俺の平凡な日常
景介視点です
ここから景介の過去話をしていきます
「貴斗、おはよ。」
「おはよー、景介。」
「うわ、また怪我増えてる。もー、朝から喧嘩してきたの?手当てしないと。……怪我するくらい危ないんだから、やめればいいのに。」
いつものように、友達である貴斗の家に行くと、頬の切り傷からうっすら血を流した貴斗が、ヘラリと笑って待っていた。
前々から喧嘩好きで、よく喧嘩していたし、怪我も日常茶飯事だったけど、最近は特にひどい。危ないんだから、ちょっとくらい我慢してほしい。俺だって心配になる。
そんな俺の気持ちなんてまるで知らない貴斗は、笑みを崩さないまま文句を言ってきた。
「えー、やだよ。喧嘩、楽しーんだもん。それに、それを言うなら、向こうも悪いと思わない?懲りずに何回も来んだもん。」
「そういう問題じゃないよ。ほら、顔横向けて。……もー、何やったらこんな傷できるの?」
「あははー。」
笑って誤魔化す貴斗にため息をつき、絆創膏を貼る。
ずっと貴斗と一緒にいるけど、都合が悪くなると笑ってかわす悪癖は変わらない。そうすると周りが察してくれると、こいつは幼いときから知ってるのだ。悪賢い奴め。
貴斗のヘラヘラした態度は、学校にいてもまったく変わらない。そのくせ、大人の怒らないギリギリのことまでしかしないから、滅多に怒られない。要領も良いし、頭もいいのだ、この困った幼馴染みは。
今日も問題なく学校を終え、貴斗とともに帰宅する。俺も、父さんが貴斗の家で働いているから、貴斗の家に行って、父さんと帰るのが恒例だ。今日もそうなっている。
「ただいまー。」
「お邪魔しまーす。」
「お帰り、坊っちゃん、景介。」
「景太郎おじさん、もう坊っちゃんって呼ばないでよ。俺は親父に、後継者の1人って認められてんだから。」
俺たちを出迎えたのは、俺の父さんだ。
いつも忙しそうにしているのに、今日は出迎えられるくらいの余裕があるらしい。
「おや、私が親父に聞いたのは、中学生になったら若として認めるというものですよ。」
「ちぇ。これくらい、誤差にしてくれてもいいのに。」
「あと半年の辛抱です。景介、いつものところにおやつがある。持っていきなさい。」
「はーい。貴斗、先行ってて。」
貴斗を置いて俺は1人で台所に向かい、おやつとコーヒーを2セット持っていく。忘れずにミルクとシュガーも。
コーヒーはまだ苦くて、ブラックでは飲めたものじゃない。貴斗も、ブラックで飲むときは眠気覚ましとして使ってるみたいだから、俺が子供なわけじゃないけど。
貴斗の部屋に入ると、もうすでに宿題を広げて待っていた。
「お待たせ。」
「ん、ありがとー。」
ここからは、黙々と宿題を進める。幸い、俺も貴斗も頭はいい方だから、すぐに終わる。そしたら、おじさんの稽古だ。
貴斗の父さんで、ここの組長でもあるおじさんは、とっても強い。俺からしたらすごく強い貴斗でもあんまり勝てない。だから、貴斗と俺はおじさんに体の使い方を学ぶという名目で、格闘技や護身術をおしえられている。
正直、喧嘩好きな貴斗ならまだしも、俺は別に今まで殴り合いの喧嘩なんてしたことないから、いらないと思うんだけど。
「おう、やっと来たな。……貴斗、それは。」
「ちょっとね。後でいいじゃん。」
おじさんの睨みも飄々とかわし、貴斗はさっさと準備を始めた。
今日もきっちり稽古をこなし、俺は疲れた体を引きずりながら、父さんと帰宅した。




