表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/88

15_鴇色の鉱石と少女の行方

 羽白はじろの言葉に糸掛いとかけは再びソファに腰を下ろす。

にらみ合う二人の間に重苦しい沈黙が流れる。


「何を知っている?」

先に沈黙を破ったのは糸掛の方だった。


「一年前に見つかった鉱石、ほぼ同時に流行り始めた奇病。町の封鎖解除と病気の肩代わり」

端的に告げる羽白の言葉に糸掛が目を見開く。


「……と言っても証拠は何もない。全ては私の想像の範疇でしかない」


「町に医者が一人しかいないのは考え物だな」

糸掛が深いため息とともに呟く。


「お前の勘違いだ、と私が言ったら、どうする? 証拠は何もないんだろう」

「そりは合わない父親だが、仕事への姿勢と噓をつかない所だけは尊敬している」


 羽白の言葉に糸掛が一瞬顔を顰める。

しかし、すぐに真面目な顔に戻り羽白に更にたずねる。


「なぜ今来た? 今まで気が付かなかったということか?」


 今度は羽白が顔を顰める。

だが、羽白もすぐに表情を引き締めて糸掛を真っすぐ見つめる。


「優秀な弟子がいる。絶対に情けない姿を見せたくない弟子が。その子が背中を押してくれた」


 羽白の言葉を最後に二人の間に再び沈黙が落ちる。


「良い弟子を持ったんだな」

先に沈黙を破ったのは、今度も糸掛だった。


 羽白を見つめて、一瞬優しい目をした糸掛は、真剣な表情に戻り口を開いた。


「一年前、採掘場で珍しい鉱石が見つかった。子どもの頭程の大きさの淡い鴇色をした美しい石だ。最初は宝石の鉱脈が見つかったのかと喜んだのだが、見つかったのはその一つだけだった」

鉱石について語り始めた糸掛の話をすばるとトンボも真剣な表情で聞き入る。


「残念ではあったが本当に美しい石で、大きさも十分だった。何かに細工して町の名物にしようと思ったんだ」

「あっ! 確か……」


 何かに気が付いたように声を上げる羽白に糸掛がうなずく。


「鉱石は固く、細工どころか傷一つつかなかった。その一方で、細工をお願いした職人が体調を崩した。……ある日突然、起きなくなったのだ」

「最初の患者は町の石細工職人だった」


 羽白の言葉に昴が驚きの顔で見つめる。


「そして、二人目は……」

「町の銀細工職人だ。鉱石自体を細工することができないなら、鉱石をメインにしたオブジェを作ろうという話になったんだが、石細工職人の時と同じように、依頼した数日後、起きなくなった」


「まじかよ……」

二人の話にトンボが信じられないといった風に呟く。


「三人目の職人が起きなくなったとの報告を受けた時、私は鉱石を役場の保管庫にしまい、誰の目にも触れないようにすることを決めた」

糸掛の言葉に羽白が、おかしい、と声を上げる。


「患者はその三人だけじゃない。それどころか今も患者は増え続けている。鉱石が本当に役場の保管庫にあるなら、どうして?」

「その通り、病気はその後も続いた。始めはその三人から感染しているのではないかと思い、彼らを隔離したが無駄だった」


「じゃあ、一体?」

「……鉱石が呼ぶんだ」


「「「はぁ?」」」

糸掛の言葉に羽白も含めた三人が、何を言っているんだ? 、といった顔をする。


「気持ちはわかる。私だって最初は信じられなかった。だが、本当なんだ」

「どういうことだよ?」


「きっかけは偶然だった。保管庫の防犯カメラに映っている人間を見つけた役場の職員が、その人間の知り合いだった。そして、その人間が起きない病気にかかっていると言ってきたんだ」

「たまたまじゃないのか?」


 トンボの言葉に糸掛は首を振る。


「そこから過去の防犯カメラの映像を確認した。そして、全ての患者が映っていた。とても偶然とは思えなかった」

「まさか!」


 急に声を上げた昴に、みんなが、どうした? 、と注目する。


「町長さん、鉱石の所に連れて行ってください! 早く!」

今まで静かに話を聞いていた昴に急に迫られて糸掛は驚きの表情を浮かべる。


「おい、昴、急にどうしたんだよ?」

たずねるトンボに説明するのももどかしいと言いたげに早口で昴が答える。


「声ですよ! 昨日、南斗なんしゅが言っていたじゃないですか!」

「あっ! そうか!」


「ちょっと待って! 昴にトンボ、一体何の話をしているんだ? わかるように説明してくれ!」

勝手に納得している昴とトンボに羽白が声をかける。


「昨日、夕ごはんの片付けをしている時に南斗が言ったんだよ。声がするって」

「なんだって! それは本当か? 声は何と?」


 トンボの言葉に糸掛が問いかける。


「いや、なんて言っているかはわからない、って。俺たちも聞こえなかったから、その時は空耳だろうってことで話は終わったんだ。でも」

「それが鉱石の声で、南斗は鉱石に呼ばれた、と」


 羽白の言葉に昴がうなずく。


「お願いします! 鉱石のところへ連れて行ってください!」

「待ちなさい。気持ちはわかるが、危険すぎる」


 詰め寄る昴を糸掛が止める。


「いや、多分、大丈夫だ」

「なんだと?」


 羽白の言葉に糸掛がたずねる。


「鉱石が本当に呼ぶのだとしたら、声が聞こえなかった昴とトンボは大丈夫なはず。旅人が全員病気にかかっている訳ではないんだよね?」

「なるほどな。おい、町長さん、早く俺たちを保管庫に案内してくれ!」


 トンボも羽白の言葉にうなずき、糸掛に詰め寄る。


「しかし……」

なおも戸惑う糸掛に昴とトンボが詰め寄る。


「お願いします!」

「頼む! 大切なツレなんだよ!」


「父さん、お願いします!」

「……わかった。ついてきなさい。ただし」


「私も行きます!」

「羽白!」


 糸掛が言いかけた言葉を遮って、昴とトンボと一緒に行こうとする羽白を糸掛が止めようとする。


「病気の原因を突き止めたいんだ! 私は私の仕事をする!」

「……その頑固さは誰に似たんだか」


「あなただよ。父さん」

「全く……みんな、着いてきなさい」


  そう言って応接室から出ようとした糸掛の目の前でドアが開く。


「町長! 大変です! 保管庫の前で見知らぬ少女が」

慌てて応接室に入ってきた役所の職員の言葉に昴たちは顔を見合わせる。


「急ぐぞ!」

糸掛の言葉にうなずいて、昴たちは応接室を飛び出した。

鴇色は少し黄色がかった淡いピンク色です。

好きな色の一つなのですが、可愛すぎて身に着ける勇気はなく、綺麗だなぁと眺めるばかりの色です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