全国大会開催!
全国大会!
どんな結果となるのやら……
その前に……
選抜全国大会当日の朝早く、将士と哲男は駅に居た。天川会長と篠原トレーナーの迎えである。2人が駅から出て来ると、そのまま拳王ジムに移動した。
拳王ジムに入った4人、
「やぁ、天川会長!お久しぶりです!」
「篠原君、悪いね」
「いやいや……橋本君も元気そうだね?」
「まあまあです。よろしくお願いします」
「お!橋本ちゃん!お久~!」
「……てづ馬鹿か」
「手塚だよ!」
「やぁ、もっちゃんじゃねぇの!」
「出たよ、日本一の無責任男……」
「それは手塚だ!」
「俺は無責任じゃない!」
「馬鹿だもんな?」
「西田さんじゃないんだから!」
「馬鹿で無責任……手塚、やったな?」
「それはお前だ!」
何故か橋本トレーナーと喜多と手塚は言い争いをしている。
「……仲悪いんですか?」
「中台君は知らないのかい?結構有名だよ」
「哲男君……」
「俺は知ってる!」
「……3人は進歩が無いね~……お互いに大変ですね、天川会長」
「ああ、お陰で白髪が増えたよ」
篠原会長と天川会長が溜め息を付いたが、3人は変わらず言い争いをしていた。将士と哲男も呆れている。
「辞めなさい!……主人公はこっちの2人!」
「橋本君、いい加減にしないか!」
「怒られてやんの!」
「馬鹿だよな~、もっちゃん!」
「君達も同類だよ!成長無いんだから!」
「喜多と手塚、篠原会長に怒られて、少しは大人になれよ!」
「「こっちのセリフだ!」」
「天川会長、馬鹿ばっかりですね……」
「同感……」
「ポンワカポンワ♪ポンワカポンワ♪ポンワカポンワカポンワカ~♪」
「どうした、将士?」
「吉本新喜劇!…題して、トレーナーが我が儘ばっかり!」
「上手い!やるね、中台君!」
「こんな事も学んだのか、感心感心」
「将士は俺から学んだんだからな!」
「一人占めか喜多?俺も協力してるだろ?」
「将士は、俺のジムの選手だ!」
「「呆れるね~……」」
「将士、どうだ?」
「……ダメだこりゃ!」
何を言っても埒が明かない様である。
選抜全国大会の開会式を将士と哲男はしっかりと出席した。明日より、白熱の全国大会が始まる。開会式が終わると、将士と哲男は真っ直ぐに拳王ジムに戻って来た。
ジムに戻った2人、自分のパンチを確認したりリングでの動きを確認し、ウェートを確認してから練習を終えた。
「さて、これから天川会長vs篠原会長だな?」
「おう、それそれ!流石は喜多だな!」
「何やるんだ?」
「橋本ちゃん馬鹿だな~、スパーリングだろ?」
「天川会長、親父ファイトに出たんだろ?」
「おお!そうかそうか!いいね、流石は2人だ!」
「……さっきまで言い争ってた癖に……」
「篠原君、これは川上ジムのせいで間違いないな?」
「……悪巧みは協力するんですね……」
「流石に呆れるな?」
結局、天川会長と篠原会長はスパーリングをする事になった。
2人共、現役を離れて長い。天川会長はこの前、確かに親父ファイトに出たのだが、それでも年齢も有り難しいと思われた。
この考えこそが、間違いだった。
立ち上がりからパンチを交錯させる天川会長と篠原会長、一線を退いていたとは思えないくらいにパンチが切れている。お互いにガードを上手く使い、クリーンヒットを許さない。
1ラウンド最後、2人のパンチが交錯してお互いの顔面を捉えた。
「……僕じゃ、ここまでで精一杯!」
「俺も、ここまでかな……流石に篠原君だね」
「いやいや、天川会長には負けますよ」
天川会長と篠原会長、笑顔でリングを降りて来る。
「……不覚……最後のパンチ、見えなかった……」
「奇遇だな、俺も確認しきれなかった……橋本ちゃんより強ぇんじゃないか?」
「……返す言葉が無い……」
「2人共、凄ぇな……」
「哲男君、僕達はもっと頑張らないとだね?」
「おう、本当に……」
改めて、天川会長と篠原会長の凄さが際立つ事になった。将士や哲男だけでなく、喜多·手塚·橋本も改めてトレーナー業をしっかりと行おうと心に誓った。
翌日、将士と哲男の1回戦である。天川会長と橋本トレーナーの他に喜多も同行していた。どんな試合をするのか、楽しみの様である。
計量については、別段問題は無かった。将士も哲男も、1発クリアして準備OKである。
試合は将士が先である。軽い階級からの為、当然の事となる。
将士はしっかりとアップし、試合に望んだ。セコンドは天川会長であり、天川会長の表情は穏やかである。
試合だが、将士は調子が良い様である。左ジャブが面白い様に決まり、自分の距離にすると将士は一気に攻撃に転じた。この攻撃を相手は堪えきれない。将士の右フックでダウンすると、立ち上がって来た所を将士が更に攻撃し、結局、将士が1ラウンド2分14秒でRSCでの勝利となった。
哲男も将士に続く。立ち上がりから自分の距離で試合を進め、相手が焦れた所にカウンターを決めた。このパンチでSC勝利とし、将士と共に準決勝に駒を進めた。
もう1人の注目選手、隆明も1回戦をRSCで勝利していた。徳井の甥との事だが、戦い方は喜多に近い。なかなかの技巧派である。
3人共に見事な勝利となり、将士と隆明は明日、対戦する事となった。
試合会場からの帰り道、将士と哲男は喜多と歩いていた。天川会長と橋本トレーナーは、途中で夕飯を食べるとの事だった。
「なかなかな試合だったな?」
「そうっすか?俺はこれからなんすけどね!」
「僕は……気を引き締めないと……」
「隆明とだからな!…まぁ、しっかり楽しむ事だ!……俺は、結構楽しいぞ」
「はい、頑張ります!」
「喜多さんを楽しませても、な~んも出ねぇんすよね?」
「……拳骨くらい出してやるよ!」
「要らね~っすよ!ご褒美じゃないんすか?」
「何にもしてねぇのに?」
「これだよ……」
「喜多さんには、敵わないね!」
明日も試合は有るのだが、そんな雰囲気は微塵も無い。雰囲気は最高の様である。
大会は続く!