将士はボクサー見習いです!
ボクシングを始めた将士……
学校が終わると、将士はすぐに教室から出た。
「中台、一緒に行こうぜ!」
「菅原君……喜多さんがすぐに来いって言うんだよ」
「そうなのか?よし、走って行くぞ!」
「うん!」
将士と哲男は学生鞄とバックを持って、走って天川ジムに向かった。
天川ジムに着いた2人、そのままジムに入る。
「「お願いしま~す!」」
「おう、早いな!」
「将士、来たな!哲男、悪いな!」
「そんな事ないですよ、中台は面白いし!」
「将士、今日からここでアルバイトな!」
「アルバイト?」
「そう、ジムが終わったら片付けやら何やら……それがここの月謝代わりだ。ね、天川会長?」
「そうだね、それで良ければだけどね?」
「お願いします!頑張ります!」
「やったな、中台!」
「よし、着替えて来い!……天川会長、少しの間は俺が見ますからね?」
「はいはい、言い出したら聞かないんだから……」
「あの~……俺も……」
「哲男、言われなくてもお前もだ!」
「やった~、頑張ろうぜ中台!」
「うん、頑張ろう!」
将士と哲男はロッカールームに向かった。
「喜多君、スパーリングパートナーもやるのに大丈夫?」
「楽勝でしょ?」
「……それはそれで、うちのジムとしては困るんだけどな~……」
天川会長は複雑な表情をしていた。
ロッカールームでは、将士と哲男が着替えていた。
「中台、足速いな?」
「そう?逃げ足には自信有るけど……」
「ボクサーはさ、走り込みが重要なんだ……中台は意外に、ボクサー向きかもしんねぇな!」
「そうかな~……でも、ボクシングは中途半端で終わりたくないかな?」
「よし、強くなろうぜ!」
「うん!」
「違うよ、おう!だ!」
「おう!」
2人は着替えると、喜多の所に行った。
喜多は将士にバンデージを投げる。将士はそれをキャッチした。
「将士、それがバンデージだ。後で着け方教えるから、何処かに置いとけ」
「はい!」
「よし……まずはロードワークだ。将士に哲男、着いて来い!」
「「はい!」」
喜多はジムを出て走り出した。その後を将士と哲男が着いて行く。
「……喜多君、無理させないといいんだけど……喜多君もそうだけど、あの連中は基本がおかしいんだよな~……自分の出来る事は誰もが出来るだからな~……」
天川会長は頭を掻きながら、他の練習生の方に目をやった。
ロードワークから帰って来た3人、
「ぶはぁ……はぁ、はぁ、な、何だよこれ、はぁ、はぁ……」
「き、喜多さん、はぁ、はぁ、あ、朝よりきつい…はぁ、はぁ……」
「朝?あれは日課の1つだ。これも準備運動だけどな……ほらほら、次の練習行くぞ?」
「ま、待って…下さい、はぁ、はぁ、少し休憩を……」
「ぼ、僕は頑張るって決めたから…はぁ、はぁ……」
「中台…はぁ、はぁ、俺もやるぞ……」
「ほらやるぞ、貧弱君達!」
喜多のロードワークに着いて行った2人、天川会長の予想通りにこってりと絞られた様である。更には、すぐにジムワークへと移った将士と哲男、すでに息切れが凄い。
「よし、哲男は将士にバンデージの巻き方とロープを教えてやれ。終わったら俺に言えよ。将士、しっかりな!」
「「はい!」」
哲男は将士にロープスキッピングを教える。最初こそ将士はバタバタとしており、ロープに絡まったりと散々で有ったのだが、3ラウンドもこなして行くうちに上手くなっていた意外に器用である。
「喜多さん、終わりました!」
「よし、哲男はシャドーな!将士、こっち来い!」
「「はい!」」
哲男はリングに上がり、シャドーボクシングを始めた。
「将士、まずは構えだ!……お前、利き腕は?」
「右利きですけど?」
