表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

184/191

第11話 始まりの姫宮

 四つの眼を瓶に入れた嶺は改めてファン 戯瞑ギメンに向き直った。



「お前の眼で最後だ。寄越せ」


「あァ。勿論だよォ。でも最後に大切な妹に道を示してあげるゥ」




 戯瞑ギメンを含む五人は死を目前としていたファン 甜満テンマに時間差で呼び出されていた。

 そして遺言という名の命令を託された。



 ファン 潤邏ユンラ

 ファン 甜満テンマにとって、義理の母にあたる彼女には末娘の精神の強化と現在の見極めを。


 ファン 紅爛グレン

 ファン 甜満テンマにとって、義理の父にあたる彼には末娘の肉体の強化と未来への選択を。


 ファン 艶揶エンヤ

 ファン 甜満テンマにとって、夫にあたる彼には末娘への無関心さとその身の破壊を。


 ファン 戯瞑ギメン

 ファン 甜満テンマにとって、長女にあたる彼女には末娘の導きと意思の共有を。


 ファン 梦幻ムゲン

 ファン 甜満テンマにとって、長男にあたる彼には末娘の溺愛と過去の清算を。



 この命令は彼女が宿していた末娘が本当の意味で生まれるまで続けるように言われた。

 そして、その命令を完遂した日が今日だった。



奴家ヌゥヂィアにも母がいるのか…?」


「アタシやムゲンと違って直接、母から生まれた訳じゃないから何とも言えないなァ。だが、"花の渓谷"を母とするなら花嶺フゥアリィンは立派な娘だァ」


 ファン 戯瞑ギメンは自らの意思で右瞼を開き、嶺に顔を近づけた。



「母の元へ行け、花嶺フゥアリィン…いや、甜岌テンキュウゥ」


 こうして勝者となった嶺は五つの眼を勝ち取り、約一ヶ月ぶりに家族の元へと帰宅したのだった。




                  ◇


 自宅に着き、最初に目に飛び込んできたのは愛する我が子の横たわる姿だった。

 一瞬にして身体の中で何が起こっているのか見抜いた嶺は眼を開いた。

 愛娘――凰花 さくらに作用した愛の能力チカラは彼女の命を救った。

 しかし、"いつくしみの感情"が宿り、"永遠を呪う"霊鳥の五つ目のまなこ能力チカラは副作用も与えた。

 それは鳳凰眼の前所有者達や嶺と同様に不老不死になる"呪い"である。



 更に秋桜の子宮に五つの眼を植め込んだ事で彼女もその瞳に特殊な能力を得た。

 これが後に"凰花の眼"と呼ばれるものである。

 嶺が子宮内伝達を試みた目的は鳳凰眼と名付けた瞳を子孫に受け継がせ、"出口"を見つける事だった。



 鳳凰眼に適応する所有者候補は一人でも多い方が良い。

 その候補者を増やす役目を秋桜に与え、監視の役目をさくらに任せた。

 さくらは精神的に参ってしまった時期もあったが、必要な場面で助言し再起させた。



 そして、漸く嶺の待ち望んだ日が来た。

 八代目当主、凰花 鈴蘭の娘が梦幻鳳凰眼を継承し、古河 雛菊の娘が紅爛鳳凰眼を継承した。



 椿姫と蓮が産まれた瞬間から、創造しておいた箱庭で育てる事を決めた。

 その箱庭の一つは夫である九条 幾斗の魂を天国にも地獄にも送らせない為の場所。

 もう一つは十本の刀を封じる為の場所。

 この二つは最初から修行場として創られた訳では無いのだ。



 雛罌粟の存在は敢えて放置していたが、彼女は嶺の思った通りに行動した。

 雛菊を使って、さくらと梔との繋がりを持ち、椿姫に接触を図り、間接的に蓮とも接触した。

 そして、雛罌粟は成し遂げた。

 六つの鳳凰眼を同時に発動させる事で雛罌粟は復活を果たし、その裏で嶺にとっての"出口"も開いた。



 嶺は凰花家の騒動を最後まで見届ける事なく、どこまでも続く道を歩み続けた。

 その間、現実世界で何が起こったのかはどうでも良かった。

 嶺にとっては自分にかけられた"呪い"を解く事が何よりも優先されるべき事柄なのだ。

 永い時を生きる中で自分自身への愛を育み、家族への愛を蔑ろにした嶺は真っ白な道を突き進む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