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17_帰還と旅立ち

ほたる様、本当に残ってしまわれるんですか?」

「一緒に帰りましょう。みんな待っていますよ」


 少女たちが村へ帰る日、湖底の町の広場には帰り支度を整えた少女たちとそれを見送る蛍と熒惑けいこくがいた。

別れを悲しむ少女たちが蛍を取り囲む中、やなぎも泣きそうな顔で蛍に挨拶をしていた。


「蛍様、落ち着いたらすぐに会いに来ます。それまでくれぐれもお元気で」

「ありがとう。柳も元気でね。色白にもよろしく伝えてね」


 ほほ笑む蛍の手を握り、柳が何度もうなずく。


「ちょっと! 柳、あたしには何か言う事ないの!」

そんな二人を見て、熒惑が仁王立ちで憤慨する。


「熒惑……」

泣きそうな顔のまま柳は名残惜しそうに蛍様の手を離し、熒惑に近寄る。


「何よ。しけた顔して。今度来るときはお土産持ってくるのよ。新しい服作りたいから綺麗な布とかがいいわね」

「うん、たくさん持ってくる」


 素直にうなずく柳の姿に熒惑が目を見開く。


「熒惑、今までありがとう。家族や友達を別れてずっとここで暮らすのかって、本当はすごく寂しかった。でも熒惑がいつも明るいから、ここでの楽しみとか探せるようになった。私たちのこと見守ってくれてありがとう。蛍様のこと、よろしくね」

そう言うと、とうとう柳の目から涙が零れ落ちてしまう。


「馬鹿ね。今生の別れじゃあるまいし、いつでも来なさい。あたしもあんたと言い合ってるの楽しかったわ」

熒惑は笑って柳の涙を拭った。


「「「熒惑~」」」

そんな二人を見て、他の少女たちも熒惑に駆け寄ってくる。


「あんた達、うっとおしいわよ! さっさと行きなさい!」

蛍と一緒に少女たちにもみくちゃにされた熒惑が怒鳴るが、その顔はどこか嬉しそうだった。


 騒ぎもひと段落して、いよいよ別れの時。


「さぁ、みんな行くよ! って、昴、ちょっと待って! あんた、その格好じゃ駄目でしょ!」

出発の声を上げた柳が昴を見て、慌てて声をかける。


「えっ?」

何のことかわからず昴は自分の姿を見回す。


 荷物は稲架はざがスクーターと一緒に湖の淵に隠しておいてくれる手筈になっているので、自分は身一つで帰ればいい。

特に変わったところもないはずだが……


「えっ? 、じゃない! あんた、色白いろしろの身代わりでここに来たんでしょ! 帰る時も色白として帰んなきゃ駄目じゃん!」

「あっ、そうでした」


 色々あってすっかり忘れていたが、自分は色白の身代わりでここに来たのだった。

確かに色白として帰らないと、色白が村に戻ってこれなくなってしまう。


「と言っても、色白の服なんて持ってきてませんよ」


 当初の予定では、水神様の巫女たちが村に戻ることになるなんて想像もしていなかった。

祠の流れ星を確認したらこっそり村を出るつもりだった昴は、村に戻る用意、ましてや色白として戻る用意なんて当然していない。


「他の子の服でもごまかせるだろうけど、今から荷ほどきして蛍を仮装させるのも手間だよねぇ」

どうしよう、と腕組みをした柳は、そうだ! と手を叩く。


「あるじゃん! いいものが!」


 数分後。


「うん、完璧!」

満足そうにうなずく柳を昴がげんなりした顔で見つめる。


「まさか、またこれを着ることになるなんて……私だけ巫女の格好っておかしくないですか?」

微かな抵抗を試みる昴だが、他に衣装もなければ、時間も惜しい。


 結局、祠に来た時と同じ格好で帰ることとなった。


「じゃあ、今度こそ。蛍様、熒惑、ありがとう! 行ってくるね!」

さよなら、とは言わず柳と少女たちは残る二人に手を振った。


 さらに数分後。


 突如、祠に現れた水神様の巫女たちに村は大騒ぎとなった。

しかし、柳が水神様の元には蛍と熒惑が残り祭り続けることをきちんと伝えたことで、騒ぎはすぐに静まり、村は少女たちとの再会を喜ぶ家族たちの声に溢れた。


 昴から事情を聞いた稲架たちも喜び、両親は七夜ななよの元にいる色白を呼び戻すべく、早速P-6761へと出かけて行った。


「もう行っちまうのか?」

残念そうな顔の稲架に昴たちはうなずく。


「はい。この騒ぎに乗じて出て行くのが一番目立たないと思いますので。それと……」

そう言って、昴は手短に事情を伝え稲架に手紙を預ける。


「P-8517の羽白はじろさんと安曇あづみさんだな。わかった。これは俺に任せてくれ」

「お手数をお掛けしてすみません」


 頭を下げる昴に稲架が慌てて手を振る。

「やめてくれ。昴たちのお陰で色白だけじゃなく、みんなも帰ってこれた。お礼を言うのはこっちの方だよ」


「昴! もう行っちゃうの?」

そうこう話していると柳が駆け寄ってきた。


「はい。今なら村の方にも気付かれることはないでしょうから」

「そっか。色白のこと、ありがとね。落ち着いたら遊びに来てよ。一緒に蛍様と熒惑のところにも行こう!」


「えぇ」

柳の言葉に昴はうなずく。


「トンボも元気でね!」

「おう!」


「昴、トンボ、本当にありがとう! 気を付けるんだぞ! 必ずまた村に寄ってくれ!」

「「はい」」


 こうして昴とトンボは次の流れ星へと旅立っていった。

第三章はこれで終わりです。

読んでいただける方がいるお陰で書けています。本当にありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] この章で 益々 流れ星が不思議な存在になりましたね。 昴の天然っぷり トンボの相方っぷり 旅のテンポ  さあ、博士に追いつくぜ!
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