将士の世界タイトルマッチ!
遂に将士の世界戦!
頑張れ将士!
昼を少し過ぎた頃、将士が試合会場に姿を現した。喜多や手塚も居なく、1人である。足早に控え室に入り、着替えると横になって天井を見た。
(……僕が世界タイトルマッチか~……少しは喜多さんに近付けたのかな?……)
10分程横になっていた将士、ゆっくりと起き上がりアップを始めていく。
少しずつ身体の温まって来た将士、一気に身体を動かし一旦心拍数を上げていく。それが終わるとゆっくりと座った。このタイミングで控え室のドアが開いた。
「よう、お前が世界取る所を見に来たぜ」
「哲男君、この後は君とだよ」
「おう、勿論だ」
「俺も期待してるよ」
「俺も挑戦するからな!」
「隆明君に昇龍、今日は応援よろしくね」
将士の口が少し綻ぶ。
4人が話をしていると、徳井と喜多が入って来る。
「酷いよな~……俺だけ仲間外れだろ?」
「そう言うなよ~、篠原会長が忘れてただけなんだからさ~」
「だったら、すぐに呼べよな~」
「まぁ、終わった事だしさ~……な?」
徳井はリゴンドー対策の時にみんなで集まったが自分だけ忘れられていた事を根に持っている様である。
「中台君、この薄情達は置いといて、しっかりやって来た事を出すんだよ」
「ありがとうございます……余り、喜多さん達を責めないで下さいね」
「……優しい門下生持って、良かったな喜多?」
「おう、それはもう……将士、今は自分の事だけ考えろ」
「はい」
「さて、隆明を始めそこの3人。本日は中台君の応援をしっかりやるぞ」
「「「はい!」」」
「という事で、俺はこの3人と観客席から見てるな。期待してるぞ……きっと、池本さんも天川会長もな」
「はい!やるだけやります!」
「おう、じゃあな……薄情者、しっかりセコンドやれよな?」
「うるさいわ、さっさと客席に行きやがれ」
徳井は哲男達を連れて観客席に向かった。
徳井達と入れ替わる様に篠原会長と手塚が入って来た。
「どうやら、緊張は無いみたいだね?」
「はい、良く眠れました」
「以外に図太いよな~……なぁ、喜多?」
「本当に……俺も手塚も、結構緊張したのにな?」
「それなんですけど、昨日夢で天川会長と池本さんが出て来まして~……」
『何?!』
「それで、池本さんとスパーやったら今日は何とかなる様な気になりまして……」
「……心配で出て来たのかな?」
「天川会長なら分かりますが、池本さんは違うでしょう?」
「将士がどれだけ強くなったか、感じたかったんじゃないっすか?」
「……たまたま見た夢だと思わないんですか?」
『全く!』
「池本君ならあり得るよね?」
「天川会長も、意外にやりますからね」
「それより、あの2人がつるむとろくなことしなさそうっすよね?」
「「納得!」」
試合前の控え室、以外に和やかになっていた。
「中台選手、用意をお願いします」
係員より声を掛けられ、将士は喜多にバンデージとテーピングをして貰う。その拳を係員に確認して貰いグローブを着ける。グローブを着けると将士は改めて動き出し、身体を温めた。
「さて、後はやるだけ。戻って来た時は君が世界チャンピオンだ!」
「はい!」
「出せる物は全部出せ!気持ちで引くなよ?」
「はい!」
「俺と喜多で鍛えたんだ、結果は必ず付いて来る!」
「はい!」
「俺も一言」
甲斐が突然入って来た。
「苦しい時は相手も苦しい物さ。その苦しさを楽しめ」
「はい!」
「じゃあ、俺は徳井さん達と応援してるな」
「はい!」
「俺も、応援してるよ」
「ありがとうございます、佐伯さん」
甲斐が去った後、佐伯が隙間から少し顔を出した。
「さて、行くとしますか?」
「はい!」
「「篠原会長、気合いを!」」
「よし!ベルト巻いて戻って来るよ!」
「はい!」
将士に気合いが入った所で入場の合図が入る。将士達はゆっくりと控え室を出て行った。
アナウンスが入り、遂にメインイベントの入場となった。
赤コーナーよりジョナサン·リゴンドーが入場して来る。セプテンバーの音楽に合わせ、軽やかなステップを踏みながらリングインした。
続いて青コーナーより将士の姿が見える。惑星の音楽が掛かっており、将士は客席に一礼してから花道を歩き出した。静かに歩き、静かにリングインする。いつも通りである。
続いて国家斉唱となる。チャンピオンの母国であるアメリカ国家が流れる。リゴンドーは右手を胸に当てている。
次は日本国家である。将士は目を瞑り、ゆっくりと深呼吸をした。深呼吸後にゆっくりと目を開け、しっかりとリゴンドーを見た。気持ちが出来ている様である。
次いで選手紹介となり、アナウンスが入る。
「赤コーナー、WBO世界バンダム級チャンピオン、ジョナサン·リゴンドー!」
リゴンドーは左手を軽く上げた。
「青コーナー、WBO世界バンダム級4位、中台将士~」
将士は観客席に頭を下げた。
2人はリング中央に歩み寄る。レフェリーから注意事項を受けると軽くグローブを合わせ、お互いに自分のコーナーに戻って行った。マウスピースを着け、両雄が自分のコーナーを背にしお互いの視線をぶつけた所で、
「カーン」
試合開始のゴングが鳴った。
どうなる?