将士とプロテスト!
将士は次のステップへ!
5月も変わりなく過ぎて行く。将士と哲男はボクシングに汗を流し、後輩達も将士と哲男を見習っている。
夏雄はというと、将士と哲男とスパーリングをしたり、ジムのプロボクサー達とスパーリングをしている。大分濃い練習を誰もがしている。そんな矢先、
「中台君に加藤君、7月19日にプロテストだからね」
天川会長より声を掛けられた。遂に、将士のプロテストの日が決まった。
「いよいよだな~……」
「将士、頑張ろうぜ!」
「将士は大丈夫だろうけど、加藤さんはな~……」
「何だよ哲男?」
「筆記試験で落ちんじゃねぇの?」
「馬鹿にするな!」
「いや、馬鹿じゃん」
「お前よりもマシだ!」
「俺のが頭いいですよ~!」
「足し算も危ねぇ癖に!」
「はん、微分積分やってますもんね~!」
「言葉だけしか知んねぇだろ?」
哲男と夏雄が言い争いを始める。隣で将士、大きな溜め息を吐いた。
「相変わらずだな~……橋本君と喜多君手塚君と変わらないじゃないか」
「天川会長、さらっと俺を馬鹿にしてませんか?」
「いや、がっつりと馬鹿にしたつもりだよ?」
「うぐっ……」
「中台君が呆れてるよ、そろそろ辞めなさい」
天川会長に言われ、哲男と夏雄は将士の方を見た後、お互いの顔を見てからその場を離れた。
本日の練習だが、プロテストが決まった事で将士はいつも以上に気合いが入っていた。本人にその自覚は無いのだが、目標がはっきりと見えてる事で、知らず知らずのうちに気合いが入った様である。
それは、スパーリングでも同じ事であった。将士は哲男とスパーリングをしていたのだが、将士のプレッシャーがいつも以上に凄い。勿論攻撃もいつも以上に厳しく、哲男は何度もコーナーに追い詰められる事となる。続く夏雄とのスパーリングだが、ここでも将士は熱い。自分から攻撃を仕掛け、夏雄を圧倒する場面も見受けられる。
「哲男君、物足りないから後2ラウンド!」
「……いや、今日は大丈夫」
「意味が分からないよ!さぁ、後2ラウンド!…哲男君がやらないなら……加藤さん?」
「俺は俺のペースでやるよ」
「じゃあ、やっぱり哲男君!」
「……やっぱりじゃないよ、やっぱりじゃ!」
「はっはっは、中台君気合い入ってるね~!でも、やり過ぎはダメだよ。いつものメニューに戻って」
「……はい……」
不満そうな将士だが、サンドバッグを叩き始める。
「天川会長、将士頑張ってますね?」
「そうだね……しかし、リングの上だと何が有るか……橋本君、しっかり練習を見て上げてね」
「はい、頑張ります」
プロテストに向けて、今の所は順調の様だ。
6月に入り、東北大会が終わってインターハイが視野に入って来る。石川西高校のボクシング部からは、哲男がライト級で出場となっていた。春夏連覇が掛かっている。
将士は特に変わりはない。プロテストに向け、毎日厳しい練習をしている。将士はバンダム級でプロテストを受ける。ウェートをある程度コントロールしながら、毎日の練習に励んでいる。
そんなある日、学校の新聞部がボクシング部の取材をする事となった。昼休み、将士と哲男を始めとするボクシング部は新聞部の部室に呼ばれた。
「あ、こっちにお願いします!」
「はいはい……将士、どうした?」
「……いや、大丈夫」
インタビューをする女子生徒と、その他に2人の部員が居る。そこでインタビューを受け、その事で校内の新聞を作るらしい。
「では、早速インタビューですが……菅原さんと中台さん、インターハイに向けて一言!」
「やっぱりね。僕は関係ないんじゃないの?」
『???』
「将士~、みんな知らないんだからしょうかないだろ?」
「……あの~……何を知らないんですか?」
「将士がインターハイに出ない事」
『はぁ?』
「ど、どうして?……怪我とか?」
「僕は元々、エントリーしてないからね」
「そう、将士はプロテスト受けんの!な?」
「哲男君、何で君が偉そうに答えるの?」
「キャプテンだからな!」
「……僕と2人しか居ないだけだろ?」
「それでも、将士よりは偉いだろ?」
「僕より偉くても、な~んにも羨ましくないけどね」
「流石は将士、返しも上手くなったな」
「……お取り込み中にすいません。中台さんは、プロになるんですか?」
「一応……受からなくちゃだけどね」
『凄い!』
「プロボクサー誕生の瞬間が見られる訳ですね!」
「受かればだけどね」
「じゃあ、早速インタビューを!」
「そうだね。じゃあ僕はこれで……キャプテン、後はよろしく」
『え?』
「おう、任せとけ」
「インターハイの抱負、しっかり答えてよ」
「はいはい、分かりましたよ」
将士は新聞部の部室を出て行った。この後、哲男はしっかりとインタビューに答えたのだが、終始新聞部の部員達の顔が不満そうであった。
この後も将士は特に変わらない。いつも通りに練習し、遂にプロテスト間近となった。
「将士、明日から東京に行きなさい」
「え?プロテストは明明後日だよ?」
「早めに行って、しっかり準備でしょ」
「……学校……」
「たまには休んで……どうせ、勉強なんて手に付かないでしょ?」
「そりゃあ……じゃあ、そうさせて貰うね!」
「喜多さん達に、よろしく言っておいてね」
「うん、分かった!」
翌日、将士は天川会長に話をして、朝から電車で拳王ジムに向かった。夏雄も一緒である。午前中のうちに拳王ジムに到着した。
「よう、待ってたぞ」
「喜多さん、お願いします!」
「おう……そっちは……誰?」
「加藤夏雄!何で知らねぇんだよ?」
「……知らないと、そんなに悪いのか?」
「悪いよ!甲斐の関係者だろ?」
「……だから、誰だよ?」
「加藤夏雄だって言ってんたろ!」
「うるせぇな~、静かに……よう、将士!」
手塚がジムから出て来た。
「手塚さん、お願いします!」
「おう、頑張ろうな!……入会希望者?」
「だから、俺は加藤夏雄だ!」
「……将士、何でこいつはこんなに怒ってんの?」
「僕は分からないです」
「喜多?」
「知らん!頭が足りねぇんじゃねぇの?」
「何で2人は知らねぇんだよ!加藤夏雄だぞ?」
「「……知らん!」」
「とりあえず、中に入れ」
「将士、変な奴を連れて来るなよな~」
「……ごめんなさい……で、いいのかな?」
「将士!何で謝ってんだよ!」
手塚に案内され、中に入る将士と夏雄。すぐに篠原会長がやって来た。
「中台君、久しぶり……こっちは、加藤夏雄君だね?」
「篠原会長、お久しぶりです」
「よろしくお願いします」
「「???」」
「篠原会長、知ってんすか?」
「このうるせぇ奴」
「甲斐君の前の日本代表選手だよ」
「……あーあーあー、甲斐にボロ負けした!」
「残念な奴な!」
「おい!おかしいだろ!」
「将士~、ご苦労様」
「こいつの相手、大変だったな」
「この野郎~……」
「まあまあ、2人は明後日にプロテストが有るんだから……しっかりと調整ね。喜多君と手塚君、サポートよろしく」
「「はい、頑張ります」」
「部屋に案内するよ」
「夏雄はあっちな!将士に迷惑掛けるなよ!」
「掛けねぇよ!」
とりあえず、プロテストの準備は出来た様である。
プロへ突き進む!