「そうか……なら、右足を半歩引いてだな、両腕を締めて……そうそう、脇を締める感じで拳を目線の高さに……そうだ、それがファイティングポーズだ!……そのまま前に動いて、そうそう……次は後ろへ……」
将士は喜多に言われるまま、言われた通りに動いている。ここでもなかなかスムーズに動いている。
「よし、そのまま左手を出すぞ」
「はい!」
「ステップしながら左を出す!……そうだ、後ろも同じに……その感じだ!……よし、今日はそれをずっと繰り返せ!」
「はい!」
「哲男、ミット行くぞ!」
「はい、お願いします!」
将士はそのまま、本日は前後左右のステップの動きと左ジャブの練習となった。
哲男の方だが、こちらは厳しい物になっていた。喜多の持つミットだが、喜多は元々スピードスターと言われた選手のトレーナーだった。そもそも、喜多自身もスピードが売りのボクサーではある。その為、生半可なボクサーでは喜多には納得がいかない。それは、哲男も同様の様である。
「何だそれ!やる気有るのか?」
「遅ぇ遅ぇ、もっと速く!」
「もうへばったのか?」
喜多の怒号が飛び交う中、哲男は必死に喜多の持つミット目掛けてパンチを放つ。気が付けば、哲男のミット打ちは4ラウンドやっていた。
「サンドバッグ打って出直しだ!」
[バシッ!]
「はい、はぁ、はぁ…ありがとうございます……」
喜多はミットで哲男を叩き、哲男は喜多にお礼を言ってリングを降りて行った。
この一連の事を見た他のトレーナーやボクサー、練習生達だが、喜多の視線から避ける様に練習をしている。
「……全くこいつ等は……」
天川会長がボソッと呟いた。
「将士、上がれ!」
「え?いいんですか?」
「いいから、グローブ着けて上がれ!」
「はい!」
将士はジムに置いてあるグローブを着け、リングに上がる。
「よし、ジャブを打つぞ」
「はい!」
「俺のミット目掛けて打てよ」
「はい!」
ゴングが鳴り、将士は生まれて初めてミット打ちを始めた。
将士が今打てるのは、左ジャブしかない。喜多の出すミット目掛け、将士は左ジャブを一心不乱に放って行った。時折、喜多から右手が下がる事を指摘されながら、ミット打ちは6ラウンド続いた。
「よし、将士」
「はい!」
「そのまま右ストレートもやるぞ!」
「はい、お願いします!」
そのまま、リング上では喜多が将士に右ストレートとワン·ツーを教える事になった。勿論、ミットに打ち込ませて感触を試させている。ミット打ちが終わると将士はジムの端に行き、本日の反復練習をしていた。
「よし、哲男!」
「はい!」
「少し相手してやるよ」
「本当ですか?」
「こんな所で嘘言うのか?大丈夫か?」
「待って下さい、すぐ準備するので……天川会長、手伝って下さいよ~!」
「はいはい、手が掛かるんだから……」
哲男はスパーリングの準備をしてリングに上がった。将士もこのスパーリングは手を休めて見ていた。
結果の方だが、これは日を見るより明らかであった。哲男は、喜多には殆ど触れる事も出来ずに喜多の攻撃を受ける事となった。
「弱いな、哲男……これじゃあ、相手は楽ですな~!」
「うぐっ……絶対強くなってみせますよ!」
「口だけですな~!」
「ぐぬっ……」
喜多に茶化され、哲男はこの後に歯を食い縛ってサンドバッグ叩いていた。
(……喜多さんの左……あれ……)
将士は何かに気付いた様だが、すぐに本日の反復練習に戻って行った。
この後だが、将士は哲男に教えて貰いながら筋力トレーニングをして本日の練習が終わりとなった。勿論、哲男も終了である。将士はその後、ジムの雑用として喜多や他のトレーナー達の指示の元に色々と動いていた。喜多は本日も大橋とスパーリングを行い、ジムワークを終えて本日終了となった。
将士の1日目、物凄く濃い1日となった。
将士のボクシングはこれから!