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17_後日譚と次の目的地

「う~ん……」


 うめき声を上げたすばるが目を覚ましたのは羽白はじろの診療所だった。


「やっとお目覚めだね」

「……えっ? 羽白さん? あっ、大丈夫なんですか?」


 かけられた声にハッとした昴はベッドから起き上がり、羽白に問いかける。


「お蔭様でね。それより、どこか痛いところとか、おかしなところはないかい?」

羽白の言葉に腕を回したり、足を上げてみたりした昴は、大丈夫だ、と答える。


「それはよかった」

「それより、南斗なんしゅは?」


 昴の言葉に羽白は首を横に振る。


「まだ目覚めていない。そちらのベッドで寝ているよ」

「そうですか。……一体、何が起きたんですか?」


「昴、君はどこまで覚えている?」

「保管庫に行って、倒れた南斗を見つけて、振り返ったら羽白さんの様子がおかしくて……そうだ。羽白さんが何か言っていました……なんだったっけ?」


 そう言って考え込む昴の手を羽白が掴む。


「そこから先は私が話そう。と言っても、半分はトンボや町長からの受け売りだけどね」

その言葉に昴は素直にうなずく。


「まずは私が覚えていること。鴇色の鉱石の正体について」

「わかったんですか?」


 驚いた顔で昴は羽白を見つめる。


「鴇色の鉱石は人間の夢を集めていたのさ。だから、この町の住民より旅人が呼ばれた」

「どういうことですか?」


「聞いたんだ。私も鉱石の声を。アレは私に、私の夢を叶える、と言っていた。より強い想いを持った人間ほど、鉱石に呼ばれやすかったのだろうね。だから、町の住人より、『楽園』に行きたいとわざわざこの町まできた旅人の方が呼ばれやすかった」


「そしてここからは、受け売りの話。その鉱石は昴、君が壊したそうだ」

「私が?」


 羽白の言葉に昴が、まさか、と声を上げる。


「そのまさかだよ。君が光を放つと同時に鴇色の鉱石は粉々に砕け散ったそうだ。そして、その粉も跡形もなく消えてしまったそうだよ」

「そんなこと……」


 そう、保管庫に降り積もった鴇色の砂は、しばらく床にとどまった後、跡形もなく消えて行ってしまっていた。

糸掛いとかけによって、保管庫の床下まで捜索されたけれど、砂粒一つ見つけることはできなかったとのことだった。


「……打ち倒す者」

「えっ? 今、なんて?」


 突然、昴の口から零れた言葉に羽白が体を固くする。


「そうだ! 打ち倒す者ってなんですか? 羽白さんは私にそう言ったんです。その言葉を聞いたら、急に目が熱くなって……頭の中に声が……それで……それで……」

「昴、これ!」


 急にうわ言のように言葉を続ける昴に羽白が慌てて何かを握らせる。


「……えっ? あっ、これは、博士の眼鏡」

昴の手には修理された博士の黒縁眼鏡がのせられていた。


「無いと困るだろう? 修理しておいたよ」

「……ありがとうございます」


 羽白の言葉に昴は黒縁眼鏡をかける。

不思議と気持ちが落ち着いていくのを感じた。


「昴、君は銀髪に銀色の目なんだね。……そして、人間ではないね」


 羽白の言葉に昴は息を飲む。

そんな昴を見て、羽白は、答えなくていいよ、と笑う。


「ここからは私の独り言だ。この町に伝わる昔話さ。本当か噓かもわからない話だ。聞き流してくれて構わない」

そう前置くと羽白はP-8517に伝わる昔話を語り始めた。


「まだ人間が地上にいた頃の話。神様は今よりもずっと人間の近くに存在していたそうだ。多くの神様が地上で暮らしていて、人間はそれぞれ信じる神様に祈り、神様は人間に恩恵を授けた。その中に死後の世界を司る神様がいたそうだ」

