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11_助っ人と作戦開始

「こっちが風雪かざゆきで、こっちが夏彦なつひこ

 一旦作業場を出て行った南斗なんしゅは、三十分程で二人の少年を連れて戻ってきた。

土地勘のある人間が必要だと言って、知り合いを探しに行っていたのだ。

 

 博士はこれ以上誰かを巻き込むことことに難色を示したものの、自分たちだけでは金色の流れ星を手に入れても逃げ切れるはずがない、と南斗に言われて渋々承知したのだ。


 風雪と呼ばれた少年は南斗より少し年上。サラサラの黒髪は長めのショートカット。

灰青色の目を少し伏せながらペコリと頭を下げる姿は、南斗の知り合いとは思えないくらい大人しい。


「あっ! お前たち、今、コイツで大丈夫かよ? って思っただろ!」

 その隣で声を上げたのは、ツンツンと立てた黒髪に榛色の目をした夏彦。

年齢は南斗やすばると同じくらいだろうか。

こちらは南斗の知り合いと言われて納得。かなりやんちゃそうな少年だった。


「こら、夏彦。すみません。こいつ口が悪くて」

「風雪のために言ってるんだろ! だいたいお前は年上のくせして」

「二人とも黙って。時間がないの」

 風雪に文句を言いだした夏彦を南斗が静かな声で諫める。

その様子を見てすばるがちらりとトンボを見る。そんなトンボも昴を見返す。

昴とトンボの様子に気が付かなかったのか、夏彦が黙ったのを確認して南斗が続ける。


「風雪は『太陽の神殿』の清掃をしている業者の下っ端よ。建物の中の作りはわかるし、下っ端だから顔を覚えられている心配はないわ」

「下っ端、下っ端って! お前が頼むって言うから風雪は来てやったんだぞ!」

「夏彦、いいから」

 今度は南斗に噛みつく夏彦を風雪が慌てて止める。


「この町で夏彦が知らない道はないわ。確実に役人どもを巻いて、この作業場に戻ってくる」

「まっ、まぁな!」

 急に褒められた夏彦が慌ててどや顔を決める。


「あの、彼らはどこまで?」

雨夜あまいのために力を貸して欲しい、とだけ」

「それだけですか?」

 南斗の答えに昴は目を丸くする。


「雨夜は俺たちの仲間だ。仲間のため、それ以上の理由があるか?」

 夏彦の言葉に風雪もうなずく。


「おいおい、本気かよ」

 トンボが驚きの声を上げ、博士は眉間に皺を寄せる。


「僕たちがこれからしようとしていることは、管理局の上位組織『仮称楽園計画』を敵に回すことなんだ」

「だから?」

 博士を馬鹿にしたような顔で夏彦が問い返す。


「相手が誰だろうと仲間のためなら、やることはやる。それが俺たちのルールだ。なぁ?」

「うん」

「そういうこと」

 夏彦の言葉に今度は南斗もうなずく。


「ありがとう」

 博士の言葉に昴も慌てて頭をさげる。

トンボもそれに合わせるように上下に飛んでみせた。


「さぁ、さっさと段取りを考えるよ! 博士、計画はいつの予定?」

「今日、今夜」

「えっ?」

「馬鹿言うなよ!」

「へぇ、悪くないわね」

 慌てる昴とトンボとは対象的に南斗が少し見直したと言った顔で博士を見る。


「おい、ちょっと待て! 今夜って、いくらなんでも急すぎるだろ」

「馬鹿ね。遅いくらいよ」

「どういうことですか?」


「この町にドローンを連れた見慣れない旅芸人が来たことは、彼らもすでに知っている。宿屋にはもう管理局の人間が行っているはずだよ」

「そんな」

 博士の言葉に昴が驚きの声を上げる。


「地下の宝を持ち出すのは、あたし達三人がやるわ」

「壊す方は僕が」

 南斗の言葉に博士が答える。


「問題はタイミングね。博士が騒ぎを起こした瞬間をどう知るか?」

「私たちがやりましょう。ね? トンボ」

「任せときな」

「どういうこと?」

 勝手に納得している昴とトンボに南斗がたずねる。


「博士が破壊に成功したら、私からトンボにシグナルをだします。なので、南斗はトンボを連れていけますか?」

「わかった。でも、昴はどうするの?」


「そうですね。新しい助手とか?」

 昴の言葉に博士が首を横に振る。


「それは無理だね。中に入るには専用パスが必要なんだ」

「風雪さんは持っていないんですか?」

「僕は作業の時だけ会社から渡されるんだ。それにどこまで入れるかはパスによって違うし」

 風雪はそう言って申し訳無さそうな顔をする。


「じゃあ、俺が博士について行って、昴が南斗たちと」

「それは無理だね」

 トンボの言葉を夏彦が遮る。


「ドローンくらいなら風雪が背負っていけるけど、あんたは無理。それとも、あんた、俺たちについてこれるの?」

 その言葉に昴が黙り込む。


「あっ、そうだ! ミエナインだよ!」

「えっ? 何が見えないの?」

 トンボの言葉に風雪が不思議そうな顔をする。


「違います。この羽織です」

 そう言って昴は寒六(かんろく)から貰った羽織を示す。


「その変な羽織が何?」

「見てもらう方が早いですよね。ほら」

 昴がミエナインの起動スイッチを押すと、膝から上が急に消える。


「ひぇっ! おばけ!」

 その姿に風雪がそう叫んで夏彦にしがみつく。

夏彦と南斗の顔も驚きで引きつっている。

慌ててスイッチを切ると昴の上半身が再び現れる。


「おばけではありません。光の屈折を利用して姿を隠す羽織なんです。旅の途中でお会いした方にいただいたのですが、これならどうでしょう?」

「……なるほど。大丈夫そうだな」

 昴の言葉に引きつった顔のまま夏彦がうなずいた。


「じゃあ、これでいいわね?」

 南斗の言葉にその場の全員がうなずく。


「今更だけど君たちまで巻き込んでしまって本当に申し訳ない。協力に感謝する。でも、自分たちの安全を第一に考えて。少しでも危険を感じたら、作戦は中止してくれて構わない」


「トンボいくよ」

 頭を下げる博士の言葉には答えずに南斗がトンボに声をかける。


「おっ、おう! 昴、博士を頼んだぜ!」

「はい。トンボも気をつけて」


 こうして全員は作業場を後にした。







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