インターハイと将士!
将士はインターハイには出ないのですが……
高校も夏休みとなり、将士も哲男もボクシングに集中である。特に哲男は、高校最後のインターハイである。去年のリベンジ、きっとそんな事を考えているだろう。
夏休みに入り少し経つと、インターハイの為に開催場所へ移動となる。今年は岩手県であり、それ程遠くない。
「将士、見に来いよな!」
「うん、必ず行くよ」
「俺も行くからな!」
「加藤さんはいいや!」
「おい!」
将士、一応副キャプテンである為に、インターハイには見学には行くつもりの様である。
哲男と部員はインターハイの開催地へ向かった。全体の開会式が翌日に有り、種目別の開会式がその翌日に有る。試合は種目別開会式の翌日より開始される。
「中台君、落ち着かないんじゃないの?」
「別には……哲男君、ウェート意外は問題無いだろうし……」
「まぁ、試合に間に合えば大丈夫だろうね」
「天川会長は、試合に行かないんですか?」
「菅原君なら、橋本君が居れば大丈夫だしね……今は、練習生を見る事も大切だしね」
「……インターハイの応援に行ってる間、練習はどうしたらいいですかね?」
「練習か~……よし、知り合いのジムに話を通しておくよ」
「本当ですか?ありがとうございます!」
将士、応援に行っても練習はするつもりらしい。
ボクシングが始まる日、将士はインターハイ会場に居た。既に計量は終わっており、出場選手はそれぞれにアップをしている。
「将士君!」
「ああ、隆明君!」
「プロテスト、合格おめでとう!」
「ありがとう!……何で知ってるの?」
「叔父さんが喜多さんから聞いたってさ」
「頑張ってね!」
「うん、絶対に優勝するよ!」
隆明は軽く右手を上げ、将士の元から去って行った。
将士はそのまま哲男達に合流したのだが、高田と片瀬も一緒に居た。
「「中台~!」」
「……どうして……」
「中台く~ん!」
将士の後ろから声がする。振り向くと雨谷が居た。
「あんた、どうして来てるの?」
「別に~、菅原君は同じクラスだし~!」
「そう、なら中台は私達とね!」
「あら、中台君は迷惑だって!」
将士の近くで、インターハイの前哨戦が始まった。誰も引かない様であり、暫く続くかと思われたのだが、
「おう、将士~!」
声を掛けて来たのは手塚である。しかも、本日の手塚の格好はアロハシャツにハーフパンツであり、金のネックレスとサングラスを額に上げている。
『!?』
「手塚さん、どうしたんですか?」
「おう、篠原会長がさ~……まぁ、会長命令さ」
「成る程、今日は泊まりですか?」
「そうだな。そういえば、天川会長から倉本ジムに付き合って欲しいって言われたけど?」
「こっちに居る間の僕の練習場所です」
「そうか!なら、暫くは一緒だな」
「はい、よろしくお願いします!」
将士は手塚と行動を一緒にする事になった。
ここで将士が気付く。さっきまであんなにうるさかったのに、今は静かである。
「……会長だって……」
「……本物だよね……」
「中台君、大丈夫かな~……」
「おい、俺はな!」
『きゃ~、助けて~!』
高田·片瀬·雨谷は悲鳴を上げて逃げて行った。
「あっはっはっはっは!」
「おい哲男、何笑ってんだよ!」
「あいつ等、手塚さんをヤクザだと思ってますよ!」
「はぁ?何で?」
「だって~、その出で立ちで[会長]だもんな~!」
「あ~、確かに!」
「だろ?将士!」
「……随分だな、お前等……後で、覚えとけよ~……」
試合前に、手塚と因縁が出来てしまった将士と哲男である。
インターハイ1回戦だが、哲男も隆明も問題無く勝ち上がった。次は準決勝である。どちらも1ラウンドRSC勝利となり、順調な滑り出しである。
「将士、飯食おうぜ!」
「哲男君、ウェート考えてよね」
「偉いぞ、中台!菅原、本当にお前は!」
「あ~あ~、橋本さんはうるせぇな~……」
「うるさいとは何だ!」
「橋本ちゃん、確かにうるせぇよ!」
「手塚!余計な事を本当に……」
「哲男、明日も有るんだ、今日は大人しくな」
「……分かりましたよ……」
将士は手塚と手塚達から離れた。
「将士君!」
「隆明君、1回戦突破おめでとう」
「ありがとう。まぁ、残りもしっかり勝つけどね!」
「なかなかの試合だったぞ!」
「ありがとうございます、手塚さん!……何処の組に入ったんですか?」
「あのな~……みんなで俺を何だと思ってんだ?」
「柄の悪いトレーナー」
「清隆叔父さんに迷惑掛ける人」
「……お·ま·え·ら~……とりあえず、隆明は絶対優勝しろよ!」
「はい!勿論やります!」
「将士、練習行くぞ!」
「はい、お願いします!」
将士は手塚と倉本ジムに向かった。
本日の哲男と隆明の試合だが、確かにいい試合をした。打たせずに打つを体現出来ていた様に思える。将士がプロテストに合格した事で、この2人にも気合いが入っている様である。
倉本ジムに着いた将士、挨拶をして練習をしていた。ここに、着替えた手塚も合流した。
「将士、スパーリングやるぞ」
「え?誰とですか?」
「俺だよ、俺!」
場所を岩手県に移したにも関わらず、将士は手塚とスパーリングを行った。手塚、現役を退いたとはいえ、練習は確かに続けている。このスパーリング、将士が太刀打ち出来る筈はなかった。元世界チャンピオンの手塚、将士に厳しい攻めを見せている。何とか抵抗している将士を褒めたい所である。
2ラウンド続いたこのスパーリング、2ラウンド終了間際に将士がコーナーを背負った。手塚はここでも厳しい攻めを見せたのだが、将士は手塚の右フックに自分の右フックを被せた。相討ちになったが態勢を早く立て直したのは将士。将士はすぐに手塚と体を入れ替え、右のショートストレートをガードの上に叩き付けた。
手塚が将士のストレートをガッチリとガードすると、将士はすぐに左ブローを放つ。手塚は両腕を顔の前で固め、将士のパンチに備えたのだが、将士の左手はスリークォーターから放たれた。スマッシュである。これが見事に手塚に決まる。ここで、ラウンド終了のゴングが鳴った。
この後、将士は練習に戻り、いつも通りのメニューをこなした。
練習が終了すると、手塚は将士をホテルまで送って行った。将士はホテルに着くと、手塚に頭を下げて入って行った。
「参ったな~……徹底的に厳しさを教えるつもりだったけど……俺が厳しさを教えられたよ……」
手塚は頭を掻きながら、ボソッと呟いて宿泊予定のホテルに向かった。暫く車を運転していた手塚、
「あれ?将士と同じホテルじゃん……」
慌てて戻って行った。手塚、西田会長といい勝負かもしれない。
色々と起こりそうな予感……