表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変われる拳!  作者: 澤田慶次
44/109

プロへの一歩!

遂にプロテスト当日!

プロテスト当日、将士は夏雄と一緒に朝のロードワークに出掛け、軽く朝食を食べてから会場に向かった。

「将士、後で行くからな」

「はい、待ってます!」

「夏雄、筆記テストで落ちるなよ!」

「落ちねぇよ!馬鹿にするな!」

本日、プロテストに来てくれるのは喜多の様である。

会場は後楽園ホール、試合の前にプロテストが組まれている。将士と夏雄は体重計に乗った後、最初に筆記テストを受けた。全てはここからである。

テストはすぐに返される。

「80点未満の者は研修。大丈夫だった者、スパーリングの準備」

将士は夏雄の所に行く。

「ウォーミングアップやりましょう」

「……………………」

「どうしました?」

「……研修受ける……」

「はぁ?」

「80点取れなかったの!」

「……アマチュアでやってたんですよね?」

「悪いかよ!別に、研修すれば問題ねぇだろ!」

「……脳筋(のうきん)馬鹿……」

「あぁ?何だって?」

「頭、少しは使って下さいね。哲男君の方が、頭いいんじゃないですか?」

「それは酷いだろ?」

「……事実ではないでしょうか……喜多さんに報告だな」

「待て待て、それは黙っておこう。な、頼むよ!」

「……分かりました、言いません」

「本当か?ありがとうな!」

将士は1階の試合会場にて着替え、軽くエネルギー補給をしてからゆっくりと身体を動かし始めた。夏雄は、数人と一緒に研修を受けている。


夏雄も将士と一緒にアップを始めて30分程、喜多が会場に到着した。

「おう、どうだ?」

「まあまあです」

「俺は問題無し!」

「……筆記テスト……」

「黙ってろよ!」

「何だ?どうした?」

「何でも無いですよ!な、将士?」

「……今はね……」

「???」

喜多は少し不思議そうな顔をしたが、将士と夏雄はアップを再開させた。残るは2ラウンドのスパーリングだけである。

一応の説明だが、筆記テストは落ちても研修を受ければ問題無い。あくまで、合否は実践で決まる。これが本当のテストと言っても過言ではない。スパーリングは、軽い階級から行う。将士はバンダム級、夏雄はフェザー級である。

スパーリングが始まる。将士は3番目、夏雄は6番目のスパーリングである。将士も夏雄も、しっかりとアップをしながら準備を待つ。

将士にグローブが渡され、喜多はそれを将士に装着させる。前のスパーリングが終わり、将士はマウスピースを口に入れてリングに上がった。


将士の実技テスト…………

2ラウンドのスパーリングの1ラウンド目が始まる。

将士は左ジャブを放ち、いつもと変わらず前に出て行く。特に緊張は見られなく、ジャブにも切れが有る。

相手は距離を取りたい様ではあるが、将士のジャブの切れと踏み込みの速さに面食らっている。何とか手を出しているのだが、将士を捉える事は出来ない。

将士は前に詰めながら、相手が右ストレートを放つタイミングで懐に入った。絶妙なタイミングであり、踏み込んだ位置も文句無い。そのまま将士は、左右のパンチを相手のボディに集める。嫌がった相手は、将士を振り払おうと左フックを放つ。これを将士は、頭を下げて左フックで迎え打つ。カウンターの成立である。

相手はダウンをしたのだが、何とか立ち上がろとする。

「ストップ!終了!」

レフェリーはスパーリングを止めた。相手は向こうのトレーナーの肩を借り、何とかリングを降りて通路にしゃがみ込む様にして座った。

将士はレフェリーよりリングを降りる様に促され、複雑な表情で喜多の方に行った。

「やったな、将士!」

喜多は将士のグローブを外しながら声を掛けた。

「……手応えが……」

将士は喜多に答えながら電光掲示板を見た。残り時間は2分32秒となっていた。

「まぁ、あっという間だったからな。しかし、しっかりと動けてたぞ」

「ありがとうございます」

「後は休んでな。夏雄のテストが終わったら、ジムに戻ろう」

「はい」

将士はグローブが外れると、マウスピースを外しながら観客席に座った。

この後、夏雄もスパーリングを行う。夏雄はアマチュアの経験も有り、相手を寄せ付けないスパーリングを見せた。相手が少し、不憫に見えた。夏雄はしっかりと2ラウンド行い、終始自分のペースでテストを終える事となる。

