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つまり、すべては初音がかわいいことに起因するってことだね

貴斗視点です

今後の対応に関しては話し終わり、次は当面の生活についてだ。最低でも、今日どうしてほしいか話さなければいけない。


「初音、お兄さん。ご両親が来たら改めて詳しく話すよ。今日はご家族みんなでうちに泊まって。今部屋用意してるから。」

「……いいんですか?」

「もちろんだよ。その方が俺たちとしても守りやすいし。じゃ、俺は親父にこのこと報告してくるね。景介は俺が戻ってくるまでここで待機。その後は取り調べ行っていいから。んじゃあ、また後で。……っと。……初音、一緒においで。」


退出する間際、俺の横でシュンと俯いた初音に、俺は慌てて声をかけた。

初音が俺といたいと言ってたんだ。置いていくなんて選択肢はないに決まってる。

悲しそうに目を伏せていた初音が、俺の言葉に、すぐに嬉しそうに顔を上げ、目を輝かせた。

かわいい。

小動物のようにちょこちょこと俺のそばに寄ってくる初音に俺が目を細めて笑いかけると、次は恥ずかしそうに顔を赤らめ、ちょんと俺の服の袖を摘まんでくる。

何、このかわいい生き物。初音のかわいさに、俺は内心身悶えした。


「……あー、なんつーか……。……妹のそういうとこ見んのすげー気まずいんだけど……。初音、俺はここで待ってるから。」

「うん。先輩、私も一緒に行ってもいいですか?」

「もちろん。むしろ、俺が頼んででも一緒に来てほしいな。」


道中も、初音が俺のすぐ隣でとてとてと歩きながらいろいろと話してくる。一生懸命に話している姿を見て、俺はまた内心で見悶えた。動悸が止まらない。

もうさぁ……これもう普通の恋人じゃん。初音どうしたの?恋人じゃん。いいの?俺で。調子乗るよ?すぐ恋人ヅラしちゃうんだからね。


「で、ちっちゃい頃に……」

「ふふっ。初音の話聞けて嬉しいよ。……あ、ここだよ。初音、ここが親父の書斎。親父、入るよ。」

「あぁ。」


親父からの返事に、初音の手を引きながら中に入る。

中では親父と景太郎おじさんが書類やら資料やらと格闘している。


「おじさんもいたんだね。初音、この前はドタバタしててちゃんと紹介できてなかったよね。この人は景介の父親の景太郎。親父の側近してるんだ。景太郎おじさん、改めて、初音だよ。」

「はい。初音お嬢様、お初にお目にかかります。今ご紹介に預かりました、湧洞景太郎と申します。今後とも、どうぞよろしくお願い致します。」

「か、会長のお父さん……。う、宇咲初音です、よろしくお願いします。」


景太郎おじさんの柔和な笑みに、初音が少し緊張した様子で返事をする。

景太郎おじさんはそんな初音の様子を微笑ましげに見つめている。


「景太郎は俺の昔からの悪友でなぁ。何か困ったときは頼りにするといい。……さて、初音さん。大事が無いようでよかった。けがはしてないかい?」


胡散臭い笑みの親父が、初音を見て安堵のため息をつく。

親父は俺と同じで、裏と表の区別をはっきりつけたいという考えの持ち主だ。初音たちは表の世界に生きる存在。こちらのことで怪我をさせなくてよかったと安堵するのも当然だ。


「はい。その……先輩が、助けてくれたので。」


初音が俺にふわりとした笑みを向けながらそう言った。俺も初音の顔を見て笑みを向ける。

俺が初音のために全力を尽くすのは当然のことだ。なのにそんな笑みを見せてくれるなんて、どんなご褒美だろうか。

そんな俺を見て、親父がUMAでも見たかのような薄気味悪い顔をしている。気色悪いからやめてほしい。

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