合宿!
天川会長は、色々と考えてるらしい……
将士と哲男の東北大会出場が決まり、そこから少し経って学期末テストが行われた。心配された哲男の結果だが、今回も学年42位と50位以内をキープする事となり、特に問題は無かった。ちなみに将士は学年9位、文武両道である。
学期末テストが終われば、後は冬休みを待つばかりである。
「ねぇ中台君、冬休みに遊びに行こうよ!」
「奈美は置いて行って、私と2人でどう?」
「ちょっと、酷くない?」
「酷くないよ~だ!」
片瀬と高田は将士のクラスに来て、将士と遊びに行く約束をしようとしている。
「……僕は練習有るから……哲男君とどうぞ」
こんなやり取りの後、チャイムが鳴る頃には2人は自分のクラスに帰って行くのだが、
「大人気ね!…鼻の下が伸びてるんじゃない?」
何故か雨谷に絡まれる将士であった。
(何故だろう……悪い事して無いのに……)
釈然としない将士である。
そんな冬休み間近の金曜日の放課後、将士と哲男は天川ジムに来ていた。勿論練習の為である。
「中台君に菅原君、冬休みは合宿ね」
「「合宿?」」
「そう、しっかり鍛えて来てね」
「え?天川会長は来ないんですか?」
「俺は忙しいからね……橋本君も行かないよ」
「俺と将士だけですか?……心配だな~……」
「菅原君は確かに心配だね。でも、多分大丈夫だよ……当日、駅に迎えが来るからしっかりね」
「僕の知ってる人ですか?」
「それは、当日のお楽しみだね……さて、練習練習!」
この日も将士と哲男は、かなり厳しく絞られる事となった。
12月も後半となり、学校も冬休みに突入した。将士と哲男は天川会長の指示により、本日から合宿となっていた。駅で迎えを待っている。
「誰が来るんだろ?」
「それよりさ~……何処に行くのかな~、期間も分からねぇし……」
「天川会長の事だから、大丈夫でしょ!……でも、何処に行くのかは心配だね……」
そんな話をしている2人、
「お、君達だね!」
後ろから声を掛けられ、将士も哲男も振り返った。
「天川会長から連絡貰ってね、とりあえずは俺が来たんだけど……徳井清隆です」
「「徳井さん!」」
「喜多さんの同期の!……ビデオで何度も見ました!」
「俺は、生でテレビで見てました!」
「ありがとう……そんなに大した事じゃないよ。さて、移動しようか」
「「はい!」」
徳井の案内にて、将士と哲男は新幹線に乗った。交通費は天川会長が出してくれたみたいであり、目的地は東京との事だった。
新幹線の中で座っている3人、
「徳井さん、合宿は何やるんですか?」
「聞いてないんですけど……」
「ああ、それはね……篠原さん所とうちでの練習。勿論、走り込みなんかもやるからね!」
「え?拳王ジムと西田拳闘会でですか?」
「甲斐のジムでしょ?居るのかな?」
「哲男君、甲斐さんもしくはチャンプって言った方がいいんじゃない?」
「そう、そこのジムにも行く。俺がトレーナーだからね……覚悟しておいてよ、西田さんはすこぶる馬鹿だから……」
「あの~……川上ジムは……」
「……今は辞めておいた方がいいんだけど……多分、必ず絡むと思うよ……騒がしい人が来てるからね……」
東京に着くまで、徳井は将士と哲男のボクシング談義に付き合わされる事となった。徳井も楽しそうではあったのだが。
東京に着き、徳井の案内で将士と哲男は拳王ジムにやって来た。
「こんにちは~……」
「お願いしま~す……」
「声が小さい!やり直し!」
「「わぁ、お願いします!」」
「よろしい……やっと来たね?」
最初に声を掛けて来たのは手塚であった。
「おう、今日からよろしくな!…徳井、悪かったな」
「別に大丈夫……ご飯は期待してるよ!」
「……抜け目の無い奴め……手塚が奢るよ」
「何で俺なんだよ?」
「悪人面だからだよ!」
「お前なんて、エロ男爵だろ!」
「関係ねぇだろ!」
「辞めなさい!……君達2人は、本当に進歩が無いんだから……会長の篠原です。よろしくね」
「「はい、よろしくお願いします!」」
「さて、着替えて練習しようか?」
「はい!」
将士と哲男は、更衣室に行ってしまった。
「徳井君は帰らないの?」
「佐伯が来てますんで、今日は公休なんですよ……それに、騒がしい人がそろそろ……」
「ちわ~っす、三河屋で~す!」
「絶対違うよね?そんなに厳つい三河屋が居たら、僕は絶対注文しないよ」
「酷いな~篠原さん。こんな優しそうな三河屋、そうそう居ないっすよ?」
「……どうでもいいけど、何でそんなにご機嫌なんだい?池本君?」
「それはですね~……西田の奴、競馬をインターネットでやって、3万て入れたつもりで30万突っ込んだらしくて……しっかりハズレ!やったな西田、馬鹿全開!」
「池本さん、西田さん本気で落ち込んでるんですよ」
「徳井、ご苦労様だな……喜多に手塚、相変わらず弱そうな顔してんな?」
「久しぶりでそれですか?」
「普段の素行くらいに酷ぇですよ!」
「何言ってんだよ、素直過ぎて困るくらいだ」
騒がしい男は池本純也である。喜多達の先輩に当たり、3人がこの人の背中を必死で追い掛けた。いつも冗談混じりで適当そうなのだが、その実しっかりと喜多達を指導して来た。喜多達の憧れである。
会話が盛り上がっている?と、将士と哲男が着替えて来た。
「「お願いします」」
「おう、それじゃあ……」
「何だ?大分若いな?」
「こいつ等は高校生で、合宿でここに来てんすよ」
「ほう、だからと言って喜多が偉そうなのは納得いかないな~……よし、まずはみんなでロードワークだ!」
「だろうと思って、俺は準備万端ですよ!」
「流石は徳井だな!」
「言ってくれますね~……今日こそは勝ちますからね!」
「喜多、今日は俺がトップになる日だ!」
「ほう……俺を前に言うね~……負けた奴は……」
「ジュースでしょ!」
「奢りますよ、どうせ池本さんが奢る事になるだろうし!」
「あの~、僕達は……」
「着いて来れなかったら、明日のロード2倍だ!…よし、行くぞ!」
いきなり、将士と哲男は大変な事に巻き込まれた。外に出たかと思うと、すぐにみんな走り出してしまった。合宿初日から、将士と哲男は色々とやらかされそうである。
「……無茶しないといいけどな~……池本君が居るから無理か……しょうがないな」
何故か割り切っている篠原会長であった。
合宿は、何が待つ?