第0話 全ての始まり
遙か昔、大陸には偉大な霊鳥が存在した。
巨大な体躯で大空を翔る神を人々は敬い、感謝して生活を営んでいた。
その霊鳥は六つの瞳で全てを見通し、全ての事象を支配した絶対的な存在。
一つは現在を司る眼。
一つは未来を司る眼。
一つは破壊を司る眼。
一つは意思を司る眼。
一つは創造を司る眼。
一つは過去を司る眼。
霊鳥にとって人間は取るに足りない存在であった。
次第に人間は些細な事で争いを始め、小競り合いはいずれ大きな戦へと規模を拡大した。
その様を見て、やはり感情は不要だと考えていた。
自分には大きな感情が無くて良かったとさえ思う程だった。
ある日、戦を続けるとある一族の六人の精鋭が霊鳥に力を求めた。
霊鳥は拒否し、争いを止めるように諭す。
六人の精鋭達は他部族を騙した上で協力を促し、霊鳥の六つの眼を奪い取った。
眼を奪われる直前、これまでの記憶が蘇った。
――わたしは人間を愛し、共に喜び、共に楽しみ、共に哀しんできた。決して怒らず、憎むことはなかった。
永い刻を生きた霊鳥は様々な人間と交流し、気づかぬ内に感情を手に入れてしまっていた。
そして、自覚した感情が爆発する。
「わたしを陥れ、眼をくり抜くなど人の成す事ではない!許さんぞ!その眼は感情のままに貴様ら一族を喰らいつくすだろう」
霊鳥は最期の力を振り絞り、自身の眼窩から解き放たれる眼に呪いをかけた。
五人の精鋭は自身の目と霊鳥の眼を入れ替え、永遠の命と絶対的な力を手に入れた。
霊鳥の力を使い戦に勝った一族は富、地位、名誉、力を手に入れて栄えたのだった。
しかし、一人だけは霊鳥の眼を使用するのではなく飲み込んでいた。
六つの眼の内一つだけ使用される事なく、歴史から消え去ったのだ。
そして時は流れ、運命の歯車が動き出す。
これは数奇な運命に弄ばれた者の物語。
不定期更新になりますが、宜しくお願い致します。