夏の終わり!
楽しい時間はあっという間!
インターハイも終わり、お盆を挟むと夏休みも終わりである。将士の高校最後の夏も、そろそろ終わりである。
「将士、ジムに行こうぜ」
「うん、今日も頑張ろう」
将士と哲男、本日も天川ジムにて練習である。
西高ボクシング部も練習である。誰もが来年を見据え、しっかりと練習している。
「暑苦しいな~、女子部作れよ!」
夏雄、どうやら余りにも男だらけの為、息苦しい様である。
夏雄の言葉を無視し、将士も哲男も一心不乱にサンドバッグを叩いている。
「中台君に菅原君、ちょっといいかな?橋本君も来て」
天川会長に呼ばれ、3人は会長室に入って行く。
「悪いんだけどさ~、お祭りの屋台をお願い出来ない?」
「「「屋台?」」」
「そう、町内会に頼まれちゃってさ~……中台君家はお弁当屋だし、菅原君も結構料理やるって聞いたよ。橋本君は……日頃の行いが悪いから」
「は?俺は徳を積んでますよ!」
「無い無い、橋本君は反面教師だよ」
「それは無いですよ~……な、中台に菅原?」
「ノーコメントで……」
「橋本さ~ん、将士が見捨ててますよ!」
「おふっ……人生を見つめ直さないと……」
橋本トレーナーは、ジムの端に行き落ち込んでしまった。
「橋本君は気にしないで、明日の夜、頼むよ」
「僕はいいですよ」
「本当に?」
「将士~、お前の料理じゃ……」
「だったら、哲男君も参加決定!」
「そう、よろしくね!」
「は?俺は何も……」
「いや~、助かる助かる」
「準備は?」
「大丈夫、明日行けば大体やってくれるってさ!焼きそばと綿飴担当だからね」
「はい!」
「勝手に話を……」
「では、練習に戻って」
「はい!」
「だから、俺は何も……」
「ほら、哲男君練習!」
「お、おい、将士~……」
将士に引っ張られて練習に戻る哲男、どうやら、屋台をやる事で決定の様である。
翌日、将士と哲男はいつも通り天川ジムに行く。
着替えて準備運動をしている2人、
「お願いしま~す!」
「あれ?隆明君」
「どうした?」
「今日はこっちで練習……色々有って……」
「ど~も~、お願いします」
「「徳井さん!」」
「やぁ、よろしく……こっちも……」
「よろしく~、将士!」
『うわ!アリサだ!』
「俺、菅原哲男って言います!」
「……この間まで、将士君だったじゃないですか?」
「私達の仲じゃな~い!」
「おい将士、アリサさんとどういう関係だ?」
「……どうも何も……最近なら、インターハイの時に会っただけだよ」
このタイミングで、ロードワークから夏雄が帰って来た。
「アリサさん!?……ようこそ、こんなむさ苦しい所へ!」
「むさ苦しくて、悪かったな!」
天川会長も出て来た。
「徳井君、指導をお願いね。アリサさんだったかな?こっちで見学しててね」
「はい、お願いします」
本日、将士は隆明と練習する事になった。思わぬ出来事である。
この日、将士と隆明はスパーリングをする。将士がインターハイに出なかった事で、2人は手合わせが出来ていない。天川会長は、2人にお互いの今の状況を確認させ、刺激を与えるつもりらしい。
将士と隆明のスパーリングだが、なかなか激しい物となった。お互いに自分の距離で戦おうと駆け引きをするのだが、なかなか思惑通りにいかないと分かると強引な行動を取る。その事がお互いにパンチを貰う事に繋がり、インターハイの決勝が霞んで見える。どちらに優勢という事もなく、3ラウンドのスパーリングは終了した。
「お互いにどう?」
「流石は将士君、俺はもっと精進しないと」
「僕は……隆明君には勝ててないかな~……僕もこれからですね」
「うんうん、今日より明日、強くなれる様にね」
「「はい!」」
将士と隆明、改めて気合いが入った様である。
練習が終わり、将士と哲男はお祭りの屋台をしに出掛ける。
「アリサさん、俺とどうですか?」
「……辞めとく……」
夏雄はしっかりと振られた様である。
将士と哲男が屋台の用意をしていると、
「将士君に哲男君!」
「隆明君!」
「どうした?」
「折角だからね」
「私も参加~!よろしくね!」
「姉さん、程々に……」
「何よ~、清隆はうるさいのよ~……ね、将士?」
「ノーコメント……」
「「中台~!」」
高田と片瀬が来た。その後ろには、雨谷も居る。
「屋台やってるの?」
「綿飴お願いね!」
「私は~……焼きそばがいいな~……」
「あら、将士のお友達?」
「「「あ、この間の!」」」
「中台とどういう関係?」
「変な事したら、許さないからね!」
「私は……気になってます」
「あら~、私達は~……そういう関係!」
「「「!?」」」
「……姉さん、中台君に迷惑掛けないの!……ごめんね、中台君」
「いや、大丈夫ですけど……徳井さんも大変ですね。会長は西田さんだし……」
「分かるかい?そりゃあ大変なんだよ~……会長があれで、姉がこれだろ!」
「清隆~、何か言った~?」
「な~んにも……ね、中台君?」
「……ノーコメントです……」
色々と賑やかである。
このお祭りだが、終始賑やかであった。思った以上に人が集まり、将士も哲男も屋台で忙しかった。焼きそばと綿飴はすぐに売り切れ、20時には将士も哲男も手伝い終了となっていた。
屋台が終わると、将士は誰にも見付からずにお祭りから少し離れた石段で休んでいた。
「中台君、疲れたのかい?」
「徳井さん……いや、高校最後のお祭りだな~って……」
「そうか……この夏が終われば、もっと熱い人生が待ってるさ」
「はい、楽しみにしてます……徳井さん、ボクシングやって、何か変わりましたか?」
「何かね~……変わった事も有れば、変わらない事も有る。ただ、やってなければ出来ない経験は出来たかな?」
「出来ない経験か~……僕は、どんな経験をするのかな~……」
「それは、自分次第じゃないのかな?……別に、誰かに頼まれてボクシングをしてる訳じゃないんだろ?だったら、自分の責任で自分の力で、その道を切り開くしかないのさ……最も、これも池本さんの受け売りだけどね」
「……池本さんて、凄いんですか?」
「凄いよ!たった1人で、俺達の目標になりながら、あの階級で戦って来たんだからな」
「徳井さん達が……」
「俺達は、池本さんが引退してから……ずっと池本さんを追い掛けてたんだ……今の中台君が、喜多を追い掛けてるみたいにね」
「……追い付けたんですか?」
「さぁて……それは、自分で確かめなよ」
徳井は将士の元を去って行った。
この日、将士は徳井から大切な何かを教わった様である。この日を境に、将士は練習の時の表情が引き締まっていた。将士と徳井、共有する何かが有ったのかもしれない。
「隆明~、将士は?」
「知らない」
「哲男君?」
「俺も知らねっす」
「清隆~!…あれ?居ない……も~、将士何処~!」
お祭りでは、アリサが癇癪を起こしていた。
どう進んで行くか、それが問題……