世界へ始動!
遂に始まった世界戦!
1ラウンド……
将士もリゴンドーもリング中央付近まで歩み寄ると、左拳を差し出し軽く当てた。まさにここから、2人の試合となった。
拳が当たった後すぐ、リゴンドーが軽く後ろに飛んだタイミングで将士は一気に間合いを詰めた。タイミングもドンピシャであり、リゴンドーも一瞬顔が強張った。そのまま将士は頭を軽く沈めた。
対するリゴンドーだが、将士の事はしっかりと対策して来た様である。右のガードをしっかりと固め、将士の左ブローに備えた。
将士もリゴンドーも、本来はセオリーを大切にするボクサーである。スタイルこそ違うかもしれないが、ボクシングに対する勤勉という所では似ているのかもしれない。だからこそ、リゴンドーはセオリー通りに将士の左ブローが来ると確信していたのかもしれない。
しかし、放たれたのは右のオーバーハンド気味のフックである。頭を沈める様にし、そのまま右のオーバーハンド気味のフックを将士は放ち、それはリゴンドーの思惑から外れてクリーンヒットした。
溜まらずリゴンドーは2·3歩下がると、将士はそのまま一気に攻め立てた。1ラウンド序盤から、荒々しい立ち上がりである。
一気にリゴンドーをコーナーに詰めるが、リゴンドーはしっかりとガードを上げて追撃を許していない。ガードの隙間から覗く視線は、至って冷静その物である。
将士はお構い無しに攻撃をするが、前のめりになった瞬間、リゴンドーは軽い左フックを出した。将士はこれをしっかりとガードするのだが、リゴンドーは将士にガードさせるのが目的であった。将士のガードに絡ませる様にし、そのまま将士の頭を少し強引に回した。次の瞬間には立ち位置が入れ替わっており、将士がコーナーを背負う形となる。
リゴンドーは左のボディのフェイントを見せ、将士に右フックを放った。
このパンチを将士はしっかりと掻い潜り、肩で強引にリゴンドーを押した。少しリゴンドーが下がると隙間が出来る。そこに右のアッパーを放った。
リゴンドーはギリギリの所で頭を後ろに反らせ、将士のパンチを回避した。リゴンドーの目の前を唸りを上げた将士の拳が通り過ぎる。リゴンドーは将士が追撃をするのを止める為、クリンチをした。
(予想通り!)
クリンチされた将士。その殆ど無い隙間で、将士は全身のバネと回転を使って左ボディを放った。
「ガフッ」
リゴンドーの顔が一瞬歪んだ。
(殆ど隙間無かったぞ)
リゴンドーは驚きの表情を見せる。
将士はそのまま一気に押していく。左右のパンチを出し、ガードの上からでもお構い無しにパンチを放つ。
対するリゴンドーだが、こちらはガードを固めて立て直しをしたい所である。実際、ガードは立ち上がりの時より高くなっており、ガードの隙間から覗く視線は将士を観察している様である。しかし、リゴンドーもこのままという訳にはいかない。
リゴンドーは将士のパンチを選び、そのパンチにカウンターを合わせていく。スピードの乗って来た将士のパンチとカウンターを狙ったリゴンドーのパンチは相討ちとなる。
将士は自身のパンチが当たる事で、被弾しても前に出て来る。
リゴンドーもそのまま下がったのでは将士に呑まれてしまう為、そのままカウンターを出しながら将士をいなそうと動いている。
試合は1ラウンドから、激しい乱打戦となった。
早くも2人の顔が腫れており、時に血が飛ぶ事もある。それでも2人はこの相討ちを辞めない。2人の頭が同時に弾けた所でゴングが鳴った。
青コーナー……
「将士、しっかり顎を引け」
「絶対引くなよ、押し切れ」
「はい!」
「将士君、苦しい時こそ手数だよ」
「はい!」
将士、しっかりとリゴンドーを睨み付けている。
赤コーナー……
「クレイジーだね」
「……それが怖い。しかし、引けない」
「だろうね。君の経験値に期待してるよ」
「任せてくれ」
リゴンドーもまた、将士を睨み付けていた。
2ラウンド……
将士は少しガードを高くし、左ジャブを放ちながら前に出て行く。
対するリゴンドーだが、こちらはしっかりと距離を取り、将士を中心にサークリングしていく。1ラウンドとは違い、セオリー通りの立ち上がりを見せる。
ここで、先程のラウンドでの攻防が影響を及ぼす。将士がいきなり右のブローを放った事で、リゴンドーは将士の右を必要以上に警戒した。その結果、将士の右のフェイントに必要以上に大きく反応する事となり、将士を中心に描くリゴンドーの円は歪になっていく。
その歪な円が結果としてリゴンドーを追い詰める。将士は右をフェイントを交えながら空振りでも気にせず出していく。都度歪になるリゴンドーのサークリング、1分半を過ぎた頃には、
[ドスン]
リゴンドーはコーナーに詰まった形となった。
一気に加速させる将士、低くくリゴンドーの懐に入ると左ボディから連打を繋げた。
対するリゴンドーだが、しっかりとガードし直撃を許さない。それでも将士の回転は止まらない。リゴンドーをコーナーに張り付けにしていく。たまらないリゴンドー、将士のパンチの隙間を縫ってクリンチをする。
次の瞬間、リゴンドーの顔が少し歪んだ。将士の超至近距離でのボディブローがリゴンドーを捉えていた。
たまらず将士を突き放すリゴンドーだが、距離が出来ると将士はすぐに右ストレートを被せた。リゴンドーは間一髪でかわすのだが、冷や汗が出た事は間違いない。
部が悪いと捉えたリゴンドー、将士に肩からぶつかる様にし、無理矢理コーナーから脱出した。その上で、細かいパンチを放ち将士の連打の先手を打つ。
このリゴンドーの攻撃に将士は相手のパンチを1つ決め、その1発に自身の左フックを被せた。2人の頭が同時に弾けるのだが、先に立て直したのは将士。そのまま攻撃を仕掛け様とした時、リゴンドーはたまらずクリンチをする。
(貰った!)
(まずい!)
将士が攻撃をする瞬間、リゴンドーは将士を力いっぱい突き放した。その時にゴングが鳴る。
(ペースが握れない)
(休む場所がない)
お互いに相手を一旦確認し、そのまま自分のコーナーへ戻って行った。
青コーナー……
「気を抜くなよ」
「ここからが本場だ」
「はい!」
「まだまだこれから、これは世界戦なんだからね」
「はい!」
将士、まずまずな立ち上がりといった所だろうか。
赤コーナー……
「なかなかに手強いな」
「ああ、よくあんな奴が隠れてた物だ」
「大丈夫そうか?」
「ああ、まだまだ先は長いさ」
リゴンドーはしっかりと落ち着いている。どうやら、試合はまだまだこれからの様である。
まだまだこれから!