守られた約束
初音視点です
「……もちろんだよ、初音。それが俺と初音の約束だもんね。」
私の叫びに返ってきた声に、私や周りのみんなが反射的に振り向くと、そこには先輩と会長、そして先輩のおうちの人たちが堂々とした様子で立ち塞がっていた。
「先輩っ……!よかっ、……よかった……。」
「ごめんね、遅くなって。……ねぇ、誰の許可得てその子に触ってんの?その子がどんな存在か、分かってやってる?」
「さ、ど……貴斗……っ。」
「人のモンに手ぇ出しといて、何震えちゃってんの?……今すぐその薄汚い手ぇ離せって言ってんの、理解してくれる?……離せっつってんだよ、離せ!」
聞いたことのない先輩の怒鳴り声に、私まで体が強張った。
私の引きつった表情に気づいた先輩は、殊更優しく甘い声で宥めるように私に話しかけてきた。
「あぁ……ごめんね、初音。急に大きい声出して。すぐこいつら捕まえるからね。景介。」
「はい。お嬢、少しの間目を瞑っていただけますでしょうか。あぁ、お嬢のお兄様もどうぞ目を閉じていただけますよう。お2人の目に入れるには、少々苛烈ですので。その方が、こちらとしましても、気兼ねなくできますので。」
「は、はい……。あの、先輩……来てくれて嬉しいです。すぐ、終わりますよね……?」
「うん、もちろんすぐ終わるよ。俺が来たからもう大丈夫。だから安心して目瞑っていいよ、初音。」
先輩の声に促されるままに私が目を瞑った瞬間、私の腕を掴んでいた手が離れた。そして、次々と近くで何かにぶつかる音や呻き声が聞こえた。
私は新しい物音が聞こえる度にビクリと肩を揺らしながら、ドアの前で立ち尽くしていた。
先輩がいいと言うまで目は開けない。先輩が私のためを思って目を閉じているように言ったんだから。その気遣いを無駄にしちゃいけない。
しばらくすると、周囲から聞こえていた音も止み、静かになった。
「……ふーぅ……。……初音、終わったよ。もう、大丈夫。」
「……先輩……。先輩っ!」
すぐ近くから聞こえた先輩の声に、迷わず目を開けて飛び付いた。
「おっと……。……初音から来てくれるなんて……嬉しいな。大丈夫だよ。もうあいつらは襲ってこないからね。」
「うっ、ひっく……こわ、怖かった……!ひぐっ……。こ、殺され、ちゃうかと、思っ……。よかった……、よかった……。」
「……うん。言ったでしょ?初音のことは、俺が必ず守るって。」
涙でぐちゃぐちゃの私を、服が濡れるのも構わず抱き締めてくれる先輩に、ようやく少し安堵感が出てきた。
そうだ、先輩はいつだって私を助けるって言ってくれてた。そして、その約束を本物にしてくれた。先輩は私を守ってくれたんだ。
泣き続ける私を抱え、先輩は私の部屋にあるベッドに腰かけた。私の肩を撫で、宥めながら、先輩はすぐに会長たちに指示を出し始める。それにその場の全員がすぐに動き始めた。
「とりあえずこいつらは全員連れてって。景介、取り調べはお前がやっていいよ。今抱えてるどの仕事より優先して。手隙のやつはここの片付け。損壊部は漏れなく詳細にしてね。元の状態より悪いなんてありえないからね。家の威信にかけて元通りにするんだよ。以上。」
「若、お嬢とご家族はいかがいたしますか。」
「それね。初音、お兄さん。一度茶戸家に来てほしいんだ。ご両親も、ウチのが案内するからさ。説明したいし、その上でどうするのが最善か話し合いたい。どうかな?」
私とお兄ちゃんに目を向けて、先輩は私たちに決定権を委ねてくれる。
といったところで、私たちが取れる行動なんて、1つしかない。こうして家もぐちゃぐちゃになっちゃった以上、ここにはいられないし、襲われたのにここにいられるわけがない。私と家族を守ってくれる先輩のいるところにいたい。
お兄ちゃんにそう言うと、異議なしと頷いてくれた。
「……俺じゃ、初音を守りきれないからな。それなら、少なくとも俺よりはるかに対応を知ってる人の元にいた方が安全だと思う。」
「うん、そうだよね。……先輩、先輩に着いていきます。」
「そう……。ありがとう。そうしてくれたら、俺としても安心だよ。景介、今から2人を連れて帰る。ご両親には迎えを。事情は簡単に話しておいて。詳細は俺から言うよ。手配よろしく。」
こうして私たち家族は、先輩の家に向かうことが決定した。




