合宿の終わり!
つらい合宿も遂に最終日!
12月31日、将士と哲男の合宿最終日である。本日の午前中が終わると、2人は福島県に帰る事になっている。
朝のロードワークだが、将士と哲男が降りて行くと外には喜多と手塚の他に池本を始め、甲斐や佐伯等の面子が揃っていた。
「僕は、自転車で付き添いだからね」
「隆明、遅れるなよ」
「叔父さんこそ!」
「何で俺も呼ばれたんですか?」
「藤沢、たまには身体動かせよ」
「中年太りになってるぞ!」
「藤沢、ヘビー級でデビュー!」
「池本さんまで……」
朝から賑やかなメンバーである。
準備運動を済ませると、みんなで一斉に走り出した。川上会長と石谷トレーナーは不参加だが、その他は参加となっている。
行きはいつも通りであったのだが、帰りになると、
「負けた奴は、勿論奢りな!」
「徳井、隆明が負けてもお前な!」
「マー君とテッちゃんの場合は喜多な!」
「お前もだろ、手塚!」
「俺は……」
「藤沢は、意外にお金有るから自分で払え!」
「マジですか、池本さ~ん?」
「よし、高校生達頑張ってね!スタート!」
篠原会長の声が掛かると、みんな一斉に物凄い速さで走り出した。声を掛けた後、篠原会長は自転車を目一杯踏みジムへ急いで行った。
篠原会長がジムに付いて10分程、池本·徳井·甲斐が帰って来た。殆ど並んでゴールである。
「う~ん、このガキも振り落とせなかったか~……」
「少しはマシになりましたかね?」
「……勝つつもりだったのに……」
『甘い!』
3人が話していると、佐伯を先頭に高校生達も帰って来た。
「くそ~、置いてかれた!」
「……佐伯にも負けるとは……」
「一生の不覚だ!」
「……はぁ、はぁ、はぁ、付いて行くので精一杯……」
「マジで……はぁ、はぁ、はぁ、この人達は何なんだ……」
「はぁ、はぁ、はぁ、流石にきついな~……」
みんなが到着して5分後、藤沢がやっと到着した。
「はぁ、はぁ、はぁ、俺には不利ですよ…はぁ、はぁ、はぁ……」
「よし、みんな帰って来たね!朝ご飯にしようか?」
「誰も用意してないんじゃ……」
「大丈夫、1番の暇人が作ってるから」
「あ~、西田ね。確かにあいつは暇人だな……藤沢、後で奢りな!」
「うわ!本気ですか?」
『勿論!』
この後、みんなで西田会長の作った朝ご飯を食べたのだが、これが物凄く好評だった。もしかしたら、西田会長は料理人としての才能が有るのかもしれない。
少しの休憩を挟んで、午前中の練習となった。本日の午前中だが、篠原会長がメニューを変更していた。
「よし、各自アップ!高校生達をしっかりと鍛えてね!」
『はい!』
「俺は、ゴング担当します」
「西田君、お昼の用意!」
「うっ……分かりましたよ~……」
「ほらほら、高校生達もアップアップ!」
『……はい!』
どうやら、篠原会長は高校生達に素晴らしい機会を与えた様である。元世界チャンピオン達とのスパーリング、将士達高校生にとっては、この上無い経験となるだろう。
「とりあえずだな~……まずは俺からだろ?」
「池本さんが最初だと、みんな壊れますよ!」
「それは、力加減をしらないこちらの2人だろ?」
「俺はやりませんよ!手塚さん程馬鹿じゃないですから!」
「何だと甲斐?俺の何処が馬鹿なんだよ!」
「分かるな~、リトル西田だもんな!」
「おい喜多、どういう意味だよ?」
「言葉のまんま!」
「……喜多、お前も変わらないぞ……」
「おう、喜多もリトル西田だな!」
「池本さんに徳井、酷過ぎでしょ!」
「甲斐も怪しい」
「「納得!」」
「ちょっと、喜多さんに手塚さん、何納得してるんですか?」
「成る程……西田3人衆……有る意味怖いな」
「池本さん、俺は他のジム……」
「しっかりと検討しろ」
「ちょっと藤沢さん、何で高みの見物何ですか?」
「俺?…ほら、俺はゴング担当だから」
みんなが揉めていると、佐伯がさっさとリングに上がった。
「さて、俺からやるか……そっちは誰から?」
「じゃあ、僕から!」
『おい、抜け駆けだ佐伯!』
スパーリングをする元世界チャンピオン達からは非難が上がっているが、全く気にしない佐伯である。
実際にスパーリングとなると、流石は元世界チャンピオン達であった。
佐伯·喜多はスピードで掻き回し、高校生達は追い付く事さえ重労働である。これに対し手塚·甲斐はインファイトで相手をし、手数で高校生達をコーナーに追い込んで行く。池本については、確かに接近戦をしているのだが、パンチを徹底的にボディに集め、高校生達にボディの苦しみをしっかりと植え付けた様である。
「よし、合宿終わりだね」
「「……ありがとうございました……」」
「俺も、ありがとうございます」
「うんうん、これからもしっかりね」
「タツヤ!」
「将士ですって……」
「ほれ、カレーのレシピと唐揚げのレシピ」
「あ、ありがとうございます!」
「あれ?いつの間に唐揚げのレシピを?」
「どうせ、お前は忘れてたんだろ?……美里さん、かなり面倒だったぞ?」
「うっ……すいません……」
「将士、飯行こうぜ……」
「中台君、お腹空いたよ……」
「そうだね、行こうか」
「お~い、早く来いよ!」
「甲斐が全部食べちゃうぞ?」
「手塚さんでしょ!」
「早く行こうぜ」
『待って下さいよ~!』
みんなで合宿の終わりに、西田会長が作った昼を食べる事になった。この昼も好評であり、改めて西田会長の料理の才能を感じる。
この昼の後、将士と哲男は新幹線で福島県に帰って行くのだが、
「藤沢、タツヤとブンタの土産代!」
「え?俺ですか?」
「俺達の奢り分もこいつ等に使え」
「分かりました……好きな物を選んで」
「え?それじゃあ……俺はこれを……」
「僕はこれ……」
「……遠慮してないか?」
「このおっさん、結構金持ってるぞ」
「よ、部長!」
「高月給取り!」
「よし、これとこれとこれ!……これとこれも買っとくか!……これもお願い!……これと~……藤沢、後は?」
「……もう充分でしょう……」
「はい、合計……24576円になります」
「……財布の中身が……」
『気にするな!』
「やっと分かったんだけどさ~……タツヤとブンタって、仲代達矢と菅原文太の事だよね?」
「な~る程、そういう事だったのか!」
将士と哲男は土産も持ち、福島県に帰って行った。勿論、隆明の土産も藤沢が出す事になった。藤沢には散々であったが、将士達には身の有る合宿となった様だ。
まだまだこれからだが、楽しみが増えて来ました!