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変われる拳!  作者: 澤田慶次
30/109

目指せ全国、東北大会開催!

これに優勝すれば、全国大会出場だ!

2月半ば、遂に東北大会である。将士と哲男は、しっかりと荷物を持って集合場所に向かった。今回の東北大会は岩手県である。天川会長と橋本トレーナーが今回もセコンドである。いつもの4人で、岩手県に乗り込んだ。

宿舎に着いた4人、将士と哲男は着替えてすぐにロードワークに出て行った。天川会長は知り合いのジムに連絡し、練習場所をしっかりと確保していた。

ロードワークが終わった将士と哲男、天川会長に連れられて近くのジムに行く。明日から試合という事もあり、本日は軽めの練習をしてからウェートを確認した。

「菅原、今回は大丈夫なんだろうな?」

「大丈夫ですよ~、橋本トレーナーもしつこいな~……」

哲男は文句ダラダラではあるが、橋本トレーナーとしては県大会の決勝があった為にかなり心配していた。結局の所、将士も哲男もウェートに問題はなく、明日からの東北大会を待つのみとなった。東北大会から全国大会に進めるのは1人だけ、なかなか厳しい大会である。


東北大会初日、将士も哲男も問題なく計量を終えた。

計量後に少し物を食べた2人、少し休んで試合に向けてアップを始めた。階級の軽い方から試合であり、今回も将士が先に試合をする。黙って黙々と動いている2人、そこに近付く2人が居た。

「福島の菅原だな?」

「……誰?」

「青森の山本」

「山本?……誰?」

「去年、インターハイで対戦しただろ?」

「……居たかな~……そっちは誰?」

「青森の佐野、俺はフライ級だから、菅原とはやらないな」

「……菅原菅原言ってるけど、お前等を俺は知らねぇぞ」

「……別に忘れてても構わない、リベンジはさせて貰う」

「そっちのは、福島の代表かい?」

「僕?…中台って言います」

「階級は?」

「フライ級」

「そう、対戦出来るといいね……まぁ、俺の勝ちだろうけどね」

青森の2人は、すぐに将士と哲男から離れて行った。

「……で、何が言いたかったのかな?」

「何だろう?……特に気にしなくていいんじゃねぇの?」

「だね!」

「だろ!」

2人はすぐにアップに戻る。


着替えが終わり、将士の出番となった。対戦相手は岩手県の代表選手である。花道を天川会長と歩き、リングに上がる将士。気合いの入ったいい表情である。

レフェリーから注意事項の説明を受け一旦自分のコーナーに戻って来た将士、本日は青コーナーである。

「中台君、いつも通りね。自分で考えて動いてね」

「はい、頑張ります」

天川会長、いつにもなく穏やかな表情をしている。

試合は始まるのだが、一方的な試合となった。将士は最初から間合いを詰めて行き、自分のパンチを打ち込んでいく。速く重いパンチである事は、容易に見て取れる。その上で、ウィービングもスムーズであり相手に的を絞らせない。将士のペースである。

相手も県の代表、何とか打破しようと色々と試みるのだが、将士を崩す事は出来なかった。考えてみれば、元世界チャンピオンや現役日本ランカーとスパーリングを重ねていたのである。当たり前と言えば当たり前かもしれない。

1ラウンドが1分を過ぎた頃、将士を振り払おうと出した左フックに将士が左フックを合わせてカウンターとなった。この一撃で勝負有り。相手が立ち上がる前にレフェリーが試合を終わりにしていた。


続く哲男の試合、セコンドは橋本トレーナーである。

哲男はリングに上がり、リング中央でレフェリーから注意事項を受ける。落ち着いた表情をしている。

「最初から飛ばして行け。お前は気が緩みがちだからな」

「大丈夫ですよ~、信用ねぇな~……」

将士とは対照的な感じである。

実際に試合が始まると、哲男も相手を寄せ付けなかった。

相手は北海道の選手だったのだが、哲男のスピードに着いて行けない。哲男は外からパンチを放り込み、相手に自分のボクシングをさせない。哲男にいい様にやられ、頭に血が登って無理矢理前に出て来た所に、哲男の右ストレートがカウンターでヒットした。このパンチが相手の息の根を止めた。10カウントの間に立ち上がる事が出来ず、哲男も将士に続いて1回戦突破となった。


翌日も将士と哲男は調子が良かった。

将士は準決勝を、2ラウンド1分29秒でRSCとした。この試合も天川会長の表情は常に穏やかであり、本当にボクシングジムの会長かと疑いたくなるくらいである。

一方の哲男だが、こちらも2ラウンド32秒でRSCとしていた。特に右ストレートの切れが良く、橋本トレーナーの期待以上ではないだろうか。2人揃って、明日の決勝に駒を進めた。

将士と哲男の逆の山だが、こちらは初日に絡んで来た2人が勝ち上がっている。将士は佐野と、哲男は山本と明日の決勝で全国大会出場を駆けて戦う事となった。


準決勝を終えた夜、将士と哲男はお互いの対戦相手のビデオを一緒に見ていた。天川会長と橋本トレーナーも一緒である。

「なかなか強いね~、中台君はどう戦う?」

「……どうと言われましても~……やれる事は決まってるし、喜多さん達と比べると~……特に倒せないとは……はい……」

「はっはっは、そうかそうか喜多君達と比べるとね」

「将士~、喜多さん達は別格だよ」

「確かに別格かもしれないけど、僕にはそれが基本だからさ~……」

「うんうん、中台君はもういいや。菅原君、どう?」

「俺は~……まぁ、自分のスタイルを貫けばですね」

「菅原、何で中台と比べて弱気なんだよ?」

「弱気?…問題無いって言ってるんですけど?」

「問題有り有りだろ?ウェートとか……」

「大丈夫ですよ!ちゃんと管理してます!」

「橋本君、なかなか大変だね。よし、明日はしっかりと全国の切符を取って帰るとするか?」

「「はい!」」

「勿論、絶対に取って貰います!」

「そうそう、中台君と菅原君に伝言。徳井君からで、[隆明は関東大会を突破した]だそうだよ」

「うわ、やった!」

「よし、俺達も続くぞ」

思わぬ所で気合いの入った将士と哲男、明日の決勝、どういう試合をするのか楽しみである。

油断大敵!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまでは順調ですね。 さて、この先はどんな試練が待ち受けているのか。 成長が問われますね。
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