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変われる拳!  作者: 澤田慶次
21/109

合宿は強くなる為、それのみ!

続く合宿!

いつの間にか眠ってしまった将士と哲男、その幸福の時間を奪ったのは悪人面の金髪坊主だった。

「おら起きろ!朝のロード行くぞ!」

眠い目を擦りながら、将士と哲男は着替えて下に降りて行った。既に喜多も準備万端の様である。

「よし、走るぞ」

「遅れたら、練習倍だからな!」

「「!?…頑張ります……」」

軽い準備運動をし、4人は走り出した。

喜多と手塚を先頭に、将士と哲男は後を付いて行く。速いペースではあるのだが、将士も哲男も遅れる事なく走っている。

朝のロードワークが終わると、哲男は朝食を作り始めた。将士は哲男の分も洗濯しており喜多と手塚は、

「腹減ったな~、早くしろよ!」

「走る前には用意しとけよ!」

大きな声で文句を言いながら、本日の合宿の予定を決めていた。

朝食が終わると、喜多と手塚は練習開始時間だけ告げて出て行ってしまった。将士と哲男は、とりあえずは練習の準備をして時間を確認し、ジムの方へ降りて行った。


本日の午前中の練習だが、基本は体力やフィジカルを鍛えるメニューが中心となる。近くの公園を使い、ダッシュ等の走り込みから上半身の筋力トレーニングと見ているだけで吐き気が出る様な練習となっている。

「基本、午前中はこれだからな」

「手を抜くなよ」

喜多と手塚に言われ、将士と哲男は午前中だけでへとへとである。

昼は今日も拳カレーである。本日は喜多と手塚も一緒である。

「絶対残すなよ」

「食べる事も重要だからな!」

2人の言葉に、将士と哲男は必死に昼食を食べた。


2時間程の睡眠を取り、将士と哲男は午後の練習に移る。本日の練習は、西田拳闘会となった。喜多が将士と哲男を案内する。本日は喜多が2人を指導する予定である。

「う~っす、徳井」

「「お願いします!」」

「よく来たね」

「よろしくね」

「何だよ、佐伯も居るのか?」

「文句でも?」

その時、更衣室から1人の男が出て来た。10月10日にSフェザー級の世界タイトルを奪取し、オリンピックで金メダルを取る為に一旦アマチュアになった甲斐拳人である。

「あれ?喜多さん?……そっちは?」

「菅原哲男です!」

「中台将士……喜多さん、この人は?」

「馬鹿、甲斐だよ甲斐!」

「テッちゃん、[さん]付けくらいは……」

「あ~あ~、世界チャンピオンの!…へ~、本人なんだ~……」

「……昴、俺は(あんま)り有名じゃないらしいな」

「中台君、拳人を知らないのにはびっくりだよ……今は世界チャンピオンじゃなく、1人のアマチュアボクサーだよ」

「何か悪さしたんですか?」

「……する様に見えるの?」

「見えるかもな~、手塚の教え子だしな~……」

「それは納得!拳人、お前は悪人だ!」

「おい、酷い言い方だな?」

「おい、楽しそうだな?」

西田会長が、会長室から出て来た。

「よし、着替えて練習!」

「「はい!」」

「甲斐、マー君とテッちゃんと一緒にロードワークからね」

「分かりました。昴、お前も付き合え!」

「いいけど、お前が遅れてもしらねぇからな」

みんな、それぞれで動き出した。

「おいおい、俺も話に……」

「誰も西田さんと話したくねぇってさ」

喜多の言葉に頷く徳井と甲斐と佐伯。前日、西田会長は競馬で30万円損をした為、徳井のボーナスをカットしようとしたらしい。徳井からの猛反発に加え、佐伯からも最悪だと言われたらしい。更には、その話を聞いた篠原会長からお叱りの電話までを貰う始末。かなり問題児な会長である。


将士と哲男のロードワークだが、先頭は甲斐と佐伯である。喜多は自転車で付いて行っているのたが、

「おら、しっかり走れ!」

「遅れるなよ!」

かなり将士と哲男に激を飛ばしている。

一方の甲斐と佐伯だが、

「へばったのか、昴?」

「お前だろ?俺はまだまだだ!」

言い合いをしながら、ペースがどんどん速くなっていた。

ロードワークが終わると、将士と哲男はすぐにジムワークに移った。勿論甲斐もジムワークに移っている。

ロープから始まり、ミット打ちになると徳井も参加し、徳井は将士のミットを持った。

「どうした?もう終わりか?」

「諦めて帰るか?」

徳井からきつい言葉を言われながら、将士は必死にミットを打っていた。気が付けば、将士は7ラウンドのミット打ちをしていた。

哲男のミットは佐伯が持っていた。佐伯は現役の頃はアウトボクシング寄りのボクサーファイター、哲男にはぴったりである。

「遅い!」

「速く強く!」

「遊んでるのか?」

こちらも激しい激が飛んでいる。哲男も必死にミットを打ち、7ラウンドを消化していた。

甲斐はというと、喜多がミットを持っていた。喜多の持つミットに乾いた炸裂音が響く。甲斐のパンチ力と打つ角度、何よりタイミング等が今まで見て来たボクサーよりも遥かに上に感じた。

