心踊る時間の始まり
貴斗視点です
「貴斗さん。今日のお話は、少しだけですけど、分かりましたよ。」
「あ、ほんとに?」
「はい!ちょっと前にノーベル賞で話題になった時にはよく分からなかったんですけど、青色LEDって、白色の光を作るために必要だったから、すごいんですね。」
「そ。青色LEDを作るための材料がすごく繊細で、青を作るのは20世紀中には無理だって言われてたんだ。でもそれが、1980年代に開発、90年代に実用化に漕ぎ着けた。それまでにできてた赤、緑に加えて、青も揃ったことで、光の三原色が揃って、白も作れるようになったんだよ。」
駿弥くんと日本物理学の功績について議論した帰り道。いつものように4人で並んで歩いている時に、初音が嬉しそうに報告してきた。
今日のが分かりやすかったのは、やはり一時期話題にもなった青色LEDが出てきたからだろう。ノーベル賞を受賞したときに、散々テレビで解説していたのを、さらに簡略化して話したから、イメージもしやすかったと思う。
ニコニコと機嫌良さそうに笑っている初音が、今日も世界一かわいいことに頬を緩ませながら、初音にさらに解説を加えていく。
「宇咲さん、今日のは分かったんだ。」
「うん。まだ難しいことはさっぱりだけど、青色LEDがなんですごいのかは分かったよ。また1つ、賢くなった気分。」
会話に参加してきた駿弥くんにも笑いかけ、嬉しそうにしている。
初音と駿弥くんは、うまくやっているみたいだ。初めの頃よりも打ち解けているように見える。景介がけしかけたらしいけど、詳細は聞いていない。あいつは何を言ったんだろうか。駿弥くんが初音に甲斐甲斐しく教えるようになった。
初音が他の男と仲良くするのは、ちょーっとジェラシー感じるけど、楽しそうにしているし。何より、俺ともっと話したいからと知識を集める初音を、俺が止める理由なんて存在しなかった。その気持ちだけで、もう好き。
「初音のかわいさだけで俺、今日も幸せ……。……はぁ。……んー、あららぁ、参ったなぁ。」
「……貴斗。」
「んー、分かってるってー。どーしよっかなぁ。困っちゃうなぁ。」
最近は落ち着いてきたと思っていたのだけれど。刺客が来たようだ。
まさか初音と駿弥くんがいる下校時に来るなんて。いや、むしろだな。場慣れしていない初音と駿弥くんを守りながらになると、どうしても気を遣いながらになる分、対戦が疎かになるのは間違いない。しかも、一般人に害を出さない、手を出さないを信条とする茶戸家が2人を見捨てないのは、相手も分かってる。
ほんと、そういう悪知恵だけは働くんだから。
「景介、2人のことは任せたよ。」
「御意に。」
「初音、駿弥くん。ごめんねー、ちょっと俺にお客さんみたい。景介と一緒に下がってて。5分で終わらせるからさ。」
ヘラリと笑いながら俺がそう言うと、初音も駿弥くんも、戸惑ったように俺を見つめる。しかし、道の先から4人の男が出てくると、その異様な雰囲気に何か察したのか、景介の方へ寄っていった。
景介に2人を任せ、俺は奴等に集中する。4人、人数的には不利だけど、量より質だ。チャカを持ってるのは懐が不自然に膨らんでいる1人だけだろうし、後の3人は精々ナイフ。それならば、俺にとってどうということもない。発砲されるとややこしいから、あの1人をまずは落とさなければ。
俺は相手を観察し、倒すための算段をつけていく。久々の喧嘩だ。楽しまなければ。




