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崩れた日常

景介視点です

「貴斗、なんかあった?朝から変だけど。」

「……え?」


ここ1週間、なぜか貴斗はずっとピリピリしていて、集中力も欠いていた。昨日なんて、稽古中に俺のパンチを鳩尾に食らっていたくらいだ。いつもは余裕でかわすのに。


「あー……別になんでもないって。」

「ほんとにー?まぁ、貴斗が色々やってるのは知ってるし、疲れてるなら言ってね。俺だって、やれることくらいあるし。」


最近貴斗が組の仕事を本格的に手伝い始めたと聞いた。きっと慣れないこともあるに違いない。疲れが出てるのかも。

少し顔色悪く笑みを浮かべる貴斗に、俺は助力を申し出た。


「あはっ。今でも十分やってもらってるって。景介は俺の唯一無二の親友なんだから。隣にいてくれるだけで、じゅーぶん!」

「またそんなこと言って……。友達なんだから、一緒にいるのは当たり前だろ。もう帰ろ。宿題やんなきゃ。」

「うん……あー、ごめん。やっぱちょっと待ってて。用があるんだ。すぐ終わるしさ。」

「えー?もー、しょうがないなぁ。早くね。」

「分かってるー。」


そう言って教室を飛び出していった貴斗を見送り、俺は自分のと貴斗のランドセルを持って、教室を後にした。校門で先に柳田さんを呼んでおこう。

校門を出て、携帯で柳田さんを呼んでおく。校内では携帯の使用は禁止だから、いちいち外に出ないといけない。面倒だけど、ルールはなるべく守らないとね。

あと10分で来るという柳田さんに、校門で待ってると伝え、通話を切る。貴斗も、それまでには来ているだろう。


「最近の貴斗は忙しそうだもんなぁ。ほんと、何やってんだろ。」


ボーッとしながら待っていると、目の端で何かが反射して光った気がした。なんだろうと顔を向けると同時に、それが俺に向かって突進してきているのを見て、それが何か少し遅れて認識した。

あ、刺される。


「っ景介……!」


貴斗の声が聞こえ次の瞬間、俺は突き飛ばされ、地面に転がっていた。


「っぐぅ……っ。てめ……っ、景介に何してんだ!」

「いっつぅ……。た、貴斗……!」

「景介下がって!てめぇ、絶対許さない……ぶっ殺してやる……。景介狙うなんて……、お門違いってのが、分かんないバカが……っ。」

「貴斗、血が……っ!だめ、動くなって!」


俺に向かってきていたはずに刃物をお腹に刺したまま、貴斗は鬼のような形相で男に向かっていく。俺の声も届いていないようだ。

動く度に血の染みが広がっていく気がして、怖くてたまらない。早く貴斗を病院に連れていかないといけないのに、どうすればいいか分からない。


「貴斗、やめろって!早く、早く病院!」

「逃げてんじゃ、ねぇよ……来いよほら……。いま、すぐ……地獄、に……送って……。」


貴斗の足がふらつき、言葉もろれつが回らなくなっている。

このままでは、貴斗が死ぬんじゃないかと、血の気が引いた。


「坊っちゃん……っ!」


周囲のざわめきの中から、聞き覚えのある声がして、とっさにそちらへと目をやった。柳田さんだ。

柳田さんは、場を見てすぐに状況を掴んだらしい。貴斗の睨む先の男を羽交い締めにして、手早く意識を奪った。そして、服を使って縛り上げると、貴斗に駆け寄った。


「坊っちゃん!坊っちゃん、大丈夫ですか!」

「やな、ぎ……だ……。けー、すけ……は……。」

「貴斗!大丈夫?血、血が……っ!」


俺の呼び掛けに、やっと貴斗は俺に顔を向け、安心したように笑みを見せた。


「あぁ……ぶ、じ……かぁ……。柳田……、腹部、刺傷……。土田の、せんせ、に……、連、らく……」


それだけ言うと、貴斗は気を失った。

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