「よし、将士と哲男はスパーリングな!」

「「はい!……誰と?」」

「この馬鹿とな!」

「拳人、やられるなよ」

「おう、気を付けるよ」

「……甲斐さんとかよ……」

「ねぇ、どんだけ強いの?哲男君?」

「……呑気だね~……」

将士と哲男は、甲斐とのスパーリングとの事である。


甲斐とのスパーリングだが、実力的には物凄い差が有る。現役でプロの世界チャンピオンだったが、オリンピックの金メダルを目指す為に現在アマチュアになった甲斐、キャリアも力も普通に将士と哲男は及ばない。

しかし、ここにボクサーとしての大切な事が有る。どんなに実力が負けてても、諦めずに向かって行く事が必要である。これこそ、誰にも教える事が出来ない[ファイティングスピリット]である。この実力的に遥か上の甲斐を相手に、将士と哲男は何処まで気持ちを出せるのか。喜多はそこを期待していた。


甲斐とのスパーリングは将士からとなった。2ラウンドの予定だが、将士はペース配分も考えずに最初からガンガン責めて行った。

ゴングが鳴ると、将士は頭を振って左ジャブを放ちながら前に出て行く。試合の時よりも速く、明らかに最初から全開である。ガードを上げ、貰う事を前提に甲斐に向かって行く将士。将士は少しでも距離が近付くと右のブローを交え、自分の出来る事を最大限にやっていた。

対する甲斐だが、こちらはそんな将士を上手くかわしていた。将士が近付くと左のブローを当てて距離を置き、突っ込む将士を華麗にかわしていた。甲斐の構えはオーソドックス、本来の甲斐はスイッチの為にどちらでも出来るのだがサウスポーから入る事が多い。ここは将士に合わせているのだろう。

将士は途切れる事なく攻めるのだが、それでも甲斐は遠い。たまにガードに当たる事は有るのだが、捉える事は出来ない。レベルの差を感じる。

このままスパーリングは、2ラウンドの半ばを過ぎて行く。甲斐のパンチは一方的に当たるのだが、将士の拳は空を切るばかり。それでも将士は前に出る。気持ちの強い証拠である。

残り10秒を切った時、甲斐が将士にワン·ツーを放った。確かに全力では無いワン·ツーではあったのだが、それでも速く切れるパンチ、誰もが決まったと思った。

このパンチだが、将士は左ジャブを貰った後に分かっていたかの様に、少し左前に沈む様にして右ストレートをかわした。そのまま将士は左ブローを放つ。

(ボディか!)

甲斐は咄嗟に左手で右ボディを庇った。次の瞬間、将士の左はスリークォーターから甲斐の顔面に飛んで行った。

甲斐は一瞬反応が遅れ、将士のパンチを貰う事となる。とはいっても、甲斐は後ろにステップし将士のパンチの威力を半減させていた。

「カーン」

その時にゴングが鳴った。

続いて、甲斐と哲男のスパーリングである。

哲男もゴングが鳴ると、始めから全開でスパーリングに望んだ。左ジャブを放ちながら、哲男の出来得る最高のスピードで甲斐に挑む。何をするのにも先に動き、甲斐の先手を取っていた。

それでも甲斐である。特に慌てる事もなく、哲男の動きを見てしっかりと対応していた。時にカウンターを合わせ、甲斐は哲男の好き勝手にさせないでいた。

2ラウンドも残り30秒となった時、哲男は最後の力を絞って攻撃する。もう、被弾する事はお構い無しである。いつもより半歩距離を詰め、哲男は甲斐に最後まで抵抗していた。

甲斐はこれを分かった上で、哲男をしっかりと受け止めていた。流石と言わざるを得ない。哲男がワン·ツーを放とうとした時、ワンとツーの間に甲斐はスイッチして左ストレートを当てた。その時にラウンド終了のゴングが鳴った。


スパーリングの終わった2人に喜多から、

「あ~、弱い!本当に弱い!…筋トレしたら、あっちまで走って帰れ!」

「「はい!」」

将士と哲男は筋力トレーニングをして、西田拳闘会に頭を下げて走って行った。

「今日は悪かったな」

「いやいや」

「楽しかったですよ」

「…………………………」

甲斐は1人、無言であった。喜多は頭を下げ、帰って行った。

「……いや~甲斐、危なかったね?」

「何ですか徳井さん、別に……」

「ダウンしそうだったもんな?」

「失礼な!それはねぇ!」

「……ムキになって……心が狭いね~、なぁ佐伯?」

「本当に……ちっせぇ奴!」

「うるせぇ!何にもねぇよ!」

甲斐は不機嫌に言うと、サンドバッグを打ち始めた。どうやら、将士と哲男はなかなか頑張った様である。

2人はまだまだこれから!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 将士やりますね! まだまだ成長しそうですね。
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