「……ダウン、取れませんでしたな?」

「……必要有んの?」

「別に必要無いですが~……経験が少ない将士の方が、インパクト絶大ですな?」

「……そのムカつく言い方、何とかなんねぇの?」

「ムカつく~?大したスパーリングが出来なかった癖に~?」

「グヌッ…………おい将士!この馬鹿はいつもこうなのか?」

「喜多さんは、スイッチが入ると……」

「将士~、ダメダメ夏雄を馬鹿にしようぜ~!」

「この野郎……」

「喜多さん、辞めましょうよ!加藤さん、筆記試験落ちたんですから~……」

「ば、おま、将士!」

「はい?筆記試験に落ちた~?……よし、お前ボクサー引退な!」

「何言ってんだよ?」

「だってさ、ボクサーみんなが馬鹿に見られたら、たまらないだろ?」

「あ~、確かに!」

「将士、悪乗りするな!」

将士も夏雄も、スパーリングは問題無い様である。

このまま、将士と夏雄は喜多と拳王ジムに戻った。夏雄は荷物をまとめ、そのまま福島県に帰った。

「将士、結果見てから帰れよ」

「え~……でも、学校有るし……」

「どうせ、勉強してても手に付かねぇよ……電話しとくからさ」

「……それじゃあ」

将士は喜多と話、もう1日泊まる事にした。本日も、拳王ジムで練習である。


翌日、将士は後楽園ホールに向かった。プロテストの結果が張り出されている。将士の番号はしっかりと有り、晴れてプロテスト合格となる。将士は最初の目標を見事に達成した。

拳王ジムに戻った将士、

「やりました!合格です!」

「やったな、将士!」

「よくやった!」

「うんうん、頑張ったね」

将士の合格を喜多·手塚·篠原会長は喜んでくれた。

「よし、合格祝いにスパーリングだ!」

手塚の提案で、将士は本日スパーリングとなる。相手は喜多と手塚である。このスパーリングだが、物凄い事になっていた。

喜多も手塚も、将士を徹底的に打ちのめしている。喜多は距離を取り、将士を近付けさせずにパンチを浴びせる。

手塚はインファイトをし、将士よりも速い回転で将士を一気にまくし立てる。どっちも、かなり厳しい攻撃を将士に放った。

それでも、将士はダウンをせずに時折相打ちではあるが、パンチを当てていた。将士も確かに強くなっている。

スパーリングが終わる。

「どうだ?まだまだだな?」

「弱いな!どうしたへなちょこ君?」

「はぁ、はぁ、はぁ……厳し過ぎませんか~?」

「アリサさんに優しくされやがって!」

「やっとスッキリだ!」

「……私情は挟まないで下さいよ~……」

プロテストに受かった将士、何故かボコボコである。将士はこの後、シャワーを浴びて着替えてから挨拶して帰って行った。何処かスッキリした表情の将士である。

「喜多君に手塚君、厳し過ぎたんじゃないの?」

「いや、あれでダウンも無いんですよ?」

「足りなかったんじゃないっすかね~……納得されちゃ困るんですけどね~……」

「大丈夫じゃないかな?……天川会長が居るしね」

「頑張って貰わないと……俺達も楽しみだし……」

「そういえば、池本さんが天川会長を年寄りって言ったらしいですよ!」

「マジか!……あの人なら、確かに言いそうだ……」

「君達、そんな事で驚いちゃいけない……川上会長を会長って名前だと思ってたらしい……石谷さんは、ト·レーナーと紹介したんだそうだよ」

「「!?」」

「あの人、怖い物が有るのか?」

「あの人は怖いけどな……」

拳王ジムの面々も、将士の成長は楽しみの様である。

池本については、語る事は辞めておこう。

夏雄、少しは頭を使わないと……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 将士はなんとか最初の一歩を踏み出せましたね。 夏雄は拳人から更なるお灸をすえてもらうしかないですね(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