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新たな決心

初音視点です

「今はより効率的な身体の動かし方とかのスポーツ工学のみならず、戦略を考える上でも情報をより集めた方が有利みたいなところあるからね。相手チームの得手不得手を分析したり、試合会場の環境に合わせて練習変えるとかね。」

「そうですね。今やスポーツも肉体の優劣だけではなく、頭脳戦にもなっています。単純な力比べ、技術比べだけではなくなってますね。」


貴斗さんたちが話し始めて1時間。やっぱりどういうことなのか、何が重要なのかもよく分からないけど、どうやら盛り上がってるらしい。白熱している話に、私は小さくため息をついた。

理解できない私が悪いんだけど、少し疎外感。貴斗さんも会長も、駿弥くんも、楽しそうだから止められないし、帰りは貴斗さんと一緒がいいから、帰りたくもない。けど、話には混じれないし、分からないし、貴斗さんも夢中だし、1人で待ってるしかできない。


「……勉強、もっと頑張らないといけないのかなぁ……。」


私はポツリと小さく呟いた。

貴斗さんはすごく頭がいい。私の知らないことも知ってるし、英語だってペラペラだって言ってた。そんな貴斗さんが、私のことを好きだって、恋人として好きになってほしいって言ってきたんだ。まだ私の中で貴斗さんへの気持ちの答えは出てないけど、貴斗さんの好きに釣り合うようにしておきたい。貴斗さんの彼女が、怠惰でいていいはずないもん。


「初音、お待たせ。ごめんね、長くなっちゃって。」

「いえ。……あの、貴斗さん。私も、お話に参加してみたいんです。」

「え?……んー、今のテーマじゃ難しいよね……。」

「はい……。なので、分かるようになりたいんです。」


今でも事前に教えてもらってるけど、もっと教えてほしい。私だって、貴斗さんと話したい。すごいねって、言われたい。駿弥くんみたいに、一目置かれたい。

そんな思いを抱きながら、貴斗さんにお願いしてみる。ただでさえ忙しい貴斗さんだ。断られたら、駿弥くんを頼るしかない。でも、可能なら貴斗さんに教われたら、もっとやる気も出る……と、思う。


「……急にどうしたの?もちろん、知りたいことは何でも教えるよ。でも、今みたいに触りだけっていうのでも、知らなくてもいいような知識だし、将来のためってこともないよ?」

「……あ、あの……私も、貴斗さんとお話ししたくて……。私、貴斗さんと話せるような話題もないし、話にもついていけないし……。でも、貴斗さんとたくさん話したいし、その……すごいねって、駿弥くんみたいに言われたいなって……。ふ、不純な理由でごめんなさい……。」


私が言葉を重ねる度に、貴斗さんは目を見開いて、驚きの表情に変わっていく。

きっと不純すぎて言葉も出ないんだ……。恥ずかしすぎて、どんどん言葉尻をすぼませ、肩を落とした。

純粋に知識を得てきた貴斗さんに、すごいって思われたいから教えてほしいなんて……バカにしてるのも同然だ。恥ずかしすぎる……馬鹿丸出しだ……。

シュンと目線を下げていると、貴斗さんが嬉しそうな声をあげた。


「俺と話したいって思ってくれてるの?嬉しい、初音、ありがとう。嬉しいよ。そうだね、俺も初音とたくさん話したいよ。分かった。初音にも取っ掛かりやすいテーマ、考えてみる。何か興味のあることがあったら言って。」

「……はい。……あの、怒ってませんか?こんな、バカみたいな理由で。」

「どうして?俺と話したいって思ってくれたんでしょ?歓迎こそすれ、怒る理由なんてないよ。俺はいつだって初音に関心を持ってもらいたいんだから。俺はいつも初音が俺を好きになってくれるように虎視眈々と機会を狙ってるんだ。このまま好きになってくれたら、嬉しいんだけどね。」


少しだけ茶化すように笑って言った貴斗さんに、顔が熱くなる。心臓に悪い。貴斗さんの言動は、いちいちドキドキするのだ。

私の反応に満足そうに笑う貴斗さんが、私の手を取り、歩き出す。繋がれた手に、ますますドキドキしながら慌てて着いていくと、後ろから会長が微笑ましそうに見てくる。うぅ……なんて恥ずかしいところを……。


「貴斗も罪な奴だな。初音ちゃん、顔真っ赤。」

「ははっ。初音に好きになってもらうためには、手段なんか選んでらんないからね。初音ってば、リンゴみたい。かーわいーい。」

「も、もう!やめてくださいよ!からかわないでください!」


叫ぶように言うも、2人はクスクスと笑っている。少し恨めしげに睨んだ。なんて意地悪なんだ……。

帰り道、ずっと2人にからかわれ、私は顔を真っ赤にしながら足を動かした。

次話から駿弥視点となります

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