「神様……ですか?」


 急に始まった壮大な話に昴が戸惑いの声を上げる。


「そう神様。その死後の世界を司る神様の使いにね、どんな敵でも一撃で排除する者がいたんだって」

「それが、打ち倒す者、ですか?」


 昴の言葉を、さぁ、と軽く受け流して、羽白は話を続ける。


「その神様の使いは白かったと言われている。そして、目から光を放ち、己の神様を害するもの全てを一瞬で滅したと伝えられているんだ」

羽白の言葉に昴はうつむく。


 銀色は白に似ている。

光を放ち鉱石を破壊したという話にも合う。


「まさか、だって、私は廃材置き場に捨てられていた、ただのアンドロイド……あっ!」

思わず零れてしまった言葉に昴は慌てて自分の口をふさぐ。


「こらこら、自分の正体をそんなに簡単に言ってはいけないよ。それに今の話もただの昔話さ。……ただ、大きな力はあるだけで周りの人の恐怖になる。あまり多用はしない方がいいかもね」

「……多用も何も、本当に私がやったことなのかすら覚えていませんし……」


 戸惑う昴を見て、羽白があっけらかんと笑う。


「その方がいい。そのまま忘れてしまいなさい。少し話し過ぎたね。さっきからトンボが待ちきれないって顔でこっちを見ている」

そろそろ私は退散するよ、と羽白は昴のベッドを後にした。


「別に待ちきれないとかねぇし」

入れ替わりにトンボが昴のベッドへとやってくる。


「体調は? 修理必要か?」

ぶっきらぼうなトンボの言葉に昴が笑う。


「大丈夫です。それよりこれからどうしましょうか? 南斗のことは心配ですが、いつまでもこの町に留まっていても博士には会えないでしょうし……」

「そのことなんだけどよ。多分、次の目的地は西だぜ」


「どういうことですか?」

怪訝な顔をする昴にトンボは自身に登録された座標を示す。


「えっ? なぜ?」


 昴はその座標を見て驚きの声を上げる。

葉室はむろから預かった流れ星が示していた座標は北を示していたはずなのに、今トンボに表示されている座標は西を指し示していた。


「わからねぇ。目標が移動してる、とか?」

「その割には今は動いていませんよね」


 しばし思案顔をしていた昴は、諦めたように首を振る。


「考えていても仕方ありません。行ってみるしかないんでしょうね」

「そうだな」


 その日は診療所のベッドで休ませてもらい、翌日の朝。


「羽白さん、安曇さん、では、南斗なんしゅをよろしくお願いします」

旅支度を整えた昴が頭を下げると、二人がうなずく。


 目を覚ます様子のない南斗は羽白の診療所で診てもらうことになった。

旅に連れて行くのは到底無理だし、治療するなら自分の所が一番だろうと羽白が言ってくれたのだ。


 安曇も今回の件が落ち着くまで、診療所に留まり羽白を手伝うとのことだったので、昴とトンボは羽白たちの言葉に甘えさせてもらうことにした。


「昴くん達も気を付けて。近くを通ったら必ず寄ってね」

「その時までには目覚めた南斗に会えるよう、私たちも頑張るよ」


 安曇と羽白の言葉に昴はうなずく。


「はい。では、失礼します」

そう言ってスクーターに跨ろうとした昴を、こら! 、と安曇が止める。


「えっ?」

「こういう時は、いってきます、でしょ!」


「えっと、それは……」

戸惑う昴を、ほら! 、と安曇がせかす。


 昴がどうしたものかとトンボを見上げると、いいんじゃねぇか、とトンボが答える。

その言葉を聞いて、昴は恐る恐る口を開いた。


「えっと、では……いってきます」

「はい、いってらっしゃい。元気で帰ってくるんだよ」


 その言葉に、一瞬大きく目を見開いた昴は、少し困った顔のまま、でもはっきりと、はい! 、と返事をした。


「じゃあ、またな~」

 そう言ってトンボがフロントバスケットに収まったことを確認した昴は、今度こそスクーターを出発させた。

第二章、完結です!

読んでいただける方がいるお陰で書き続けることができました。

昴とトンボの次の旅もお付き合いいただけたら、すごく嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 別に待ちきれないとかねぇし ⬆ トンボ!  お前はイイヤツだ [一言] 話の軸がしっかりしてて 登場人物もインパクトあって でも変に引っ張らず 主人公の旅が進む いや〜すげぇ 展開が上手…
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