選抜全国大会終了とこれから……
大会最終日!
選抜大会最終日、本日は各クラスの決勝である。
将士は哲男と朝のロードワークを行い、一緒に朝食を食べていた。天川会長·橋本トレーナーの他に喜多と手塚も居る。
「将士~、そんなに食べるなよ~……俺、試合なんだぞ?」
「僕は関係無いからね!いや~、ご飯が美味しい!」
「だろ?ここの米は旨いんだ!」
「天川会長もおかわりして下さい!」
「そうかい?じゃあ、貰おうかな?」
「橋本ちゃんもどう?」
「悪いね~、大盛りで!」
「俺は試合だって言ってんでしょ!」
『だから、食べるなよ』
「………………酷いよ……」
哲男、昨日の計量で失態を晒した為、本日の朝は少ししか食べさせて貰えなかった様である。
本日の決勝だが、計量は特に問題はなかった。哲男もしっかりとリミットまで落としており、決勝に向けて万全である。
本日将士は観客席におり、喜多と徳井と一緒である。
「俺も観客席がいいんだ!」
天川会長はごねたのだが、橋本トレーナーに説得され、本日は哲男のセコンドとなった。
「将士、外から見るのもなかなかだぞ」
「中台君、とりあえずは銅メダルおめでとう……で、いいんだよね?」
「徳井さん、ありがとうございます。メダルは特に気にしてないですけど、もう1試合やりたかった……かな?」
将士達が話していると、
「石川北高校の中台さんですよね?…準決勝、惜しかったですね」
「俺、今一年なんすけど、中台さんみたいに、来年頑張ります!」
「中台さん、握手いいっすか?」
「え、あ、お……ごめんなさい、慣れてなくて……みんな頑張ってね」
『ありがとうございます!』
選抜を見に来ていた者や付き添いで来た選手が将士に話し掛けて来た。昨日の試合、それだけのインパクトを残したのだろう。
観客席も騒がしくなっていたが、選抜大会も最後の盛り上がりを見せる。いよいよ、決勝の始まりである。
当然軽い階級である隆明から試合をする訳だが、隆明は見事な試合を見せた。1ラウンドの立ち上がりから、隆明は鋭い左ジャブで相手をコントロールし、一方的な試合となっていく。
相手も意地を見せて何とか2ラウンドまで頑張るのだが、2ラウンド1分過ぎに隆明の右ストレートが綺麗に決まり、そのままカウントアウトで隆明のSC勝利となった。
哲男の試合も隆明に負けない試合であった。
1ラウンドから、哲男はいつもより半歩前に距離を置き、鋭いパンチを相手に突き刺していく。タイミングも良く、なかなか避けられる物ではない。
相手も必死に頑張るのだが、実力差はいかんともしがたい。1ラウンドにダウンを1つ取られると、2ラウンドには左アッパーからの右ストレートがクリーンヒットし、哲男のSC勝利となった。
閉会式、決勝に残った者のみが参加となっている。将士達3位の選手は、前日にメダルを貰っていた。
金メダルを掛けられる哲男と隆明、将士は少し羨ましく思った様だ。閉会式も進み、最後に優秀選手と最優秀選手の発表となる。優秀選手は哲男、最優秀選手は隆明であった。
しかし、この大会での1番の注目選手は将士であった。その証拠に、雑誌の記者達は閉会式が終わると同時に将士の元に向かった。この気配を察知した将士、閉会式が終わる前には拳王ジムに避難していた。
少しだけ、おまけというか困った事を伝えておく。
将士が姿を消し、仕方なしに記者達は優勝者に話を聞こうとしたのだが、
「俺が代わりに答えてやるよ!」
何故かしゃしゃり出て来たのは、西田会長である。本日は日曜日でジムが休みな事と、徳井の甥である隆明が出ていた事で会場に来ていた。
「あんた、何にもしてないでしょ!」
「馬鹿だな徳井~、カレーを伝授したじゃないか!」
「馬鹿に馬鹿って言われたかねぇな!」
「お前、自分の馬鹿さ加減が分かんないの?……しゃあないか、もっと馬鹿の喜多が居るし!」
「おい、俺が何時お前より馬鹿になったんだよ!」
「知らないのか?生まれた時からだよ?」
この一連のやり取りから、かなりの大騒ぎになった。結果、まさかの徳井と喜多は退場になった。
「酷いんだよ、俺を馬鹿って……」
西田会長、嘘泣きでこの場を上手くかわしていた。
ごたごたは有ったのだが、選抜全国大会は終了となった。そのまま、徳井と隆明は将士達と合流して夕飯を一緒に食べる事になった。篠原会長と手塚も参加となり、なかなかの大人数である。ちなみにだが、西田会長は誘われなかった。甲斐と佐伯はそれどころじゃないとの事である。
若い面々が多い為、焼肉屋に行く事になった。
「よし、好きな物を頼め!俺が出してやる!」
「天川会長、僕も出しますよ。3人共、お疲れ様」
「「「ありがとうございます!」」」
「俺達は……」
「今回は大丈夫だよ」
「篠原会長に天川会長、すいません」
「よし、しっかり食べるぞ!」
「橋本君は自分でね」
「どうして?」
「菅原君のウェート、危なかったからね」
「おぐっ……」
「残念すね、橋本トレーナー!」
「お前が言うな、哲男!」
騒がしい夕飯となった。もっとも、橋本トレーナーの分もちゃんと奢ってくれた優しい天川会長と篠原会長である。
「時に、これから3人はどうするの?」
「俺は……インターハイも制覇っすね!」
「俺は……どうしようかな~……」
「隆明、とりあえずはインターハイだろ?初志貫徹じゃないのか?」
「……そうなるかな……」
「僕は、夏までにプロになる!……あの時、あのパンチが反則って言われて……やっぱりここじゃないなって思いました!」
「うんうん、それぞれ頑張らないとね」
「「「はい!」」」
「篠原君、西田君が仕出かしたんだよ」
「え?」
「そうですよ!俺と喜多は退場させられたし!」
「あの馬鹿、何処まで馬鹿なんだよ!」
「いや、君達も少し自重してね。あれは無いよ」
「「……反省します……」」
「徳井と喜多が、意外に馬鹿って事で決着だな?」
「手塚、たまにはいい事言うな!」
「馬鹿の手塚と阿呆のもっちゃんに言われたかねぇな!」
「「何だと?」」
「喜多も交えて、馬鹿3人衆でいいんしゃないの?」
「「「徳井!」」」
「天川会長、疲れますね」
「同感……君達3人は、ああなっちゃダメだからな」
「「「はい!」」」
「おい、笑顔で何返事してる?」
「馬鹿は俺以外の3人だ!」
「手塚が1番馬鹿だろ!」
「だから、3人馬鹿で俺だけ違うんだって!」
「「「徳井!」」」
何処まで行っても、本日は賑やかな1日である。
全国大会が終わり、これからはそれぞれの道に進む。どんな未来が待つのだろうか。
どうなる、これから!