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3_問い詰められる二人と厄介な再訪者

「えっ! お見せ閉めちゃうんですか?」

店のシャッターを閉める女性を見て、すばるが慌てて声をかける。


「いいの、いいの。店開けたままじゃ、ゆっくり話もできないでしょ。そこでも座って」

そう言うとシャッターを閉め終えた女性が店奥の応接セットを指さす。


 昴とトンボは顔を見合せた後でおずおずとソファに腰かけた。

それを確認すると、向かいに寒六かんろくと女性も腰をおろす。


「あたしはしん。見ての通りこの町の燃料屋よ。こっちの爺さんは寒六。自己紹介は……もういいわよね。あれだけ大声でしてたし。で、あんた達は?」

「えっと……」

辰にじっと見つめられて口籠った昴の代わりにトンボが飄々とした声で答える。


「そんなに見つめないでやってくれよ。まだガキなんだ。姐さんみたいな美人に見つめられたら、照れちまって何も言えねぇよ」

「トンボ!」

昴の抗議の声を無視してトンボは言葉を続ける。


「この初心な少年が昴。俺は昴が造ったドローンでトンボ。さっきも言ったとおり俺たちは修理屋をしながら地下を旅してるだけだよ。親はいねぇ。スラムの生まれさ。地下じゃ珍しくもねぇだろ?」

「噓だね」

滔々と語るトンボの言葉を辰が一言で切り捨てる。


「噓じゃな」

その言葉に寒六もうなずく。


「おい、俺は別に噓なんて」

「この子は女だろ。さっき胸を叩いたときにわかったんだ……あっ、あの時は悪かったね」

頭を下げる辰に昴がどう答えたものかと言葉に詰まる。


「そこのドローンの右羽根。修理の痕があるが、それはお前がやったのか?」

「えっ? あっ、はい。そうです」

続いた寒六の問いかけに慌てて昴がうなずく。

その様子を見て、寒六がふんっと鼻を鳴らす。


「やはりな。そのような雑な修理しかできん奴に自分の意思で喋るドローンなんて代物が造れるわけがない」

「えっ……」


「さぁ、本当のことを話してもらおうか」

そう言って迫る辰の言葉に昴とトンボが顔を見合せる。


「詰んだな」

「仕方ありません。……私はスピカ、彼はカノープス。お持ちのチラシに書かれた銀髪の少女とトンボ型ドローンは私たちです。事情があって今は昴とトンボと名乗っています。この度はご迷惑をお掛けしてしまってすみませんでした」

昴はそう言うと目の前の二人に頭を下げた。


「なんでまた管理局なんかに目ぇつけられてんの? あんた達、何したの?」

「……」

辰の問いかけに今度はトンボまでも答えに詰まってしまう。


「儂にも話をさせろ! お前、この町で珍しい石が採れると言っておったな? その話をどこで聞いた?」

「あぁ、そう言えばそんな話もしていたわね。それが管理局に追われている理由? でも、この町で石なんて採れないでしょ」


「やっぱり採れないんですね」

辰の言葉に昴ががっかりしたように呟く。


「いや、儂が聞いているのは」

寒六が口を開きかけたその瞬間。


 ダン、ダン、ダン!


 店のシャッターが物凄い勢いで叩かれた。


「おい! 店を開けろ! やはり何か隠していたんだな!」

シャッターの外から先ほどの管理局の男の怒鳴り声がする。


「しまった。アイツら戻ってきやがった」

「おい! 出口はどこだ? 悪いけど俺たちここで捕まるわけにはいかねぇんだ!」

チッと舌打ちをする辰にトンボが慌ててたずねる。


「えっ、裏口ならそっち」

「やめておけ。どうせ店は囲まれとるじゃろ」

辰の指差す方へ走り出そうとした昴とトンボを寒六が止める。


「そんな」

「どうすりゃ」

青褪める昴とトンボを見て、寒六が軽くため息をつく。


「仕方あるまい」

そう言うと寒六はフード付きの羽織を脱ぐと昴に投げて寄越す。


「これは?」

「そのドローンと一緒にそれにくるまって、そこのクローゼットに隠れておれ」


「おいおい。爺さん、クローゼットなんて見つけてくれと言っているようなもの……」

「いいから、儂の言うとおりにするんじゃ」


「……トンボ、言うとおりにしましょう。どちらにしろ、もう時間がない」

昴は渡された羽織とトンボを抱え込むと寒六の言うとおりクローゼットの中に入った。


「頭から被るんじゃ。全身を隠せ。絶対に声をだすでないぞ」

寒六がそう言ってクローゼットと閉めたのと、店のシャッターがこじ開けられるのはほぼ同時だった。

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