将士の武器!
将士、応援かに行っても練習!
インターハイ準決勝、この日も将士は手塚と見学である。手塚のお陰で、例の3人は近付かない。将士と手塚、割りと静かに試合観戦している。
登場は隆明からである。準決勝とあり、観客数も増えている。隆明はこの観客の中、緊張する事もなく1ラウンドRSCにて決勝進出を決めた。
続いて哲男である。哲男も固くなる事はなく、2ラウンドRSCにて決勝に駒を進めた。
本日、観客席には徳井が座っていた。甥である隆明の試合を見ていたのだが、ここに姉のアリサが登場した。会場は大騒ぎとなり、徳井はアリサに見付からない様に将士の所に避難した。
「……来るなって言ったのに……」
「隆明の試合なんだ、しょうがないんじゃないか?」
「……違う目的が有るらしい……よく分からんけど……」
「徳井さん、隆明君の決勝進出おめでとうございます!」
「ありがとう……中台君、呑気だね~……」
「僕は……デビュー戦も決まってないし……」
「そうだ徳井!倉本ジムに付き合えよ!」
「……どうして?」
「将士が倉本ジムで練習してんの!」
「マジで?」
「はい、哲男君達の応援の間だけですけど」
「そう……気付かれずに行こう。今なら大丈夫だ!」
「清隆?な~にが大丈夫なの?」
「うわっ、姉さん……」
「将士君、お久!」
「ど、どうも……」
「何々~、将士君は練習なの~?」
「はい、プロテストに受かりましたので」
「そう~……よし、私も見学!」
「……準決勝、もう終わりましたよ?」
「……中台君、もしかして分かってない?」
「何をですか?」
「……将士~、人生最大のチャンスだぞ?」
「???……倉本ジムに、世界チャンピオンでも来てるんですか?」
「スト~ップ!清隆、余計な事は言わない!……将士君、一緒に倉本ジムに行きましょう!」
「え?何で?」
「いいからいいから!」
アリサ、将士に会いに来た様である。どうも、この間の1件から将士がお気に入りの様である。
「ちょっと~、何よあの女~……」
「中台、迷惑な顔してたよね~……」
「他人の迷惑が分からないんですかね?」
高田·片瀬·雨谷の3人、ここでまさかの意気投合の様である。
「……目立ってるな~アリサ姉さん……困った人だよ……」
「隆明、お前も大変だな」
「哲男君……ありがとう、確かに大変だよ……」
「まぁ、それよりだな……これに、アリサさんのサインをお願いな!」
「……君も面倒な人だね……」
隆明は隆明で大変である。
倉本ジムに移動した4人、移動手段は手塚の車である。
「お願いします!」
「「ど~も~、よろしくお願いしま~す」」
「私は見学!」
アリサが来た事で、倉本ジムもざわついていた。
だからといって、将士の練習は変わらない。アリサの事を知らなかったという事も有るのだが、将士は今、目の前の事に目一杯である。この集中力こそ、将士の強さかもしれない。
将士がしっかりと汗を流していると、
「よし将士、スパーリングな!」
「俺も参加ね!よろしく中台君」
「はい、お願いします!」
将士は手塚·徳井と2ラウンドずつのスパーリングをする事となった。このスパーリングだが、手塚も徳井も気楽には相手をしてくれなかった。
手塚は、プロテストに受かった事で将士の気が抜けない様に、昨日よりも厳しい攻めを見せていた。
徳井は隆明が将士をライバルと感じている事と、将士ならもっと強くなると確信していた。その為、ヒットマンスタイルからフリッカーとチョッピングライトを使い、一方的に殴り付けた。
これに対する将士だが、黙っている程お人好しではない。
手塚には、相打ちで何発もパンチを打ち込んでおり、徳井に対してはフリッカーを引くタイミングで懐に飛び込む等、なかなか頭を使っている。その上で、パンチを喰らっても決して引かない。対峙している手塚と徳井、相当のプレッシャーだっただろう。
スパーリングが終わり、将士はすぐに次の練習に移る。この辺も、将士の急成長に繋がっているのだろう。
「手塚、中台君はいつからあんなに頑固な戦い方に……」
「……知らねぇ……後退のネジが外れてんじゃねぇの?」
「……嫌だよな~……打たれる度に元気に打ち返して来る……疑心暗鬼になるよ……」
「それより、作戦が怖い……被弾する事を前提に自分のパンチを打ち込む。しかも、この上ないタイミングで……あしらう為には、こっちも手傷を負う……厄介な事だ……」
手塚と徳井、どうやら将士への評価は上々の様である。
「清隆に手塚~!」
「うわっ、何だよ姉さん?」
「怖いっすよ?」
「わ·た·し·の将士に何してんだよ~!」
「「はぁ?」」
「この馬鹿共、そこに座れ!」
「え?」
「どうして?」
「いいから座る!」
「「はい……」」
「正座!」
「「うっ……はい……」」
ここから約1時間、アリサは手塚と徳井への説教タイムとなった。かなりの形相でアリサは2人を怒っている。
「……とばっちりだよな?」
「ああ、酷い話だ……」
「2人共!聞いてるの?」
「「……さ~せん……」」
この状況でも、将士はしっかりと練習している。確かにこの集中力、凄い事である。
「この中で集中か……あれが中台君の武器だな」
「確かに凄いが……あいつのせいで怒られてんだぞ?」
「だ·か·ら、話を聞けっての!」
「「さ~せん……」」
確かに手塚と徳井、理不尽である。
この後、アリサは仕事の為に東京に戻った。将士は徳井·手塚と夕飯を食べる事となったのだが、
「将士、ライスだけな!」
「え?何で?」
「何でもだよ!」
「徳井さん、手塚理不尽大王が……」
「いや、俺も手塚と同意見!」
「どうして?」
将士、思わぬ所で仕返しを受けた。ラーメン屋で、将士の前にはライスだけである。徳井と手塚、将士に見せ付ける様にチャーシュー麺を食べている。
「旨い!チャーシュー麺最高!」
「うん、確かに旨いね!」
「……ライスは分かりません……」
「「お前は反省!」」
「……どうして?」
かなり根に持っている徳井と手塚である。
……手塚と徳井、ご愁傷様……