲男、そのまま自分の教室に入って行った。
「よう、将士!」
「菅原と仲良くして、いい気になってんなよな!」
朝から将士に、いつもの5人が絡んで来た。
「あのさ、そんな事して楽しいの?」
「何だよ、俺達に口答えか?」
「調子に乗ってんな?」
「……楽しい筈はないよね……可哀想に、こんな風にしか出来ないなんて……」
『何だと?』
5人が将士を囲んだ時、担任の先生が教室に入って来た。5人は渋々自分の席に座り、みんなが将士の方を睨んでいた。
このまま今日1日が終われば、特に問題が無かったのだが、事は起きる物である。
昼休み、将士は屋上に行った。いつもなら哲男はすでに来ているのだが、哲男は担任の先生に掴まっており来ていない。将士はいつもの場所に座ると、ポケットから喜多に渡されたバンデージを取り出した。
(多分だけど……これ、喜多さんのバンデージだよね……T·Kって書いて有るし……僕も強くならないとな~……)
「よう、将士!」
「何か用事?」
「特に何にも無いんだけどよ……」
「どうも気に入らねぇ……」
「お前、調子乗ってるよな?」
「調子に?……いつもと変わらないけど……」
将士に声を掛けて来たのは、将士をいじめている5人である。朝の将士の態度がどうにも気に食わなく、哲男も居ない今の時間に絡んで来たという訳である。
「菅原は居ない……残念だな?」
「菅原君?……どうして?」
「誰も助けてくれねぇだろ?」
「可哀想に……」
「まぁ、お前なんて誰も助けねぇけどな!」
「菅原が変わってるのさ!あいつ、馬鹿だからな!」
「……今の言葉、取り消してくれる?」
「はぁ?取り消せだ?……何を取り消すんだよ?」
「菅原君は、馬鹿じゃないよ」
「はっはっは、あいつ、テストでいつもビリだせ!」
「馬鹿なんだよ!」
「事実は取り消せねぇな!」
「おい、聞いてんのか?」
1人が座っている将士の手を蹴っ飛ばした。将士の手には喜多から貰ったバンデージが有り、蹴飛ばされた事でバンデージが吹っ飛んで行った。
「何持ってたか知らねぇけど……」
蹴飛ばした男の話が終わらないうちに、将士はその男に突っ掛かって行った。そのまま馬乗りの様な形になると、将士は躊躇なく顔面を殴り出した。
「ば、お、お前…何、がっ、ばっ、おい……」
下になった男は何かを言おうとしているが、将士は何も言わずに殴っている手を止めない。
「おい、辞めろよ!」
「離れろよ!」
「おい、将士!」
「退けっての!」
他の者達は将士を止めようとしている。時に蹴ったりしているのだが、将士は一向に辞める気配がない。
「よっと、到着~!…おい、何やってんだよ!」
哲男は屋上に姿を表すと、揉めてる方に走り出した。
「何やってんだよ!」
「菅原さん…将士を止めてよ」
「このままじゃヤバイって……」
「中台、辞めろ!」
哲男は抱き付く様にして、将士を無理矢理止めた。
「……菅原君……」
「中台、どうしたんだよ?」
「僕の大切な物を、こいつが蹴っ飛ばしたから……」
将士は立ち上がりながら、哲男に説明した。哲男は吹っ飛ばされたバンデージを拾って来る。
「……宝物はそれぞれで違う。将士の大切な物を足蹴にするな!」
将士に殴られていた男が立ち上がる。鼻血が出ており、口からも出血している。
「……たかだかバンデージで……」
「たかだかだと?」
「中台、落ち着けって……他人の宝物をたかだかとは聞き捨てならんな?」
「でもよ……」
「中台、こんな奴等相手にしねぇで、昼飯食おうぜ!」
「……そうだね」
将士と哲男は5人の近くから移動した。将士と哲男が移動するのを見た5人、屋上から去ろうとしたのだが、
「おい、将士に謝れよ!」
「うっ……悪かったよ……」
殴られていた男は呟くと、すぐに走り出した。残りの4人は後を着いて行く様に、一斉に走り出した。
「将士、やるな!」
「……暴力は、余り気持ちのいい物じゃないね……」
「そうだな……ボクシングとは似ても似付かねぇ……お互いに、気を付け様や!」
「うん……それより、菅原君は勉強出来ないの?」
「唐突だな?…勉強は……合わないんだよな~……」
「合わないんじゃなくて、合わせるんだよ!」
「いや、無理に合わせなくても……」
「絶対ダメ!そろそろ中間テストでしょ?…僕と勉強するよ!」
「え~、勉強は嫌だよ!」
「だからダメだって!喜多さんに言っちゃうからね?」
「うぐっ……分かったよ……将士は怒らせたくないしな……」
どうやら、哲男は将士と勉強もする事になった様だ。将士と哲男、いいコンビである。1つ分かった事は、将士も怒る事は有り、怒らせたら意外に怖い事である。
将士にも、逆鱗は有ったらしい……